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引きこもり聖女とカズトの事情 その2
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「クッソ………女なんて……バカにしやがって………。」
話し終えると、悔しさがぶり返したのか、カズトが嗚咽を漏らす。
「まぁ、典型的なハニトラに引っかかったってわけね。自業自得と言えばそれまでだけど……、こういうのどうなの?」
ミヤコは気の毒そうにカズトをみた後、エルザに視線を向ける。」
「そうねぇ、一言で言えばカズトが悪い。ある意味彼女たちに感謝しないと。」
「ア?どう言うことだよ、それ。」
カズトが怒りのこもった目でエルザを睨む。
即座にユウが反応し、手に持ったスプーンに魔力を込める。
「落ち着きなさいよ。ユウちゃんもそんな物騒なのポイしなさいっ。……エルザも、どういうことか説明して?」
ヤバそうな雰囲気になりそうなその場をミヤコが宥める。
カズトが視線を逸らすと、ユウもスプーンをポイっと放り投げる。
そのスプーンは、魔力障壁の向こう側へと飛んでいき、コボルトたちが、何事かとスプーンの周りに集まる。
その途端スプーンが弾け飛び、周りにいたコボルトたちが吹き飛ぶ。
かなり激しい爆音がしたはずだが、魔力障壁のお陰でお供衝撃も伝わってこない。
周りがそんなことになっているのに気付かないのか、気にしていないのかわからないが、エルザが話し始める。
「まず、この学園の……冒険者課程の存在意義って覚えてる?」
「えっと、『実力があるのに知識や経験が足りないため低ランクにあるものを、実力に見合ったランクに引き上げるため、足りないものを教える』……であってた?」
「ウン、そのとおりね。それで、今回の試験は最初という事もあって、依頼を受けて達成するまでの実技を身をもって経験するためのものなの……これは分かる?」
「わかる……けど。だから依頼の選別や受注を私に任せてくれたんだよね?経験を積ませるために。」
ミヤコは頷くが、それが何を意味するのかがまだ分かっていないようだった。
「この試験で本当に経験を積まないといけないのはね、単に依頼を受けたり報告したりするってことだけじゃないのよ。」
「……どういうことだ?」
今まで黙って聞いていたカズトが口を出す。
「冒険者は、依頼に係るすべてにおいて責任が生じるのよ。だから受ける前、受けた後、あらゆる時にあらゆる状況を想定して対処しなければならないの。」
「???」
ミヤコもカズトも理解が追い付いていないようだと感じて、エルザはもう少しかみ砕いて説明することにする。
「まずね、この試験を達成するために自我の戦力を冷静に分析することは必須。それで足りないと思えばこの試験の間だけでもヘルプを頼むのも間違いじゃない。だから彼女たちは頼りになる盾役としてカズト、あなたに白羽の矢を立てた、ここまではいい?」
「あぁ。」
「一時的な協力の場合、そこには双方にとって何らかの利益がなければ成立しない。彼女たちにとって、魔法使いである自分たちを護る盾役が必要だった。だけど、カズトにとっての利益は何?」
「えっと、それは……。」
「言えないよねぇ。えっちぃことが目的だったなんて。」
うろたえるカズトに、ニヒヒと笑いながら突っ込むミヤコ。
「何が理由でもいいんだけどね……それを達成するための確約はあったの?他に、パーティに入るための条件とか報酬とかの話はした?契約を結んだ?」
冷たい視線をカズトに向けながら、エルザは聞く。
「いや、それは、そのぉ……。」
「確約も得ていなく、契約も交わしていない、しかも口約束すらなければ、どう都合よく利用されても文句は言えないの。」
「うぐっ……。」
「つまりね、実際の依頼でも、こういう事は起こりえる事態なのよ。それに対処するのも冒険者としては必要な事。」
