ヘタレ勇者の成り上がり~ボッチにハーレムは厳しいです~

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冒険者ギルドへようこそ???

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「冒険者かぁ、胸が高鳴るなぁ。」

ギルドへ向かう途中、俺はそんなふうにはしゃいでいたが、逆にミィナは憂鬱そうだった。

「……一応きいておくけど、御主人様、冒険者ってどんな人達かわかってる?」

わかってないだろ?という目で俺を見るミィナ。

「わかってるよ、アレだろ?依頼を受けて魔物を討伐したり、珍しいものをもって帰ったりするんだよな?」

「間違ってはいないけど……多分御主人様が考えてるのとは全く違うと思うわ。」

「どういう事だ?」

「えっと、なんて言えばいいのかな?御主人様が想像している冒険者って、ほんの一握りの成功した人たちで、他のその他大勢は、私が言うのも何だけど、最底辺の掃き溜めの住人よ?」

ミィナの話によれば、冒険者というのは、なんの技術も働くための根性も持っていない、食い詰めた者たちが、最後にたどり着く場所で、依頼も、溝浚いだとか、残飯清掃だとか、誰もやりたがらない、いわゆる汚い仕事が殆どだという。

一応、素材採集だとか魔物討伐などという仕事はあるが、数は少なく取り合いになるのと、結界の外に出るため、それなりに戦える人じゃないと無理なんだとか。

「だったら何故冒険者なんだ?他にも仕事はあるんだろ?」

「こんな田舎じゃ、よほどのコネがない限り仕事にありつけないのよ。冒険者登録するのはモノを売るためよ。」

ミィナが言うには、ミィナの持っているギフトに調合というものがあるらしく、これを使ってポーションなどを作って売ってお金にしようと考えているらしい。
ただ、モノを売るには、冒険者ギルドか商業ギルドへの登録が必要だとのこと。

「じゃぁ商業ギルドでも良かったんじゃないか?」

俺がそう言うと、ミィナは少し顔を赤らめて答える。

「だって……街を出ようって言ってくれたじゃない。だったら街ごとで登録が必要な商業ギルドより、どこでも通用する冒険者ギルドのほうが都合がいいでしょ?それに、調合するにしても、素材が必要だし、買うお金がないなら採ってくるしかない。だったら同時に依頼を受ければ、効率がいいでしょ?」

「街を出るのか?さっきバカって言われた気がするんだが………。」

「当たり前でしょ?大銅貨数枚しかないのに旅になんて出られるわけ無いじゃない。でもギルドの依頼を受けながら、力をつけつつ旅の支度金を貯めれば……そして御主人様が本気で連れ出してくれるなら……できなくはないわ。」

「じゃぁ、当面の目標は旅に出る資金を貯めることか?」

俺がそう言うと、ミィナは黙って首を振る。

「当面の目標は、日々の生活費を稼ぐことよ。」

俺は、なんとなく悲しくなって、黙ってミィナについて行くのだった。




カランカラーン……。

ドアを開けると、甲高い音が響く。

俺達が中へ入ると、併設された食堂兼酒場にたむろしていた男達の視線が突き刺さる。

………だがそれだけだった。

入ってきたのが、なんの特徴もない、ひょろっとした男と、就労者の女だとわかると、一同は興味をなくしたように、視線を戻し、先程までの会話や食事などに戻る。

「なぁ、こういうときのお約束で『あんちゃんみたいなのが冒険者だぁ?冒険者の流儀を教えてやるぜ』とか言って絡まれるもんじゃないのか?」

俺がこういうときのテンプレの例を上げると、ミィナは呆れたように答える。

「どこのお約束よ?大体、さっきも言ったように、冒険者の殆どは、仕事がなく、どうしようもなくなった人たちが、犯罪者やチンピラに成り下がるよりは、と、最後のワンチャンにかけた人たちなのよ?それなのにチンピラみたいなことをして自己否定するなんて、どこの性格破綻者よ?」

ミィナが言うには、お互い似たような境遇だとわかっているから、見た目に反して人がいい者達が多いという。

就労者に対しても、冒険者として働かされるものが多いため、差別意識はなく、街の人達より、余程付き合いやすいのだそうだ。

「取り敢えず登録しちゃいましょ。」

「あ、ちょ、ちょっと待って。」

俺は、立ち止まると大きく深呼吸を何度か繰り返して気分を落ち着かせる。

ファンタジーの定番、憧れの冒険者になるんだぜ?
安月給でこき使われていた社畜の俺が、冒険者だよ?緊張するなって方が無理だろ?

