世界を破滅させる聖女は絶賛引き籠り中です

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引きこもり聖女とカズトの事情 その1

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「はぁ、保留かぁ。」
ミヤコが大きなため息をつく。
今は特別試験の真っ最中。三日目にして初めての依頼達成報告をしてきたのだが、ある事情により、3つ受けたうちの一つの依頼が条件確認により保留という結果になってしまったのだ。
「実際『ジャイアントスパイダー』は倒してないわけだしね。まぁ、失敗扱いでペナルティがなかっただけマシよ。」
「それはそうだけど……普通に考えたら『脅威を排除した』ことに変わりはないんだから達成でいいじゃないのよ。」
「だから『保留』なんでしょ。そんな事より次の依頼のこと考えましょ。あと22ポイントどうするかよ。」
「うーん、とは言ってもねぇ……。明日出る筈のオーク討伐の依頼が取れるといいんだけどね。」
討伐系の依頼は、複雑な事を考えず、とにかく倒せばいいので、人気のある依頼だ。
特にオークは手ごろな強さの上、達成ポイントが高いので、人気が高い。
一応、試験の為、様々な経験をさせるべく、学校側としては同じ依頼を続けて受けることは禁止されている。
しかしでなければ構わないため、間にいくつか別の依頼を挟ば、再度依頼を受けることが出来る為、狙っているライバルは数多い。
「3人で66ポイントね……。とりあえず、30ポイントの討伐依頼と最大10ポイントになるお使い依頼を二つ受けて三日以内に終わらせましょう。そうすれば、残り4日で16ポイント、何とかなるわよ。」
「それしかないかぁ。じゃぁ、探してくるね。」
ミヤコはそう言うと依頼ボードの方へ向かっていく。

「ねぇ、エルたん。私達学園に通う意味ある?」
「うーん、ミヤコみたいな友達が出来た事と、そのミヤコの助けになれる事ってだけでも意味があるって思えない?」
実はエルザも似たようなことを考えていた。
だけど、ミヤコやカズトと出会い、異世界人というものを目の当たりにして、考え方が変わった。
ユウという桁違いの非常識がそばにいるお陰で見過ごしがちだが、ミヤコもカズトも十分非常識などの力を抱えている。
彼らがこの世界の事を知らないまま、自らの欲望に従ってその力を行使したら?彼らが世間知らずなのをいいことに、その力を悪用しようとするものに使われたら?彼らを知らず知らずのうちに傷つけ、その報復として力を使われたら……。
……待っているのは、神話にもある世界の終わりだ。
今より魔法も文明もはるかに水準が高かった超古代文明でさえ、ユウ一人の力で崩壊したのだ。
水準の低い今の文明では、ユウ程ではなくても、それに近しい可能性を持つ異世界人の力の前には成す術もないだろう。

「あのね、ユウは前に言ってたよね?魔王なんて存在しないって。」
「ウン、言った。」
「でもね、今の世界には魔王と勇者の伝説が存在するのは確かなの。だとすると、ユウが眠っていた間に魔王という存在が現れたのだと私は思うのよ。」
「ウン、それで?」
「ウン、私こう思ったのよ。魔王って実はカズトやミヤコ達みたいな異世界からのテンイシャだったんじゃないかって。」
「……可能性はある。」
「ユウもね、当時の権力者の所為で、人類に絶望し破壊者となったでしょ?それが『破壊神』として今に伝わっている。だったら、何も知らないテンイシャがね、ユウみたいに知らずの内に利用されていて、それを知った後、復讐のために力を振るったとしたら?その驚異的な力を持つものを『魔王』と呼んで、それに対抗するために『勇者』が必要だった。」
「手に負えないテンイシャの力に対抗するために、新たなテンイシャを呼ぶ……バカなの?」
「アハッ、そういうバカな人はいつの時代にも存在するんだよ。」
だからね、とエルザはユウに言う。
「もしね、カズトやミヤコがね、そういうバカな貴族たちに利用されたら、利用されていると知ったら……怖い事になると思わない?」
「ウン、わかる。」
「王様たちもバカじゃないから、そう言う事にならないようにって、私に監視を頼んだと思うけど、万が一の場合、ミヤコ達を殺してでも止めたいって考えてるのは間違いないのよ。だから私に依頼した……ユウがいるからね。」
「エルたん利用されてる?もしそうなら……。」
ユウの身体から殺意が立ち上る。
「あ、ううん、大丈夫。私だっていいように操られる気も利用される気もないから。それにミヤコたちのことは大好きだしね、いざとなったら私の身を盾にしてもみんなを守るよ。……ただね、この国は平和だし、王様も基本的には良い人だからね、ユウにもミヤコにもカズトにも嫌いになって欲しくないの。これが、ミヤコやカズトがどうしようもない悪人だったら、別だけど、二人とも良い人だしね。」
「うん、プリンくれる人に悪人はいない。」