「騙される奴が悪い……納得できないけど。」
ボソッと、ユウが言う。
「そういう事かぁ。」
「そういう事。だから、この件について学園から何らアクションがあることはないの。それどころか、そう言う事態に対処できなかったという事で減点対象になるわ。」
「そんな……どうすればよかったってんだよ、チクショウ。俺はただあの子たちが困っているっていうから……。」
「そう言うカズトの人の良さに付け込んだのよね。」
仕方がないなぁというようにミヤコが言う。
「カズトはまず、条件を提示するべきだったわ。助ける代わりにえっちぃことがしたいなら、報酬として身体を求めるっていう契約を交わす……ゲスいけど。」
「ゲスね。」
「ゲス。」
「うぉぉぉぉぉっ!どうすればっ!」
「……さらに言えば、依頼の受注に関しても任せっぱなしだったでしょ?受注、報告に立ち会っていれば、少なくともカズトがパーティとして申請されておらず、ポイントも得ることが出来ない、何て事態だけは避けられたわ。」
「グゥ……。」
「まぁ、実際の依頼だったら、命にかかわることもあるから。……今回の事はいい経験だと思う事ね。」
「有り金前部とアイテム全て……高い授業料だったねぇ。」
ミヤコが項垂れるカズトの肩をポンポンと叩く。
「あっ!アイテム全てって、ひょっとしてあのポーションも?」
今まで平静でいたエルザがいきなり慌てだす。
「あのポーションって、エルちゃんからもらったこれ?」
ミヤコが自分がもらったポーションを取り出す。
「そう、それよ。……それは普通のポーションじゃないのよ。」
「普通じゃないって?」
「それね、ロストテクノロジー伝説級の『エリクシル・ポーション』なの。部位欠損もかけるだけで治るし、心臓が止まった直後であれば蘇生も可能なシロモノ……。」
「えっと、それってどれくらいの価値なの?」
「値段なんか付けられないよ。伝説級のロストテクノロジー品は国で管理する国宝だから。」
「国宝……そんなもの、何でホイホイと気軽に私たちに渡すのよっ、アンタバカなのっ!」
思いもよらない価値を聞いて、ミヤコの言葉が悪くなる。
「だって……。ユウがたくさん作っちゃったし、市場に流すわけにもいかないし、……ミヤコたちに何かあったら悲しいし……。」
「だからといってねぇ……。ハァ、どうするのよ。あの娘たちから何とか取り返さないと。」
「大丈夫。」
「大丈夫って、ユウ。あれが市場に出たら大変なことになるのよ。出所を探し出すために手段を択ばない奴らだってきっと出てくるわ。」
「だから大丈夫、カズトに渡したのは10000倍希釈した失敗作だから。」
「10000倍希釈って……ノーマルポーションより効果薄いじゃないのっ。」
「えっ?」
ユウとエルザの会話を聞き、それまで落ち込んでいたカズトが顔を上げる。
「男に渡すモノなんてそれでも勿体ない。エルたんから貰えただけ感謝すべき。」
「感謝って、ユウ、あのね…………、もぅいいわ。」
エルザががっくりと肩を落とす。
ともかく、問題は解決された……というか問題にもなってなかったのだ。
今はそれでよしとするべきだった。
「えっと、どういうこと?問題はないってことでいいのかな?」
「あ、うん、……カズトに渡したのってノーマルポーションの劣化品だったみたい。」
「あ、……そうなのね。」
ミヤコはユウを見た後、可哀想なものを見る目でカズトを見る。
「う……俺の存在って……。……だから女なんて……。」
「男に走る?」
ユウがニヤリと笑ってカズトに聞く。
「うっ、くそぉっ!それでも女がいいんだよぉっ!」
「諦めの悪い。」
ユウがチッと舌打ちをしながら下がる。
「ユウ、あんたね……。」
「エルちゃんも苦労が絶えないわね。」
ミヤコが慰めるようにポンポンとエルザの肩を叩く。
「ま、とりあえず、事情は分かったけど……、これからどうするの?」
