×××する場所がない!

西 美月

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第一章

大河の部屋①

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 大河がまず最初に提案してきた場所は、大河の自宅だった。

 何度か訪れたことのある直央は、それを聞いてほっと胸を撫で下ろした。

 男ばかりの5人兄弟の長男である大河は、弟が4人いる。特に五男とは歳が離れていて、彼はまだ幼稚園児だ。

 約束の日曜日、和風な造りの大河の家のインターホンを鳴らすと、

「ナオ!いらっしゃあいっ!」

 玄関先で飛びつくようにして抱きついてきたのが、その末っ子の大地だ。
 直央は毎度毎度、この熱烈な歓迎を受けている。

 いつも終始直央にぴったりで、大河の部屋にもくっついてくるから、この家で大河と2人きりになれる時間はほんのわずかなのだ。

 抱き上げた大地の頭をわしゃわしゃと撫でていると、奥から軽やかな足音が近づいてきた。専業主婦の大地の母親だ。すらりとした長身の女性で、悲しくも直央は見上げるかたちとなる。

 大河たちの母親がずっと家にいることも、この家で最後までできない要因の一つだ。

「直央くんいらっしゃい。大河なら部屋にいるから上がっちゃって」

「ありがとうございます」

「じゃあ大地、そろそろ行くわよ」

 予想していなかった言葉が続き、直央はわずかに目を見開いて、腕の中の大地を覗き込む。

「どっか行くん?」

「そう、ごめんやで直央。今日は友達の誕生日会があるんやでねん」

 直央の喋りを真似て大地がやれやれと両手のひらを上に持ち上げる。
 下手くそな関西弁が可愛らしい。
 そんな仕草どこで覚えてくるんやろ。と普段なら微笑ましく思うところだが今はそれどころではない。

「まったくアンタって子は……。直央くんは大河のお客さんなんだから。ほら、もう行くわよ」

 呆気にとられたまま、出かける親子を見送って、直央は自分の心拍数がどんどん上がっていくのが分かった。

 ドキドキという心音が今にも聞こえてきそうなほど、家の中が静かだ。

──もしかして、他に誰もおらんのと違う?

 2階へと続く階段を上り、ゴクリと唾を飲む。

 いちばん手前のドアをノックしようとして、中の人物によって先に扉が開けられた。

 とてもじゃないが顔なんて見れなくて、自分の足を見つめながらそろそろと中に入る。

 背中でドアが閉まってすぐ、抱きしめられる。

「待ってた」

 耳元で囁くその低い声が好きだ。
 胸板に頬を擦り付けて鼻腔いっぱいにシトラスの香りを嗅ぐ。直央が好きな大河の匂い。

 わずかに体を離して、至近距離で見つめ合う。

 大河の厚い唇が近づいてきて、それをつま先立ちで受け止めながら、直央はこの先の展開を想像して背筋がぞくりとした。

 こんなにも急にその時が来るとは思っていなかった。心も身体もなんの準備もできていない。

「ちょ、ちょお待って……」

 唇が離れた一瞬の隙に抗議の声を上げたが、すぐ再開された深いキスにいともたやすく掻き消されてしまう。

 直央の唇を強引に割って入ってきた舌が、歯列をなぞり、口内を隅から隅まで貪るように蹂躙する。

 直央の頰がどんどん朱色に染められていく。

 おずおずと大河の背中に手を回すと、それを合図に身体が浮いて、キスをしながらベッドに運ばれた。

 そっと寝かされ、熱い視線が絡み合って蕩ける。直央はたまらず大河から顔を逸らす。

「ほんまにするん?」

「ああ」

 ちゅっ、とこめかみに降ってきたキスは軽くて優しい。視線を戻すと、愛おしそうにこちらを見下ろす大河がいる。

 誰もいない家、大河の部屋のベッドの上。この状況には直央が拒む理由が何ひとつない。

 大河と交際をはじめてから、手を繋ぐのも、直央の心臓が持たないという理由で1ヶ月待ってもらった。

 キスをするのも、さらに1ヶ月大河を待たせた。

 すぐに暴走するし、無愛想な大河だけれど、その心根の優しさを誰よりも知っているのは直央だ。

 直央だって、そういうことに興味がないわけじゃない。性行為をしたくないわけじゃないし、するならもちろん大河とがいいと思っている。

 直央は深呼吸をひとつして覚悟を決めた。
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