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引きこもり聖女の初試験 その1
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「今日は帰さないからね。」
「……その台詞、別のシチュエーションで聞きたかったわ。」
「全くだ。」
エルザの言葉にミヤコとカズトが肩を落として力なく呟く。
1週間後に迫る学園の『実践試験』に対処するため、即席パーティの根本的問題を解決しようと、エルザが二人を呼びだしたのが2時間前。ようやく本題に入ったというのに、二人のテンションはだだ下がりだった。
「とにかくね、まずはパーティ内の役割を決めて、その後連携の練習をするところから始めたらいいと思うんだよ。でね、私なりに考えたのが……。」
エルザはそう言ってメモを取り出す。
「ユウは弓で援護しつつ基本は回復役として待機ね。」
ユウの力を持ってすれば、向かうところ敵なし………というか別の意味で敵を作りまくるので、回復魔法以外は封印するように言い含めてある。その回復魔法も、基本的なヒールとキュアで、使ってもエリアヒールまでに留めておいてもらえるようにお願いしてある。
もっとも、その「お願い」の対価は決して安いものではなかったが……。
「私は見ての通り軽戦士だから、前衛だけど攻撃を受け止めたりは出来ないの。だからカズトには盾役として敵を引きつけて貰って、その間に攻撃をするってスタイルになると思……。」
「ちょっと待ってくれ!」
エルザの言葉をカズトが遮る。
「何よ、急に大声だして。」
すぐ隣にいたせいで、カズトの声がうるさかったのだろう。ミヤコが耳を押さえながら文句を言う。
「いや、だってな……。」
「何よ、エルちゃんに文句があるの?聞いてた限りでは、ごく真っ当な意見だと思うわよ。」
「いや、そうなんだが………俺が盾役って言うのは………。」
「何?イヤなの?この中ではアンタが適任でしょ?」
「いや、まぁ、俺としては女の子の背に隠れるより前に出た方がとは思うんだが………俺魔法使いだぜ?」
「「………うそ。」」
エルザとミヤコの声がハモる。
ちなみに、ユウはエルザの説明が始まった辺りから、夢の世界へと旅立っている。
「嘘なもんか………ホレ。」
カズトは魔法が使えることを証明するかのように、指先に炎をともしてみせる。
「チョ、チョット見せて貰うわよ。」
ミヤコはそう言ってカズトを凝視する。
ミヤコの斜め向かいにいたエルザは、彼女の目の色が一瞬金色に変わるのをハッキリと見た。
「………ハァ、アンタアホなの?なによ、この無茶苦茶なステータスはっ!」
「いや、だって、異世界って言ったら魔法だろ?使ってみたいって思うのは当たり前だろ?」
「それは分かるけどっ!分かるけどそれなら魔法使いに適したステータスにするのが普通でしょうがっ!極振りしろとは言わないけど、アンタのコレは逆に極振りしてるじゃないのっ!」
「そうは言うけどなぁ、純魔法使いなんて誰かに守って貰わないと即死だろうがっ!少しでも生存確率を上げるためには仕方がないんだよ。」
「後衛だから仕方がないでしょ。何のためのパーティよっ…………って、ゴメン、アナタ、エターナルソロだった?」
「っせぇなぁ。そうだよ、ぼっちだよ。誰もパーティなんか組んでくれないよ。悪かったなぁ!」
「あっと、……うん、まぁ、生きてれば、きっといいことあるよ。」
「………ここにいる時点で生死は分からないけどな。」
「……………………。あ、うん。なんかゴメン。」
「あやまらないでくれ。余計に切なくなる。」
「えっと、話が全然見えないんだけど?」
二人の会話が途切れたところで、エルザが声をかける。
「あ、うん、ごめんね。今から説明するわ。」
ミヤコはそう言うとメモを取り出しなにやら書き綴る。
