ヘタレ勇者の成り上がり~ボッチにハーレムは厳しいです~

Red

文字の大きさ
8 / 32

日々の生活……これはこれで幸せなのかもしれないが、えてして長くは続かないものだったりする。

しおりを挟む
「さて、と、少し時間も早いし、街にでも寄っていくか。」

俺はホーンラビットを収納にしまい込むと、街を目指すことにした。

ここから街へは、徒歩で2時間余り。

往復でそれなりに時間がかかるため、俺とミィナは、1週間に一度、街に行く日を決めて、その時にまとめて物を売ったり、必要なものを買ったりしている。

ミィナの調合したポーションも、その時に売っているのだが、効果が低いとはいえ、1週間分となるとそれなりの稼ぎにはなる。

現在の俺達の生活費の半分は、ミィナのポーションの売り上げだったりするのだ。

そして俺は、3日に一回ぐらいの割合で、こうして一人で街に来ている。

……いっとくけど、娼館に通うためじゃないぞ?
……いや、金があれば、そりゃぁ、行きたいんだけどさぁ。
だって、ミィナと毎晩引っ付いて寝てるのに、手が出せないんだぞ?
そりゃあ、溜まるもんも溜まってるっつうのっ!

……まぁ、金があっても、娼館に通えるかって聞かれると……。
…………転生前、金はそれなりにため込んでいたけど、風俗に一切行ったことがなく、エロゲにつぎ込んでいた俺の生活スタイルで察知してほしい。

……ヘタレで悪かったなっ!


はぁはぁはぁ……そんな事はどうでもいい。

俺が一人で街に行くのは、ミィナには聞かせられない情報を得る為だったりする。

情報ソースは、ミィナの事を知っているらしいギルドの受付嬢。



「いやぁー、今日も悪いわねぇ、カズトちゃん。」

目の前で、これでもか、というほど巨大なパフェを前にご機嫌な受付嬢。

「うぅ、悪いと思ってるなら、少しは手加減してくれよぉ。」

「いやだよ?」

きっぱりとそう告げる目の前の女性。

「……それで?このパフェに見合うだけの情報はあるんだろうな?」

受付嬢が食べているパフェは大銅貨1枚と銅貨3枚だ。

今日狩ったホーンラビット3匹分の買取額が、これだけで吹っ飛ぶ。

「そうねぇ、正直な話、『季節のフルーツタルト』をつけてくれてもおつりがくるくらいだと思うわよ?」

「ぐっ、……それは情報次第だな。」

季節のフルーツタルトは、銅貨8枚だ。

流石に手持ちはなく、生活費に手をつけなければならない。

生活費に手を付けたら、ミィナにバレる……と言うか、俺が一人で街に行くことは、ミィナは黙認していてくれているが、それも、生活費には手を付けていないからだったりする。

ここで手を付けた場合、ミィナを納得させることが出来るだけの理由がなければ……俺は破滅だよ。

「まぁまぁ、損はさせないわよ。」

そう言って話し出す受付嬢。

市場の相場の変動から、街の中での噂など、あたりさわりのないものから、ちょっとしたお得情報までを次々と教えてくれる。
こういうのは、街で暮らしていれば自然と耳に入るものなのだが、街を離れて暮らしていると、どうしても疎くなってしまう。

情報溢れた現代社会で暮らしていた俺にとって、情報の有無が如何に戦局を左右することになるかを知っている。
これは何も戦に限ったことではなく、例えば、ホーンラビットの肉が市場で過多になっていて、逆に、ラビ―鳥の肉が品薄だったとする。
この情報を知っていれば、ホーンラビットの狩りをやめて、ラビ―鳥を狩るのに専念するのだが、知らなければいつも通りホーンラビットを狩ることになるだろう。

その結果、一日の稼ぎに倍以上の差が出るとしたら?

知っていれば倍の稼ぎだったのに、と歯噛みすることもなくなるって事だ。

しかし……。

小麦が値上がりし始めている、など、それなりに有益な情報もあったが、これだけでは目の前のパフェ代にもなりはしない。季節のフルーツタルトに見合うだけの情報には程遠いのだが?

俺のそんな心情が顔に出ていたのか、受付嬢は、くすっと笑う。

「もぅ、カズトちゃんたらそんな顔しないでよ。何なら、この後、お姉さんとイイことする?」

「いいのかっ!」

イイコト、という言葉に思わず食いつく俺。

「クスッ、慌てないの。カズトちゃんって、私の好みなのよ……。じゃぁ、2階に行きましょうか?」

パフェを食べ終わった受付嬢は、妖艶な笑みを浮かべて上へと誘う。

この世界、酒場や食堂などの2階は、一定時間貸し切りに出来るシステムになっている。

要は「ご休憩」が出来る場所なのだ。

そこに誘うという事は……。

俺はゴクリ、と喉を鳴らす。

……いや、落ち着け、落ち着くんだ俺。

妄想に溢れそうになる頭の中を必死に空にしようとする、俺の中の天使ちゃん。

……いやいや、これはもう、アレしかないだろ?いざという時に慌てないようにシミュレーションをするんだ。

逆に妄想を拡大させようとする俺の中の悪魔君。

天使ちゃんと悪魔君の戦いに決着がつかないまま、俺はカフェの2階の部屋へと入る。


「あ、えっ。あ……。」

俺がどうしていいか分からずにいると、受付のお姉さんはくすっと笑って、ベッドに腰掛け、俺にもその横に座るように促す。

俺はふらふら―と誘われるように、その横に座ると、お姉さんが優しく俺の頭を自分に胸に埋めるようにして抱いてくる。

……くぅ……柔らかい。これが伝説のぱふぱふ?