「ちょっとちょっと、ユウちゃんそれチョロすぎだよ。」
背後から呆れた声が振ってくる。
いつの間にかミヤコが戻って来ていたらしい。
ユウとの話に夢中で気付かなかった。
「あ、アハハ………、聞いてた?」
「まぁね。」
「うぅ……恥ずかしいかも。」
「大丈夫よぉ。エルちゃんの愛はしっかり伝わってきたから。私には当然として、……この馬鹿にもね。」
ミヤコがそう言って背後にいる人物を前に突き出す。
「や、ヤァ、久しぶり。」
そう言って気まずそうな顔を向けるのは、今話題にも出て来ていたカズトだった。



「此処なら、誰か来ても直ぐ分かるし、危険も無い。」
ユウがそう言うが、カズトは青ざめている。
「イヤ……確かに誰かが来たら直ぐ分かるだろうけど、危険がないって………。」
カズトが言いたいこともよくわかる。
今行る場所は、ダンジョン4階層の奥にあるコボルトの集落の真ん中だった。

ミヤコがカズトを連れてきた後、出来れば他のパーティの目が無いところで話したいと言うので、それならいいところがある、とユウが言い出し、連れてこられたのがここだった。
この場所に着くと当然コボルトたちが襲いかかってきたがユウが雷撃の呪文を放つと、それだけで退散し、遠巻きに様子を伺っていた。
その間にユウはテーブルセットを取り出し、そこを中心に半径5m位の魔障壁を張り今に至る。
魔障壁により、エルザたちとコボルトの間には見えない壁が生じ、現在はその壁に貼りついたコボルトたちが、恐る恐るながらも興味津々と言った感じでこちらを伺っている。

「私の魔障壁はドラゴンでも破れないから安全。」
えっへん、とユウが胸を張る。
「ねぇ、エルちゃん………。」
ミヤコが困った顔をエルザに向けるが……。
「ユウのやることだからね。それよりみんな座ってよ。お茶さめちゃうよ。」
この状況に全く動じてないエルザを見て、ミヤコとカズトは溜息を吐きつつ椅子に座る。
「はぁ、私たちの事を色々言うけど、エルちゃんたちも大概だからね。分かってる?」
ミヤコは入れて貰ったお茶に口を付けながら、そう言うが、エルザは苦笑するだけだった。

「それで、カズトはどうしたの?」
皆がお茶を飲み、一息吐いたところでエルザが切り出す。」
「私もね、依頼ボードのある片隅で座り込んで泣いていたこのバカを連れてきただけだから、詳しいことは聞いてないの。」
「泣いてないっ……………。」
「そんな事はどうでもいいわよ。それよりどうしたの?あの娘たちは?」
「うっ………女なんか、女なんて……信じられねぇ……。」
ブツブツ呟き出すカズトを宥めつつ聞きだした話はこうだった。

まず、カズトたちは初日に依頼を2つ受けたんだそうだ。
一つはコボルト部屋の清掃。
2階層のある一角に「コボルト部屋」と呼ばれる、コボルト達が集まる部屋がある。
そこのコボルト達を一掃し、コボルト達が集めた物を持ち帰る。
もう一つは、定番のゴブリン退治。
4階層に点在するゴブリンの巣を強襲し、そこのゴブリンを一掃すること。
共に、パーティで30ポイント貰える大きな依頼で、最初に取れてかなりのアドバンテージになると喜んでいた。
カズトは直ぐにでもダンジョンに入ろうとしたが、二人の少女に、先ずは準備が先と言われて街へ行ったのだそうだ。

「まぁ、当たり前よね。何の準備もなくいきなりダンジョンに入ろうとするカズトの方が間違っているでしょ?………それで?」
「イヤ、まぁ、そうなんだけどさ、彼女達は街で良さそうな装備などを見繕ってね………。」
少女達は自分たちにあう武器や防具などを、1時間かけて選んだ後、カズトに支払いを頼んできた。
何でも、試験の間にかかった費用は、経費として試験後に精算出来るらしい。その時に誰が何を購入して幾ら支払ったかというのを計算するのが面倒なので、誰か一人がまとめて支払って計上する方がいいだろう、とのことだった。
その考え方は、カズトにも理解できるので、何の疑問も抱かずに支払ったのだという。
文句一つ言わずにお金を出したカズトに気をよくしたのか、少女達はカズトの腕をとり自分の腕を絡ませて、その後街中を色々回ったらしい。