「えっとね、私の持っている特殊能力の一つに『看破の魔眼』って言うのがあってね、それを使えば、相手の能力を数値化して見ることが出来るの。装備とかに使えば性能が分かるから鑑定のスキルの強化版みたいなものって思ってくれればいいかな?それでね、アイツの能力を数値化したのがコレ。」
ミヤコはメモを広げる。
名前:カズト 種族:ヒューマン ジョブ:メイジ 称号:脳筋メイジ
体力 :980
魔力 :320
力 :132
頑丈さ :148
魔法適性:68
素速さ :20
器用さ :16
「称号は見たまんまね。」
ミヤコのつぶやきを聞き流しながらメモをみる。
そこに記載されている数値を見ると、確かに偏っているのが分かるが、比較対象がないためその数値がどれほどのものかが分からない。
エルザがそう言うと、ミヤコは少し考えた後にもう一枚のメモになにやら書き込んで渡してくれる。
Dランク剣士
体力 :100
魔力 :15
力 :68
頑丈さ :90
魔法適性:10
素速さ :35
起用さ :45
Dランク魔法使い
体力 :50
魔力 :120
力 :15
頑丈さ :15
魔法適性:80
素速さ :45
起用さ :30
「私が知っているDランク冒険者のデータよ。多少の個人差はあるけど、平均的な数値よ。一応言っておくけど、魔法を使えるのは魔法適性値が60以上必要。この数値が大きいほど、使える魔法のバリエーションが広がるわ。………そう言う意味では一応彼も魔法使いの条件は満たしてるし、ジョブもメイジなんだけど……。」
納得いかないという表情でカズトを睨みつける。
「そんなこと言われてもなぁ。それより俺だけ晒されるのは納得いかねぇ。お前等のも見せろよ。」
「女の子に「見せろ」だなんて、変態がいるわ。」
「うんうん」
「違うんだぁ!そんな目で見ないでくれぇ。」
エルザとミヤコがジト目でカズトを見ると、カズトが頭を抱えてのたうち回る。
「冗談なのに。」
「その手の冗談は冗談にならないんだよ!」
「まぁいいじゃない。それよりコレが私の、こっちがエルちゃんのよ。」
そう言って見せてくれたメモの内容は以下の通りだった。
名前:ミヤコ 種族:ヒューマン ジョブ:召喚師 称号:ピーピングウィッチ
体力 :98
魔力 :960
力 :38
頑丈さ :26
魔法適性:198
素速さ :65
器用さ :78
名前:エルザ 種族:ヒューマン ジョブ:巫女 称号:神の花嫁
体力 :120
魔力 :280
力 :72
頑丈さ :48
魔法適性:98
素速さ :152
器用さ :88
「覗き魔って。覗き魔だって……。」
ミヤコの称号を見たカズトが腹を抱えて笑い出す。
そんなカズトを蹴り飛ばすミヤコだが、カズトはそれでも笑いが止まらず、ミヤコがムキになってゲシゲシと蹴り続ける。
………神の花嫁ねぇ。
エルザは自分の称号を見て、小さく溜息を吐く。
ミヤコの説明によれば、この称号というのは、現在までの行動や状況などを顕すものらしい。
だから、魔法使いと言いながら何も考えていないであろうカズトは『脳筋』だし、味方になりそうな人物を捜すために、看破の魔眼を使いまくっていたミヤコは『覗き』なのだろう。
だから、毎晩のようにユウの求めに応じている自分は『花嫁』なのね、と納得すると同時に『愛人』とか『情婦』じゃなくて良かったと安心する。
ひとしきりカズトを蹴り倒して憂さが晴れたのか、少しすっきりした顔でミヤコが戻ってくる。
「あとはユウちゃんだけだけど、抵抗力が強いみたいで、本人が許可してくれないと見れないのよねぇ。………ねぇ、許可してくれる?」
エルザの膝を枕にして寝ているユウの耳元に囁きかけるミヤコ。
「んー、エルたんがいいならいい……。」
「っていってるけど?」
「………良いんじゃないかな?」
エルザもユウの能力には興味があったので、深く考えずに許可を出す。
「じゃぁ、失礼して…………ってコレマジ?」
