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引きこもり聖女のサバイバル その3

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ひしめくゴブリン達の群れ。
パッと見30匹ぐらいしかいなかったはずなのだが、先程から何匹も倒しているのにまったく数が減った様子はない。

おかしいのはそれだけではない。
ゴブリンたちは何も得物を持っていないのだ。
普通であれば、ゴブリンソードやゴブリンナイフといった、ゴブリンたちが使いやすいようにあつらえた独自の刃物やこん棒などをもって襲い掛かってくるのだが、ここにいるゴブリンたちはみんな素手で襲い掛かってくる。

「女ダァ!女がイルぞっ!」
そう叫びながら襲い掛かってくるゴブリンたちは、どうも見ても女性が目的みたいで、殺すことじゃなく捕らえる事だというのが一目瞭然だ。
ついでに言えばカズトはすでに排除され、それでも背後から盛んに攻撃をかけているが、その都度排除され役に立っていない。

召喚獣たちも戦ってはいるが、ゴブリンたちは召喚獣には目もくれずにミヤコやエルザたちを狙っている。
唯一の例外はクーちゃんで、少女の人型のせいか、ゴブリンたちが群れを成して襲い掛かっている。
クーちゃんの糸による防護壁と、アルやオーちゃんたちの奮闘で、取り敢えず凌いでいるが、このままでは押し切られるのは時間の問題だった。

「エルちゃん、ヤバイ、もう持たないよ。」
ミヤコは、目の前で迫り来るゴブリンたちを切裂いているエルザに声をかける。
「わかってるっ……ユウっ!」
「もう少し……。うん、ミヤコ召喚獣たちを。」
「了解っ!」
ミヤコはユウの言葉を聞くと同時に、召喚獣たちを精霊石に戻す。
召喚獣たちが消えたせいで、今まで押しとどめていた防御ラインが崩れ、ゴブリンたちが一斉に雪崩れ込んでくる。

『魔陣崩壊《ディストラクション》!』

ユウの魔力が部屋全体に広がる。
ゴブリンたちは動きを止め、次の瞬間には、光の粒子となって消えていった。

「……ふぅ、終わり?」
「うん、今のうちにこの部屋を調べよ。」
「それはいいけど……ちょっと休ませて。」
ミヤコはそう言って、その場に座り込む。
「俺が調べてくるから、お前たちは休んでな。
「戦闘で役立たずだったもんねぇ。」
「……その通りだけどっ、お前に言われるとなんかむかつく。」
「文句言ってる暇があったら、さっさと動くっ……あ、これ持っていきなよ。」
ミヤコがユウから渡されたものをカズトに渡す。
「なんだこれ?……ダウジングロッド?」
針金っぽいものをL字に曲げた2本の棒を見てカズトがそう呟く。
「さぁ?」
「さぁっ、て……ま、いっか。」
カズトはあきらめた顔で首を振ると針金を手に室内を歩き始めた。

「さて、そろそろ説明してもらえる?」
カズトの姿を横目で見ながらミヤコはエルザに話しかける。
何といっても、今朝になって突然「モンスターの部屋を調べる」と言い出して、碌な説明もなく連れてこられたのだ。
「う……ん……ユウ?」
少し困った顔でユウを見るエルザ。
「……長くなる。面倒。エルたん任せた。」
しかしユウは、説明を丸投げし、エルザの膝に頭をのせて寝たふりをする。
「もぅ。仕方がないなぁ。……少し長くなるけどいい?」
「うん、どうせ動けないし、調査はあのバカカズトに任せておけばいいから構わないよ。」
「そう、じゃぁ、何から説明すればいいかなぁ……。」
エルザは軽く天を見上げて何やら思案をする。

「そうだね、結論から言っちゃうと、ここは古代の遺跡なの。そしてマリア・シルヴィア様が関わっていることは間違いないのよ。」
「マリア・シルヴィアって……ユウちゃんの友達《愛人》の?」
「……なんかルビがおかしい気もするけど、そうよ。」
「なんでまた、そんなことが分かったの?」
「えっとね、まず、この周りの様子……というより地形かな?が、ユウと私が出会った遺跡と酷似してるのよ。」
「偶然の一致……ってわけでもないよね?」
「うん、まぁ、どう見ても森の中なのに、ところどころ人工物らしき壁が見える、更に計算しつくされた幾何学的な地形……って言うのが自然に出来てたり、今の文明で創れたりするのなら、その可能性もあるけど……。」
「ないわね。」
ミヤコはあっという間に自分の意見を翻す。
もとより、人工的に作られたというのはミヤコも思っていたことだった。

「それで、何故そのシルヴィアさんが関わってるってことに?」
「うん、ミヤコも今体験したでしょ?あのモンスターたち、カズトに目もくれずに私達だけを狙ってきたのを。」
「うん、それが?」
「これね、すご~~~~~~~~~~~~~っくばかばかしい話なんだけど……。」
「エルちゃんがそこまで言うってことは……。」
「……ユウが昔考えたシステムなんだって。」
「は?」
「だからね、ユウが考えた、迷宮のトラップの一つに「女の子のみをより分けて辱める」って言うのがあるんだって。」
「……なんでまたそんなことを。」
「……男を辱めても面白くない、って事らしいのよ。」
エルザが、この古代遺跡にユウが関わっているのではないか?と一つの推測をもってユウに問い詰めた結果、判明したことだった。