おねえさんの大きくやわらかな双丘の谷間に顔を埋め、この世の天国を味わっていた俺の頭上から、お姉さんの声が降ってくる。

「そのままで聞いてね。ミィナちゃんを狙っている貴族が、大規模な森狩りを画策しているわ。名目は「街の安全のための魔物狩り」だけどね、狙いはミィナちゃんよ?」

俺はそれを聞いてばッと飛び退きかけたが、お姉さんがギュッと抱きしめ俺を抑える。

「慌てないの。ちゃんと最後まで聞きなさい。こうしていれば、他に聞かれることもないからね。」

受付のお姉さんの言葉に、ハッとする。

貴族の狙いが、ミィナなら、それを買った俺の事は当然調べがついているはずだし、見えないところで、俺が監視されていてもおかしくはない。

街に着くまで、もしくは町を出る時は気配探知を常時作動させているから、怪しい気配がないと言い切れるけど、街中では、他の気配に紛れて、気配探知も役に立たない。

街中限定で監視されているという事は十分あり得る話だった。

おねえさんはそこまで考えて、俺を誘う振りをして、こうして情報を伝えてくれているのだ。

「森狩りの部隊が出るのは早くて三日後、遅くても5日後には出発するわ。そこで見つかったら……わかるでしょ?」

俺は、お姉さんの胸の中で軽く頷く。

俺達は現在『移動中の冒険者』として扱われている。
一度街を出て、その後、どこの街にも入っていないからだ。

しかし、「移動中」の筈のものが、一定場所に留まっているとすれば?それは敵国のスパイ行為と取られても仕方がない……と言うか貴族はそれを理由に、ミィナをスパイとして仕立て上げ、犯罪奴隷として自分の好きにする気なのだ。

ミィナを狙っている貴族については、割と早くに、このおねえさんから事情を聴いている。

ミィナが売られることになった事件も、実は裏でこの貴族が糸を引いていた。

ミィナを就労者に堕とし、夜の奉仕をさせる条件で合法的に手に入れるつもりだったのだそうだ。

しかし、ミィナは夜の奉仕に頷かなかったために、貴族は手を回し、ミィナの評判を落とし買い手がつかないように画策した。

当然奴隷商……いや、ハローワーカーか……にも手を回していた。

そして、貴族の狙い通りに、ミィナは夜の奉仕も受けざるを得ない所まで追いつめられたのだが、あと少し、という所で俺が横からかっさらっていったという訳だ。

貴族としては当然面白くなく、どうにかして俺を亡き者にしようかと画策しようとしていた矢先、俺達は街を出てしまう。

あまりにもの素早い動きに、貴族は一旦諦めたのだが、最近になって、俺達が週1回街へ出入りしていることが、貴族の耳に入ってしまった。

それを知った貴族は、スパイという、少し強引な設定を作り上げ、俺達を狩りだすことにした……という訳だった。


「……帰る前にね『ピーノの鍛冶屋』に顔を出しなさい。合言葉は『ミスリルのナイフをくれ』よ?」

「……分かった。色々ありがとな。」

俺は顔を胸から引き……引き剥がして、受付のお姉さんに礼を言う。
と言うか、引き剥がすのに全身全霊を使った……。

「ん~服脱がないの?」

おねえさんは悪戯っぽく言いながら上着を脱ぐ。

その孤高なツンとした頂が、プルンっと、顔を出しそうになる。……見えそうで見えないその頂の先にあるもの……あっ、今ピンクの色の何かが……

「カズトちゃん、……いいのよ?」

おねえさんの声に、俺は、ハッと我に返る。

「えっ、あっ、その…………ゴメンっ!用事を思い出したっ!」

俺は脳内の悪魔君をねじ伏せて、脱兎のごとく部屋を飛び出していく。

下の会計で、季節のフルーツタルトを2個お土産に、お姉さんに渡すことを伝えると、急いでカフェを飛び出した。

フルーツタルト2個は、かなり痛い出費ではあるが、それだけのものは得れたと思う。

尚、2個なのは、口止め料を含んでいるからなのだが……分かってもらえるだろうか?

……って言うか、惜しい事をした。

あのままコトをすすめれば、今頃は……。

悪魔君の妄想劇場が脳内で始まろうとしていたが、それを打ち消す天使ちゃん。

……そうだ、それより今は。

俺は、悪魔君の誘惑を振り払うように、街外れにある「ピーノの鍛冶屋」を目指すのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...