「そんなに凄いの?」
「ちょっと待って、書き写すから。……ハイ、コレがユウちゃんの。」
「マジかよ。」
「あ、アハ、アハハ………。」
ミヤコが差し出したメモを覗きこんだカズトとエルザも絶句する。
名前:ユースティア 種族:ハイヒューマン ジョブ:錬金術師 称号:ニート聖女
体力 :88
魔力 :2553600
力 :40
頑丈さ :38
魔法適性:67200
素速さ :80
器用さ :80
「えっと、色々ツッコミ所が多いんだけど……。」
「あ、うん、聞かない方がいいと思う。」
「……そうね。」
「……ニート聖女……ニートって……。」
カズトが再び笑いを堪えている。ユウの称号がツボにハマったらしい。
「ねぇ、ミヤコ。ニートってなに?」
カズトが何故そんなに笑っているのか、理解が出来なかったのでミヤコに訊ねるエルザ。
「えっと、なんて言えばいいのかな?こっちの世界でもみんな何かの職について働いているよね?」
「うん。」
「ニートって言うのは、働くべき年齢になっても働こうとしない人達の事を言うの。」
「えっ、働かないでどうやって生活するの?」
「んー、簡単に言えば親とか恋人とか友人に寄生しているのよ。」
「ひょっとしてニートさんって貴族?」
貴族の中には、働かずに遊んでばかりいるものも少なからず存在する。大抵は裕福な格式ある家柄の三男や四男に多く、親の財産で遊んで暮らしていけるから、働こうとしないらしい。
「貴族じゃないけど似たようなものかもね。ダメ人間ってところが…。」
「……私には疲れて帰ってくるエルたんの心を癒すという、重要かつ崇高なお仕事がある。」
不意にユウの声が聞こえる。
「あ、ユウ起きたの?」
「……うるさいから起きた。私は貴族のクズ男のようなダメ人間じゃない。」
どうやらユウは、自分なりに仕事をしていると言いたいらしいのだが……。
「えっとね、ユウちゃん。残念だけどさっきのユウちゃんの台詞、私たちの世界で「ヒモ」って呼ばれる最低のダメ男の常套句なんだよ?」
「がーん………。私がダメ男と一緒………。」
「はいはい、落ち込まない、落ち込まない。これから頑張ればいいんだよ。大丈夫、私はユウを見捨てないからね。」
落ち込むユウを懸命に励ますエルザ。
その様子を複雑な表情で見守るミヤコとカズト。
「なぁ……。」
「言わなくていいよ。」
「……そうだな。」
ユウが立ち直るまで、生暖かい目で見守ることにしたミヤコとカズトだった。
◇
「右に行ったよっ!」
「任せろっ!エア………あぁ、逃げるなぁ!」
「アンタの反応が遅いのよっ!魔法はあきらめて殴りなさいよっ!」
「左から来るっ!」
「あー、クソッ。ドリャァァッ!」
やけくそに放つカズトの拳が、ウォーターラビットを捉える。そのまま弾き飛ばしたところで、ウォーターラビットが絶命し、その場に転がる。
「ふぅ、コレで3匹目?」
「うん、そうだね。」
あれから、愚図るユウを宥めて、パーティの連携の様子を見ようと近くの森に来たのはいいのだが、結構ながい時間をかけて狩れたのは、ウォーターラビット3匹のみ。
ユウは拗ねて後方で座り込んでいるが、元々ユウは戦力としてカウントしていないので問題はない。問題なのは、カズトとミヤコの二人だ。
カズトは前衛にいるから、攻撃を止めつつ殴るなり武器を使うなりしてくれればいいのに、攻撃するのに魔法を使おうとするので、その隙に逃げられたり、ターゲットが移ったりして、攻守共に足を引っ張る結果になっている。
ミヤコに至っては、全ての属性魔法が使えると言っても、現在使えるのは初級の一部のみなので圧倒的に火力不足。
ミヤコのジョブは召喚師の為、ミヤコが本来の力を発揮するためには『召喚獣』が必要になる。
しかし、どうすれば『召喚獣』を得ることが出来るのかは、ミヤコ自身にも分からない為、現状では打つ手がなかった。
「先は長そうねぇ。」