ミヤコが、項垂れるカズトに訊ねる。
「どうもこうも……なる様にしかならねぇだろ。とりあえず俺はこの試験失格だろうし……。」
「はぁ……仕方がないわね。貸し一つよ。」
「あん?」
「貸しだって言ってるの、戻ってきなさいよ。……いいでしょ、エルちゃん。」
「構わないけど……。」
エルザはユウを見る。
「男、いらない。」
「だよなぁ……。」
ガックリと項垂れるカズト。
「まぁまぁ、ユウちゃん。コレ食べる?」
「なにこれ?」
「チョコレート……まだ試作品だけど。」
「……!?……美味しぃ!」
「これの材料手に入れるのに人手が欲しいのよ。あまり綺麗な場所じゃないことが多いから、そんなところにエルちゃんを行かせられないでしょ?」
「ん、認める。」
「カズト、OKだよ。」
「……なぁ、俺何やらされるんだ?」
「いいのいいの、細かい事は気にしないの。……ってことで、取り敢えず、ここのコボルト倒して地上に戻りましょ。」
「そうね、カズトをパーティに入れる申請をしないといけないし。今のままだとカズトだけ試験に落ちちゃうしね。……でも、カズトの分を合わせると残り96ポイントかぁ、計画を練り直さないとね。」
「ふふん、そこは任せてっ!」
ミヤコはにっこりと笑いながら依頼書を見せる。
「ダンジョンに潜るっていうから急いで受けてきたんだよ。急だったから選ぶ余裕はなかったんだけどね。」
「コボルトナイフの収集、ダンジョンモンスターの調査、ダンジョン鉱物の調査……。」
ユウが依頼書を読み上げる。
コボルトナイフの収集は、コボルトが持っているナイフを持って帰る事、1本当たり1ポイントで最低5本から最大10本迄。
ダンジョンモンスターの調査は、ダンジョンに生息するモンスターを倒す。倒した種類1種類につき1ポイント。最低5種類、最大10種類まで。
ダンジョン鉱物の調査は、ダンジョンの壁を掘って採れる鉱物を持ち帰る。1種類につき1ポイント、最大10種類まで。
「最大で30ポイント……いいわね。」
「でしょ、適当に選んだにしてはいい条件だと思うのよ。……まぁ、今回の依頼ではカズトにポイントは入らないけど。」
「それは仕方がないわな。」
カズトは、当然だろ?と首を振る。
「じゃぁ、取り敢えず、ここのコボルトの殲滅からね。……っと、カズトは何も持ってないんだっけ?」
「あぁ、だけど、防具はそのままだし、武器はなくてもコレがあるからな。」
そう言って、拳を突き上げるカズト。
「じゃぁ、取り敢えず……。」
「これ持ってけ。」
エルザが何かを取り出そうとする前に、ユウがカズトに何かを渡す。
「これは?」
「失敗作……エルたんから物をもらうなんて1万年早い。」
「あ、うん、ありがと……。しかし1万年って……。」
カズトはユウから渡された品物を見る。
ポーションが5本と皮のグローブ。
カズトはポーションをアイテム袋にしまい、皮の手袋に手を通す。
「これは……。魔力が……。」
「それは魔力グローブ。魔力を通しやすい材質で作ってある。一応魔力をため込む性質もあるけど、ただそれだけのもの。」
「いや、それだけって……、これだけのものが失敗作って……。」
「あー、ユウの事だからね。深く考えない方がいいよ。」
エルザはそう言うと、双剣を抜く。
「じゃぁ、行きますっ!ユウ結界を解いて。」
「はーい、頑張ってね。」
ユウが魔力障壁を解除すると同時に、エルザがコボルトの群れの中に飛び込んでいく。
「あー、考えても仕方がねぇっ!」
遅れてカズトがエルザの後に続く。
「バニィ、クーちゃん、頑張って活躍するのよ。」
ミヤコが召喚石を投げると、そこから召喚獣が飛び出す。
「このレベルなら、加護も必要ない。終わったら起こして。」
ユウはそう言ってその場で横になる。
「ハイハイ、でも、そんなにゆっくりしてられないと思うよ。」
