幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

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第十三夜

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 大学が夏季休暇に入った最初の日の朝、恭介がいつもより遅く起きると、海斗はもうどこかへ出掛けたあとだった。

 どこに行ったのだろう、と少しだけ気になったが、恭介は海斗と相変わらずまだ少しギクシャクしている。

 その発端となった出来事を思い出しそうになって、恭介はまた考えるのをやめた。
 最近そんなことばかりだ。
 考えるのをやめたところで、結局いつの間にかそのことを考えてしまうのだが。

 顔も洗わず、Tシャツとハーフパンツという寝巻き姿のまま、ぼうっとテレビを観ながら遅い朝食を取る。

 焼いてジャムを塗っただけの食パンを頬張っていると、海斗が帰ってきた。
 コンビニにでも行っていたのだろうか。

「……おかえり」顔をテレビに向けたまま一応言うが、小声すぎて聞こえていないだろう。

「恭介、ちょっといい?」

 改まって声をかけられると、どきりとする。
 まさかこんなタイミングで告白じゃないよな、とあらぬ想像をしながら、パンを牛乳で流し込んでから海斗を見る。

 その後ろに、何かいる。

 海斗の背中からひょこっと顔を出したのは、小柄な少年だった。
 純日本人とは思えないほど、髪も肌も色素が薄い。目は零れそうなほど大きくて、くりくりしている。

 海斗によるとその少年は、サッカー部の後輩らしい。つまり、恭介とも同じ高校だったようだが、面識はなかった。
 身長が低く華奢なこともあって、高校1年生くらいにしか見えないが、もう3年とのことなので、恭介たちの1学年下だ。

 名前を相庭清彦あいば きよひこというらしい。

 なんでも来年、恭介たちと同じ大学を受験するらしく、都内と大学の下見がてら海斗を訪ねに来たそうだ。

「こいつ、今日から1週間うちに泊まりたいらしいから」

「え、急だな。俺初耳だけど」

 一緒に住んでいるのだから、事前にそれくらい教えてくれればいいのに。
 海斗を避けていたことも忘れて、恭介が思ったままを口にすると、海斗はムッとした顔で、その整った眉を寄せた。

「何度も話そうとしたけど、忙しいとか言って、お前が俺の話を全然聞こうとしなかったからだろ」

「う……」

──そうだった。

 恭介が居た堪れず目を逸らすと、「先輩ー?」男にしては随分と可愛らしい、間延びした声が聞こえた。清彦だ。

「今日はボクの勉強を見てくれるんですよねえ?」

 上目遣いで、甘えるように海斗の腰に手を回すから、恭介は驚かずにはいられない。
 なんの迷いも抵抗もないのであろう自然な動作だった。

 そして何よりたまげたのは、抱きつかれても、海斗が落ち着き払っていたことだ。

「アイ、暑いからくっつくなよ」

 なんとなく嫌そうな顔をしてはいるが、無理矢理引き剥がそうとはしない。おまけにその発言は、暑くなかったらいいとも聞こえる。

──それに、なんだよそのあだ名は。清彦じゃないのかよ。

 無意識に右足が揺れる。
 しかし恭介には、自分が貧乏揺すりをしている自覚も、ましてや苛立っているという自覚もなかった。

「先輩の部屋はどこですか?」

「あ、悪いけど、あんま掃除してないんだよね」

「ボク全然気にしませんよ」

 美男子2人のそんなやりとりを見つめながら、恭介は自分がまだ顔も洗っていない寝巻き姿だったことを今更思い出して、急に恥ずかしくなる。

「こっち」海斗が自分の部屋に清彦を案内するため廊下を戻っていく。

「はーい」

 そう明るく返事をして、でも、清彦はくるっと振り返って恭介を見てきた。

 振り向いた瞬間、ずっと上がりっぱなしだった口角が、すっと下がった。

 上から下、下から上へ、恭介を値踏みするように視線だけを動かすと、フッと嘲笑うかのように片方の口角を上げた。

「……1週間、お世話になります」

 ドスの効いた低い声に、凍てつくような鋭い視線。まるで先ほどまでの彼とは別人だ。

 突然の出来事に呆気に取られていると、清彦は恭介の返事を待つことなく「先輩ーっ」と、海斗の元へ駆けて行った。
 今度はまるで、天使のような軽い声色だった。
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