エルザは、決して強いとは言えないウォーターラビットを解体しながら、誰にともなく呟くのだった。
「……その台詞、別のシチュエーションで聞きたかったわ。」
「全くだ。」
エルザの言葉にミヤコとカズトが肩を落として力なく呟く。
1週間後に迫る学園の『実践試験』に対処するため、即席パーティの根本的問題を解決しようと、エルザが二人を呼びだしたのが2時間前。ようやく本題に入ったというのに、二人のテンションはだだ下がりだった。
「とにかくね、まずはパーティ内の役割を決めて、その後連携の練習をするところから始めたらいいと思うんだよ。でね、私なりに考えたのが……。」
エルザはそう言ってメモを取り出す。
「ユウは弓で援護しつつ基本は回復役として待機ね。」
ユウの力を持ってすれば、向かうところ敵なし………というか別の意味で敵を作りまくるので、回復魔法以外は封印するように言い含めてある。その回復魔法も、基本的なヒールとキュアで、使ってもエリアヒールまでに留めておいてもらえるようにお願いしてある。
もっとも、その「お願い」の対価は決して安いものではなかったが……。
「私は見ての通り軽戦士だから、前衛だけど攻撃を受け止めたりは出来ないの。だからカズトには盾役として敵を引きつけて貰って、その間に攻撃をするってスタイルになると思……。」
「ちょっと待ってくれ!」
エルザの言葉をカズトが遮る。
「何よ、急に大声だして。」
すぐ隣にいたせいで、カズトの声がうるさかったのだろう。ミヤコが耳を押さえながら文句を言う。
「いや、だってな……。」
「何よ、エルちゃんに文句があるの?聞いてた限りでは、ごく真っ当な意見だと思うわよ。」
「いや、そうなんだが………俺が盾役って言うのは………。」
「何?イヤなの?この中ではアンタが適任でしょ?」
「いや、まぁ、俺としては女の子の背に隠れるより前に出た方がとは思うんだが………俺魔法使いだぜ?」
「「………うそ。」」
エルザとミヤコの声がハモる。
ちなみに、ユウはエルザの説明が始まった辺りから、夢の世界へと旅立っている。
「嘘なもんか………ホレ。」
カズトは魔法が使えることを証明するかのように、指先に炎をともしてみせる。
「チョ、チョット見せて貰うわよ。」
ミヤコはそう言ってカズトを凝視する。
ミヤコの斜め向かいにいたエルザは、彼女の目の色が一瞬金色に変わるのをハッキリと見た。
「………ハァ、アンタアホなの?なによ、この無茶苦茶なステータスはっ!」
「いや、だって、異世界って言ったら魔法だろ?使ってみたいって思うのは当たり前だろ?」
「それは分かるけどっ!分かるけどそれなら魔法使いに適したステータスにするのが普通でしょうがっ!極振りしろとは言わないけど、アンタのコレは逆に極振りしてるじゃないのっ!」
「そうは言うけどなぁ、純魔法使いなんて誰かに守って貰わないと即死だろうがっ!少しでも生存確率を上げるためには仕方がないんだよ。」
「後衛だから仕方がないでしょ。何のためのパーティよっ…………って、ゴメン、アナタ、エターナルソロだった?」
「っせぇなぁ。そうだよ、ぼっちだよ。誰もパーティなんか組んでくれないよ。悪かったなぁ!」
「あっと、……うん、まぁ、生きてれば、きっといいことあるよ。」
「………ここにいる時点で生死は分からないけどな。」
「……………………。あ、うん。なんかゴメン。」
「あやまらないでくれ。余計に切なくなる。」
「えっと、話が全然見えないんだけど?」
二人の会話が途切れたところで、エルザが声をかける。
「あ、うん、ごめんね。今から説明するわ。」
ミヤコはそう言うとメモを取り出しなにやら書き綴る。
「えっとね、私の持っている特殊能力の一つに『看破の魔眼』って言うのがあってね、それを使えば、相手の能力を数値化して見ることが出来るの。装備とかに使えば性能が分かるから鑑定のスキルの強化版みたいなものって思ってくれればいいかな?それでね、アイツの能力を数値化したのがコレ。」