ミヤコの言うとおり、30匹以上いたコボルトはすでに数匹にまで減っていた。
「これは、ちょっとレベルの高い依頼を受けてもいいかもね。」
ミヤコはエルザたちの戦いぶりを見ながらそう呟くのだった。
話し終えると、悔しさがぶり返したのか、カズトが嗚咽を漏らす。
「まぁ、典型的なハニトラに引っかかったってわけね。自業自得と言えばそれまでだけど……、こういうのどうなの?」
ミヤコは気の毒そうにカズトをみた後、エルザに視線を向ける。」
「そうねぇ、一言で言えばカズトが悪い。ある意味彼女たちに感謝しないと。」
「ア?どう言うことだよ、それ。」
カズトが怒りのこもった目でエルザを睨む。
即座にユウが反応し、手に持ったスプーンに魔力を込める。
「落ち着きなさいよ。ユウちゃんもそんな物騒なのポイしなさいっ。……エルザも、どういうことか説明して?」
ヤバそうな雰囲気になりそうなその場をミヤコが宥める。
カズトが視線を逸らすと、ユウもスプーンをポイっと放り投げる。
そのスプーンは、魔力障壁の向こう側へと飛んでいき、コボルトたちが、何事かとスプーンの周りに集まる。
その途端スプーンが弾け飛び、周りにいたコボルトたちが吹き飛ぶ。
かなり激しい爆音がしたはずだが、魔力障壁のお陰でお供衝撃も伝わってこない。
周りがそんなことになっているのに気付かないのか、気にしていないのかわからないが、エルザが話し始める。
「まず、この学園の……冒険者課程の存在意義って覚えてる?」
「えっと、『実力があるのに知識や経験が足りないため低ランクにあるものを、実力に見合ったランクに引き上げるため、足りないものを教える』……であってた?」
「ウン、そのとおりね。それで、今回の試験は最初という事もあって、依頼を受けて達成するまでの実技を身をもって経験するためのものなの……これは分かる?」
「わかる……けど。だから依頼の選別や受注を私に任せてくれたんだよね?経験を積ませるために。」
ミヤコは頷くが、それが何を意味するのかがまだ分かっていないようだった。
「この試験で本当に経験を積まないといけないのはね、単に依頼を受けたり報告したりするってことだけじゃないのよ。」
「……どういうことだ?」
今まで黙って聞いていたカズトが口を出す。
「冒険者は、依頼に係るすべてにおいて責任が生じるのよ。だから受ける前、受けた後、あらゆる時にあらゆる状況を想定して対処しなければならないの。」
「???」
ミヤコもカズトも理解が追い付いていないようだと感じて、エルザはもう少しかみ砕いて説明することにする。
「まずね、この試験を達成するために自我の戦力を冷静に分析することは必須。それで足りないと思えばこの試験の間だけでもヘルプを頼むのも間違いじゃない。だから彼女たちは頼りになる盾役としてカズト、あなたに白羽の矢を立てた、ここまではいい?」
「あぁ。」
「一時的な協力の場合、そこには双方にとって何らかの利益がなければ成立しない。彼女たちにとって、魔法使いである自分たちを護る盾役が必要だった。だけど、カズトにとっての利益は何?」
「えっと、それは……。」
「言えないよねぇ。えっちぃことが目的だったなんて。」
うろたえるカズトに、ニヒヒと笑いながら突っ込むミヤコ。
「何が理由でもいいんだけどね……それを達成するための確約はあったの?他に、パーティに入るための条件とか報酬とかの話はした?契約を結んだ?」
冷たい視線をカズトに向けながら、エルザは聞く。
「いや、それは、そのぉ……。」
「確約も得ていなく、契約も交わしていない、しかも口約束すらなければ、どう都合よく利用されても文句は言えないの。」
「うぐっ……。」
「つまりね、実際の依頼でも、こういう事は起こりえる事態なのよ。それに対処するのも冒険者としては必要な事。」
「騙される奴が悪い……納得できないけど。」
ボソッと、ユウが言う。
「そういう事かぁ。」