「はぁ、両手に花でさぞかし気分がよろしいようで。そのままいい仲になれると勘違いした?」
「そ、そんな事は………。ただ、今夜は街の良い宿に泊まって、ダンジョン攻略は明日からと言う話にはなったけど………。」
カズトが期待しなかったと言えば嘘になる。
彼女達は何かにつれて、カズトに触れてきたし、カズトの話を笑いながら聞いてくれた。
宿でも当たり前のように一部屋を頼んでいたので、カズトの期待は否が応でも高まる。
宿代はかなりの金額だったが、部屋にお風呂がついているから、と説明されると、そんなものかと納得する。
と言うより、お風呂が……と言いながら頬を赤く染め、モジモジと恥じらう様子を見たら些細なことはどうでも良くなったのだ。
そして、遂にその時が……。
今、彼女達がお風呂に入っている。
流石にいきなり一緒に、というのは無理があり、カズトが先に入ったのだが、当然彼女たちが出てくるまでの時間を持て余す。
この先のことを考えると、ドキドキ、ソワソワして落ち着かない。
ふと見ると、サイドテーブルの上に、彼女達が頼んでくれていた果実水がある。
気を落ち着かせようと、その果実水を飲んだのがいけなかった。
それは果実水ではなく、果実酒だったのだ。
慣れないアルコールの接種に、緊張と今までの疲れが溜まっていたのか、程なくして意識を失い、カズトが目覚めたのは翌日の朝遅い時間だった。
彼女達は、笑顔出来にしないでと言ってくれていたがどことなく機嫌が悪いように見えた。
それもそうだろう。事に及ぶつもりでいたのが、風呂から上がれば、相手が酔いつぶれて寝ている………コレが逆の立場なら、キレる自身がカズトにはあった。
だから、誠心誠意、心を込めて謝り続け、それが伝わったのか、彼女たちも許してくれたと思う。
何故ならば、宿を出るとき一人が「あの部屋試験中ずっと取ってあるから」と耳元で囁いてくれたから。
カズトは気を取り直し、早く試験を終えようと気合いを入れてダンジョンに潜ったのだった。

「えっと、あの………聞いてる?」
カズトが周りをみる。
ユウはプリン・ア・ラ・モードに夢中で、エルザは、そのプリンをスプーンで掬ってユウに食べさせている。
ミヤコはグラスを片手になにやら資料を読んでいた。
「聞いてるよぉ。えっちぃ事を目論んで失敗したんでしょ?それで何?代わりに私たちを抱きたいの?そう言うことなら娼館にでも行けばぁ?」
ミヤコの視線と声が冷たい。
ユウに至っては毛虫を見るような目を向けてくる。
「違うんだ!そうじゃなくて、俺は騙されたんだよ!」
そう言って、カズトは続きを話し出す。

依頼は簡単に終えることができた………と言いたいところだが、そう簡単なものじゃなかった。
最初のコボルト部屋にいたコボルトの数は10匹。
3人だったら大した数ではないのだが彼女達は最初に魔法と弓を射たきり、最後まで何もしなかったのだ。
おかげで10対1と言う不利な戦いを強いられることになり苦戦してしまった。
戦いの後、そのことを告げると、狭い部屋の中で、間違えてカズトに当たる危険があったから攻撃を控えていたと言われた。
そんな気遣いをしてくれたことに感謝しながらも、次はしっかりと援護してくれるようにお願いしておく。
そのお願いを聞き届けてくれたのか、次のゴブリン退治の時には彼女たちの援護は凄まじかった。
カズト毎ゴブリン達を焼く炎、カズトがいてもお構いなしに飛び交う風の刃。
まるでカズトがいないかのような戦い方だった。
実際、高い防護力と抵抗力を誇るカズトでなかったら、大怪我を負っていたことは間違いない。
戦いが終わると、彼女達はカズトに見向きもせずに帰って行った。
何か怒らせてしまったのだろうかと、慌てて後を追いかけるカズトだったが、ダンジョンの地図も灯りも彼女たちが持っていたため、不慣れなカズトでは追いつくことが叶わず、迷いながらダンジョンから脱出した時は、すでに夜になっていた。
細かいことは明日にしようと宿に戻ったが、部屋がないと言われる。
そんなはずはない、と二人の名前を出すと、確かに彼女たちは部屋を取っていた………ただし二人分だけ。
詳しく話を聞くと、初日のみ3人で後は2人と最初からそう言う契約になっているのだという。
フザケるな!と彼女たちの部屋に乗り込もうとしたら、宿の用心棒に追い出されてしまった。
この時になって、ようやくおかしいと思い、色々確認する。
結果、便利だから、と言われパーティ共有にしていたアイテム袋の中身はすべて空っぽ。パーティはすでに解散済み、学園が運営する仮設ギルドに行き状況を説明しても取り合ってもらえず、それどころか彼女達はカズトをパーティとして申請しておらず、カズトは未だに依頼を一つも受けていない状態だと言うことが判明する。

一度に色々なことが起きすぎて、カズトはもうどうしていいか分からず、依頼ボードのあるコーナーの片隅でぼんやりとしていた。
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