ミヤコはメモを広げる。
名前:カズト 種族:ヒューマン ジョブ:メイジ 称号:脳筋メイジ
体力 :980
魔力 :320
力 :132
頑丈さ :148
魔法適性:68
素速さ :20
器用さ :16
「称号は見たまんまね。」
ミヤコのつぶやきを聞き流しながらメモをみる。
そこに記載されている数値を見ると、確かに偏っているのが分かるが、比較対象がないためその数値がどれほどのものかが分からない。
エルザがそう言うと、ミヤコは少し考えた後にもう一枚のメモになにやら書き込んで渡してくれる。
Dランク剣士
体力 :100
魔力 :15
力 :68
頑丈さ :90
魔法適性:10
素速さ :35
起用さ :45
Dランク魔法使い
体力 :50
魔力 :120
力 :15
頑丈さ :15
魔法適性:80
素速さ :45
起用さ :30
「私が知っているDランク冒険者のデータよ。多少の個人差はあるけど、平均的な数値よ。一応言っておくけど、魔法を使えるのは魔法適性値が60以上必要。この数値が大きいほど、使える魔法のバリエーションが広がるわ。………そう言う意味では一応彼も魔法使いの条件は満たしてるし、ジョブもメイジなんだけど……。」
納得いかないという表情でカズトを睨みつける。
「そんなこと言われてもなぁ。それより俺だけ晒されるのは納得いかねぇ。お前等のも見せろよ。」
「女の子に「見せろ」だなんて、変態がいるわ。」
「うんうん」
「違うんだぁ!そんな目で見ないでくれぇ。」
エルザとミヤコがジト目でカズトを見ると、カズトが頭を抱えてのたうち回る。
「冗談なのに。」
「その手の冗談は冗談にならないんだよ!」
「まぁいいじゃない。それよりコレが私の、こっちがエルちゃんのよ。」
そう言って見せてくれたメモの内容は以下の通りだった。
名前:ミヤコ 種族:ヒューマン ジョブ:召喚師 称号:ピーピングウィッチ
体力 :98
魔力 :960
力 :38
頑丈さ :26
魔法適性:198
素速さ :65
器用さ :78
名前:エルザ 種族:ヒューマン ジョブ:巫女 称号:神の花嫁
体力 :120
魔力 :280
力 :72
頑丈さ :48
魔法適性:98
素速さ :152
器用さ :88
「覗き魔って。覗き魔だって……。」
ミヤコの称号を見たカズトが腹を抱えて笑い出す。
そんなカズトを蹴り飛ばすミヤコだが、カズトはそれでも笑いが止まらず、ミヤコがムキになってゲシゲシと蹴り続ける。
………神の花嫁ねぇ。
エルザは自分の称号を見て、小さく溜息を吐く。
ミヤコの説明によれば、この称号というのは、現在までの行動や状況などを顕すものらしい。
だから、魔法使いと言いながら何も考えていないであろうカズトは『脳筋』だし、味方になりそうな人物を捜すために、看破の魔眼を使いまくっていたミヤコは『覗き』なのだろう。
だから、毎晩のようにユウの求めに応じている自分は『花嫁』なのね、と納得すると同時に『愛人』とか『情婦』じゃなくて良かったと安心する。
ひとしきりカズトを蹴り倒して憂さが晴れたのか、少しすっきりした顔でミヤコが戻ってくる。
「あとはユウちゃんだけだけど、抵抗力が強いみたいで、本人が許可してくれないと見れないのよねぇ。………ねぇ、許可してくれる?」
エルザの膝を枕にして寝ているユウの耳元に囁きかけるミヤコ。
「んー、エルたんがいいならいい……。」
「っていってるけど?」
「………良いんじゃないかな?」
エルザもユウの能力には興味があったので、深く考えずに許可を出す。
「じゃぁ、失礼して…………ってコレマジ?」
「そんなに凄いの?」
「ちょっと待って、書き写すから。……ハイ、コレがユウちゃんの。」
「マジかよ。」
「あ、アハ、アハハ………。」
ミヤコが差し出したメモを覗きこんだカズトとエルザも絶句する。