ユウが生きていた時代……超古代文明では、迷宮創造というのが流行っていた時期があったそうだ。
大事なものを保管するために、人がそう簡単には入れないような場所を作る、というのが、その始まりだったそうだが、次第に攻略難度がどれだけ高いか?と、技術を競うようになり、それはどんどんエスカレートしていったのだそうだ。
その時創られた迷宮のいくつかは、現在冒険者たちがこぞって攻略をしている迷宮だったりする。

そして、面白いことに目がないユウは、誰にも攻略出来ない、それでいて面白い迷宮を創りたいと考えていた。
ただ、王宮で軟禁状態にある身では、勝手なことは許されず、結局はアイディアだけにとどまったそうだ。

そのアイディアの一つに「女性限定攻略ダンジョン」というのがあった。
完全男性お断り、忍びこんだとしてもすぐに排除されるシステムになっていて、女性以外は入り口の時点で攻略不可となっている。
そして、迷宮に仕掛けられたトラップの数々は、その身を傷つけずに心を折るというえげつないものだった。

生身に傷一つ着けず、装備品だけを吸収分解するスライムがひしめいた「スライムプール」
四肢を拘束し、魔力が尽きるまで快楽を与え続ける「巨大マナイーターの森」
凌辱する事だけが目的のモンスタが召喚される「凌辱モンスターハウス」
等など……。
他にも、様々な仕掛けがあり、心折れずにそれらのすべてをクリアしても、辿り着いた先の最後の部屋には、壁面に受けてきた様々な恥辱の数々が映し出され、やってきた女性の心をズタズタに折りつつ、ユウが慰めるという、マッチポンプ待っている……。

「……女の子と仲良くなりたかった。」
ミヤコとエルザの無言の圧力に耐えきれず、寝たふりをしていたユウが諦めてそう答える。
「サイテーね。」
「だよね。」
「……シルヴィにも同じこと言われた。」
「「当たり前でしょ!」」
二人の声が重なり、ユウは身を竦め涙目になる。
「この話をしたのはシルヴィだけ。だからこの遺跡を作ったのはシルヴィ。」
ユウが涙目になりながらもそう告げると、ミヤコは納得したように頷く。
「成程、そういう事なのね。」
「うん、だからね、どこかに中枢部につながる道があるのよ。だけど、ここのようなモンスターがいる部屋以外にそれらしい場所がないから、きっとこれらの部屋のどこかに何かヒントがあるんじゃないかって。」
「中枢部に行けばこの遺跡の謎が解けるってことね。」
「それもあるけど、もっと単純に、中枢部には外部に通じる転移装置があるはずだってユウが言うのよ。古い遺跡だし、入口そのものが崩れている可能性もあるから、脱出するなら、そっちの方が早くて確実だって。」
「成程ねぇ。サバイバルっていうには快適な暮らしだけど、そろそろ外に出たいもんね。」

森を模しているエリアでは食べれる植物が群生しており、たまにビックボアなどの食するに適した動物も沸くので、食べるものには困らない。
水に関しても近くの泉の水源は澄んでいて綺麗で飲用に適している。それ以前にミヤコ自身魔法で水を生成できるし、エルザの持っているアイテムの中に、水が無限に湧き出る、というものがあるので、水に困ることはない。
寝る場所も、小さいとはいえそれなりに頑丈な家も出来たし、お風呂も備わっている。
はっきり言って、地球でのキャンプより快適だ、とミヤコは考えていた。

とはいっても、やはり閉鎖された空間での生活はそれなりにストレスがたまる。
特にカズトの暴発が心配だ。
最悪の場合、ミヤコが受け止めることで、エルザやユウに被害が及ばないようにしようと考えてはいたが、外に出れるのであれば、そんな心配もない。
カズトもそのあたりのことが分かっているのか、やけに協力的だ。

そんなことを考えているとカズトが戻ってくる。
どうやら部屋の隅々まで徘徊し終わったらしい。

「なぁ、これ何の反応も示さないんだが?」
カズトは戻ってくると、L字の針金っぽいものを見せながら言う。
「……当たり前。それはミヤコ専用のアイテム。」
「私専用?」
ミヤコは思わずユウに聞き返す。
「それをもってミヤコが歩く。魔法陣が隠されている場所に行くと、そのミミと尻尾がピコピコ動く……きっと可愛い。」
ユウの言葉に、エルザが呆れたように問いかける。
「あなた、まさか、ミヤコのその姿を見たいが為だけにそんなアイテム創ったんじゃないでしょうね?」
問われたユウは、ヒューヒューと、吹けもしない口笛を吹く真似をしながら視線を逸らす。
どうやら図星だったらしい。

「はぁ、まぁいいけどね。」
ミヤコは立ち上がると、カズトから針金を受け取り手に持ちながら歩きだす。

ピコピコ……
みょんみょん……

しばらくすると、ミヤコの尻尾が、耳が、反応を示す。
「可愛い。」
ユウがうっとりとミヤコを見つめる。
「どうでもいいけど、反応があったよ。これからどうするのよ?」
「そのままその場をぐるぐる回って。」
ユウはそう言いながら都を見つめ続ける。
結局その動作に意味はなく、ただ単にユウがミヤコを見ていたかっただけ、という事に気づいたのは、それから30分経ってからの事だった。
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