そんな俺を呆れたような………いや、完全に呆れた目で見るミィナ。

「ヨシ、行ってみよう!」

俺は気合を入れてカウンターへと向かう。


「いらっしゃいませ~。見ない顔ですね?ご依頼の発注ですか?」


受付のお姉さんがニッコリとほほえみながら言う。

「いえ、こちらと私の冒険者登録をお願いしたいのですが。」

ミィナも負けじと微笑み返す。

何だろう?ふたりとも微笑んでるのに、全然ほんわかとした空気じゃない。

むしろ殺伐としているような………。

やはり、ツンと突き出したあのお山の頂に、なにかあるんだろうか?

なだらかで、みんな大好き高尾山のようなほのぼのとしたお山と、富士山のような、他者の追随を許さない、神々しくも、孤高で気高いお山………。

どちらも同じお山で、それぞれにいいところがあるんだけどなぁ………。

「御主人様、何ぼーっとしてるんですか?」

「エヒャ、ナ、何……。」

いかん、お山についての考察をしていたら変な声が出てしまった。

「登録しますのでこちらに手をかざしてください。」

受付のお姉さんが言う。

「いいの?」

おもわず富士山に手を伸ばしかけると、くいッと、その手を引っ張られる。

「ご主人様?こっちですよ?」

ミィナが俺の腕を掴み、水晶を指し示す。

にこりと笑っているが、俺は知っている。かなりお怒りだ……その証拠に目が笑ってない。

「あ、ぁぁ。」

富士山に奪われそうになる視線を、必死に別方向に向けながら、俺は言われた通りに、差し出された水晶みたいなものに手をかざす。

水晶が、一瞬輝き、直ぐにどんよりとした影に覆われたかと思うと虹色の光を発して、何事もなかったかのように元通りになる。

「……珍しい反応ね。」

お姉さんはそれだけをボソリというと、ミィナの方に水晶を差し出す。

ミィナがそれに手をかざすと、淡い緑色の光が明滅して消える。

お姉さんが何も言わないところを見ると、これが普通の反応なのだろう。

その後お姉さんがなにかの道具を操作してから、白いカードを取り出して、俺たちにそれぞれ渡す。

ミィナにカードを渡す際に、

「買ってもらえたのね、良かったじゃない。」

「えぇ、お陰様で。」

「で、契約は変更したの?」

「し、してないですよ、あのままです!」

「ふーん、もの好きな男もいたもんね!」

………などという会話が小声でなされていて、最後には二人して俺を生暖かい目で見てきたのだが………。


「これがギルドカードで身分証明の代わりにもなるので無くさないでくださいね。後、こちらがギルドの規約になりますから、読んでおいてくださいね。」

お姉さんはそう言って冊子を手渡すと、次の業務へそそくさと移っていった。

どうやら手続きは、コレで終わりらしい。

「なぁ、ギルドとか冒険者とか依頼についてとかの説明があるんじゃないのか?」

俺は思わず聞いてみるが、ミィナが「それが全部これに書かれているのよ。」と、冊子を見せる。

「詳しいことは宿でゆっくりと見るとして、取り敢えず依頼を確認しましょ。」

ミィナはそう言うと、掲示板の方へ向かう。

掲示板には様々な依頼が書かれた羊皮紙が貼ってあり、受ける依頼を剥がして受付に持っていき手続きをするのだそうだ。

やけに詳しくて慣れているミィナに疑問を抱きつつ、俺は掲示板に貼ってある依頼を見てみる。

『汚水の溝浚い』
『牧場の家畜の糞の始末』
『ペットの後始末』
………
……


ミィナが言っていたようにろくな依頼がない。
汚そうな依頼なのに報酬も、銅貨3枚~5枚程度で、誰がこんな依頼を受けるんだ?と言いたくなるようなものばかりだ。

「さぁ、一旦戻りましょうか?」

一通り掲示板を見た後、ミィナがそう告げる。

色々聞きたいことがあったが、ミィナの様子を見ると、宿に戻ってからのほうがいいかと思い、ミィナとともにギルドを後にするのだった。



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