名前:ユースティア 種族:ハイヒューマン ジョブ:錬金術師 称号:ニート聖女
体力 :88
魔力 :2553600
力 :40
頑丈さ :38
魔法適性:67200
素速さ :80
器用さ :80
「えっと、色々ツッコミ所が多いんだけど……。」
「あ、うん、聞かない方がいいと思う。」
「……そうね。」
「……ニート聖女……ニートって……。」
カズトが再び笑いを堪えている。ユウの称号がツボにハマったらしい。
「ねぇ、ミヤコ。ニートってなに?」
カズトが何故そんなに笑っているのか、理解が出来なかったのでミヤコに訊ねるエルザ。
「えっと、なんて言えばいいのかな?こっちの世界でもみんな何かの職について働いているよね?」
「うん。」
「ニートって言うのは、働くべき年齢になっても働こうとしない人達の事を言うの。」
「えっ、働かないでどうやって生活するの?」
「んー、簡単に言えば親とか恋人とか友人に寄生しているのよ。」
「ひょっとしてニートさんって貴族?」
貴族の中には、働かずに遊んでばかりいるものも少なからず存在する。大抵は裕福な格式ある家柄の三男や四男に多く、親の財産で遊んで暮らしていけるから、働こうとしないらしい。
「貴族じゃないけど似たようなものかもね。ダメ人間ってところが…。」
「……私には疲れて帰ってくるエルたんの心を癒すという、重要かつ崇高なお仕事がある。」
不意にユウの声が聞こえる。
「あ、ユウ起きたの?」
「……うるさいから起きた。私は貴族のクズ男のようなダメ人間じゃない。」
どうやらユウは、自分なりに仕事をしていると言いたいらしいのだが……。
「えっとね、ユウちゃん。残念だけどさっきのユウちゃんの台詞、私たちの世界で「ヒモ」って呼ばれる最低のダメ男の常套句なんだよ?」
「がーん………。私がダメ男と一緒………。」
「はいはい、落ち込まない、落ち込まない。これから頑張ればいいんだよ。大丈夫、私はユウを見捨てないからね。」
落ち込むユウを懸命に励ますエルザ。
その様子を複雑な表情で見守るミヤコとカズト。
「なぁ……。」
「言わなくていいよ。」
「……そうだな。」
ユウが立ち直るまで、生暖かい目で見守ることにしたミヤコとカズトだった。
◇
「右に行ったよっ!」
「任せろっ!エア………あぁ、逃げるなぁ!」
「アンタの反応が遅いのよっ!魔法はあきらめて殴りなさいよっ!」
「左から来るっ!」
「あー、クソッ。ドリャァァッ!」
やけくそに放つカズトの拳が、ウォーターラビットを捉える。そのまま弾き飛ばしたところで、ウォーターラビットが絶命し、その場に転がる。
「ふぅ、コレで3匹目?」
「うん、そうだね。」
あれから、愚図るユウを宥めて、パーティの連携の様子を見ようと近くの森に来たのはいいのだが、結構ながい時間をかけて狩れたのは、ウォーターラビット3匹のみ。
ユウは拗ねて後方で座り込んでいるが、元々ユウは戦力としてカウントしていないので問題はない。問題なのは、カズトとミヤコの二人だ。
カズトは前衛にいるから、攻撃を止めつつ殴るなり武器を使うなりしてくれればいいのに、攻撃するのに魔法を使おうとするので、その隙に逃げられたり、ターゲットが移ったりして、攻守共に足を引っ張る結果になっている。
ミヤコに至っては、全ての属性魔法が使えると言っても、現在使えるのは初級の一部のみなので圧倒的に火力不足。
ミヤコのジョブは召喚師の為、ミヤコが本来の力を発揮するためには『召喚獣』が必要になる。
しかし、どうすれば『召喚獣』を得ることが出来るのかは、ミヤコ自身にも分からない為、現状では打つ手がなかった。
「先は長そうねぇ。」
エルザは、決して強いとは言えないウォーターラビットを解体しながら、誰にともなく呟くのだった。
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