「そういう事。だから、この件について学園から何らアクションがあることはないの。それどころか、そう言う事態に対処できなかったという事で減点対象になるわ。」
「そんな……どうすればよかったってんだよ、チクショウ。俺はただあの子たちが困っているっていうから……。」
「そう言うカズトの人の良さに付け込んだのよね。」
仕方がないなぁというようにミヤコが言う。
「カズトはまず、条件を提示するべきだったわ。助ける代わりにえっちぃことがしたいなら、報酬として身体を求めるっていう契約を交わす……ゲスいけど。」
「ゲスね。」
「ゲス。」
「うぉぉぉぉぉっ!どうすればっ!」
「……さらに言えば、依頼の受注に関しても任せっぱなしだったでしょ?受注、報告に立ち会っていれば、少なくともカズトがパーティとして申請されておらず、ポイントも得ることが出来ない、何て事態だけは避けられたわ。」
「グゥ……。」
「まぁ、実際の依頼だったら、命にかかわることもあるから。……今回の事はいい経験だと思う事ね。」
「有り金前部とアイテム全て……高い授業料だったねぇ。」
ミヤコが項垂れるカズトの肩をポンポンと叩く。
「あっ!アイテム全てって、ひょっとしてあのポーションも?」
今まで平静でいたエルザがいきなり慌てだす。
「あのポーションって、エルちゃんからもらったこれ?」
ミヤコが自分がもらったポーションを取り出す。
「そう、それよ。……それは普通のポーションじゃないのよ。」
「普通じゃないって?」
「それね、ロストテクノロジー伝説級の『エリクシル・ポーション』なの。部位欠損もかけるだけで治るし、心臓が止まった直後であれば蘇生も可能なシロモノ……。」
「えっと、それってどれくらいの価値なの?」
「値段なんか付けられないよ。伝説級のロストテクノロジー品は国で管理する国宝だから。」
「国宝……そんなもの、何でホイホイと気軽に私たちに渡すのよっ、アンタバカなのっ!」
思いもよらない価値を聞いて、ミヤコの言葉が悪くなる。
「だって……。ユウがたくさん作っちゃったし、市場に流すわけにもいかないし、……ミヤコたちに何かあったら悲しいし……。」
「だからといってねぇ……。ハァ、どうするのよ。あの娘たちから何とか取り返さないと。」
「大丈夫。」
「大丈夫って、ユウ。あれが市場に出たら大変なことになるのよ。出所を探し出すために手段を択ばない奴らだってきっと出てくるわ。」
「だから大丈夫、カズトに渡したのは10000倍希釈した失敗作だから。」
「10000倍希釈って……ノーマルポーションより効果薄いじゃないのっ。」
「えっ?」
ユウとエルザの会話を聞き、それまで落ち込んでいたカズトが顔を上げる。
「男に渡すモノなんてそれでも勿体ない。エルたんから貰えただけ感謝すべき。」
「感謝って、ユウ、あのね…………、もぅいいわ。」
エルザががっくりと肩を落とす。
ともかく、問題は解決された……というか問題にもなってなかったのだ。
今はそれでよしとするべきだった。
「えっと、どういうこと?問題はないってことでいいのかな?」
「あ、うん、……カズトに渡したのってノーマルポーションの劣化品だったみたい。」
「あ、……そうなのね。」
ミヤコはユウを見た後、可哀想なものを見る目でカズトを見る。
「う……俺の存在って……。……だから女なんて……。」
「男に走る?」
ユウがニヤリと笑ってカズトに聞く。
「うっ、くそぉっ!それでも女がいいんだよぉっ!」
「諦めの悪い。」
ユウがチッと舌打ちをしながら下がる。
「ユウ、あんたね……。」
「エルちゃんも苦労が絶えないわね。」
ミヤコが慰めるようにポンポンとエルザの肩を叩く。
「ま、とりあえず、事情は分かったけど……、これからどうするの?」
ミヤコが、項垂れるカズトに訊ねる。
「どうもこうも……なる様にしかならねぇだろ。とりあえず俺はこの試験失格だろうし……。」
「はぁ……仕方がないわね。貸し一つよ。」
「あん?」
「貸しだって言ってるの、戻ってきなさいよ。……いいでしょ、エルちゃん。」
「構わないけど……。」
エルザはユウを見る。
「男、いらない。」
「だよなぁ……。」
ガックリと項垂れるカズト。
「まぁまぁ、ユウちゃん。コレ食べる?」
「なにこれ?」
「チョコレート……まだ試作品だけど。」
「……!?……美味しぃ!」
「これの材料手に入れるのに人手が欲しいのよ。あまり綺麗な場所じゃないことが多いから、そんなところにエルちゃんを行かせられないでしょ?」
「ん、認める。」
「カズト、OKだよ。」
「……なぁ、俺何やらされるんだ?」
「いいのいいの、細かい事は気にしないの。……ってことで、取り敢えず、ここのコボルト倒して地上に戻りましょ。」
「そうね、カズトをパーティに入れる申請をしないといけないし。今のままだとカズトだけ試験に落ちちゃうしね。……でも、カズトの分を合わせると残り96ポイントかぁ、計画を練り直さないとね。」
「ふふん、そこは任せてっ!」
ミヤコはにっこりと笑いながら依頼書を見せる。
「ダンジョンに潜るっていうから急いで受けてきたんだよ。急だったから選ぶ余裕はなかったんだけどね。」
「コボルトナイフの収集、ダンジョンモンスターの調査、ダンジョン鉱物の調査……。」
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コボルトナイフの収集は、コボルトが持っているナイフを持って帰る事、1本当たり1ポイントで最低5本から最大10本迄。
ダンジョンモンスターの調査は、ダンジョンに生息するモンスターを倒す。倒した種類1種類につき1ポイント。最低5種類、最大10種類まで。
ダンジョン鉱物の調査は、ダンジョンの壁を掘って採れる鉱物を持ち帰る。1種類につき1ポイント、最大10種類まで。
「最大で30ポイント……いいわね。」
「でしょ、適当に選んだにしてはいい条件だと思うのよ。……まぁ、今回の依頼ではカズトにポイントは入らないけど。」
「それは仕方がないわな。」
カズトは、当然だろ?と首を振る。
「じゃぁ、取り敢えず、ここのコボルトの殲滅からね。……っと、カズトは何も持ってないんだっけ?」
「あぁ、だけど、防具はそのままだし、武器はなくてもコレがあるからな。」
そう言って、拳を突き上げるカズト。
「じゃぁ、取り敢えず……。」
「これ持ってけ。」
エルザが何かを取り出そうとする前に、ユウがカズトに何かを渡す。
「これは?」
「失敗作……エルたんから物をもらうなんて1万年早い。」
「あ、うん、ありがと……。しかし1万年って……。」
カズトはユウから渡された品物を見る。
ポーションが5本と皮のグローブ。
カズトはポーションをアイテム袋にしまい、皮の手袋に手を通す。
「これは……。魔力が……。」
「それは魔力グローブ。魔力を通しやすい材質で作ってある。一応魔力をため込む性質もあるけど、ただそれだけのもの。」
「いや、それだけって……、これだけのものが失敗作って……。」
「あー、ユウの事だからね。深く考えない方がいいよ。」
エルザはそう言うと、双剣を抜く。
「じゃぁ、行きますっ!ユウ結界を解いて。」
「はーい、頑張ってね。」
ユウが魔力障壁を解除すると同時に、エルザがコボルトの群れの中に飛び込んでいく。
「あー、考えても仕方がねぇっ!」
遅れてカズトがエルザの後に続く。
「バニィ、クーちゃん、頑張って活躍するのよ。」
ミヤコが召喚石を投げると、そこから召喚獣が飛び出す。
「このレベルなら、加護も必要ない。終わったら起こして。」
ユウはそう言ってその場で横になる。
「ハイハイ、でも、そんなにゆっくりしてられないと思うよ。」
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