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第一章
多目的ホール②
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こういう場合、話をするのはいつも直央だ。早速思いついた話題をあげる。
「あんな、一昨日めっちゃおもろいテレビやっとってな」
本当は昨日話したかったけれど。
面白いことは大河に話したくなるし、美味しいものを食べれば大河にも食べさせたくなる。
いつもいつも直央の中心は大河で、四六時中大河のことを考えている。
つまりそのくらい好きなのだが、恥じらいが邪魔をして「好き」という言葉はなかなか言葉にできない。
──こんなふうに、どうでもいい話ならなんぼでもできるんやけどなあ。
直央は抑揚をつけて見聞きしたことを面白おかしく話す。最後にはドーンとオチを持ってくる。
すると、大河がくすりと笑ってくれたから、飛び上がるくらい嬉しい。
気分が良くなって、もっと饒舌になる。
そういえばこんなこともあった、と別の話題がぽんぽん出てくる。
照れていたことはすっかり忘れて話に夢中になっていると、大河の目線が一瞬直央から外れて横を向いた。
直央も視線で追えば、案の定そこには壁掛け時計がある。
「……もう時間やんな」
今週は土日とも大河は部活の予定だから、次に会えるのは月曜日だ。
そのせいか、随分と沈んだ声になってしまった。
机の上のペットボトルは、まだお茶が半分以上残っている。
「ああ、でもあと少しくらい平気だ」
離れがたい。
たぶんそれは大河も同じなのだろう。
どこか、2人きりになれる場所があればいいのに。
──あ。
思い出したことがあって、言うか言わないか迷って膝の上で握った拳2つに力を入れる。
「どうした」
「ん、いや、その……何でもないわっ」
──やっぱ言うのやめとこ。
そう決断を下してすぐ、「有明先輩!」と直央は背後から名前を呼ばれる。
振り向くと、ひとりの男子生徒がいる。
今まさに大河に話すのはやめておこうと決めた内容に関係する人物が、目の前にいる。
慌てて立ち上がって自分の身体で大河の視界を遮るが、小さな直央ではおそらく全く意味がない。
「誰だ?」
なぜか不機嫌そうに大河が聞いてくる。
「いや、こいつは山本いうて、その、1年で」
「お前は……後輩も手懐けているのか」
背後で大河が小さな声でぶつぶつと何か漏らしているが、直央の意識は山本に向いていた。
なぜなら、今この場で例の話をされるのはまずい。
「山本悪い、今はちょっと堪忍……」
しかし無情にも山本は「すぐ済みますから。はいどうぞっ」と満面の笑みで紙袋を差し出してきた。
仕方なく受け取ると、それはずっしりと重い。
「先輩リクエストのエロ系の漫画ですよ。おすすめ適当に詰めときましたんで」
10冊以上は入っていそうな紙袋を、直央は受け取ってきゅっと胸元で抱きしめる。
「ありがとぉな……」
無理やり笑顔を作って、今にも消えそうなか細い声で礼を言う。
「じゃあ、また対戦もしましょうね」
颯爽と去っていく山本の後ろ姿を、片手を上げて無言で見送る。大河の痛い視線を感じつつも、そっと着席する。
「あいつゲーム仲間でな、オンラインで何回か対戦しとって」
直央が好きなマイナーゲームのキャラクターのキーホルダーを山本が鞄に付けていたから、思わず声をかけたのが始まりだ。
そんな調子で他にも、直央には学年の垣根を超えた友人がいる。
座り直して、じっとしていられずとりあえずお茶を一口流し込む。
「で?エロ漫画を借りたって?欲求不満か」
「ごふっ……あほかっ」
危うくお茶を吹き出すところだった。
直央は男女の恋愛に興味はない。が、これがあながち間違いではない。
「小説と同じで漫画も活字だから、読むのは苦手だと以前言っていただろ」
「それは、そうやけど、あの」
「何だ」
「だから……その」
大河とセックスをする場所の参考になればと思って、借りたのだ。
山本は漫研に所属している。理由は勿論伏せて、何冊か貸して欲しいと頼んだらすぐに用意してくれたのだ。
問い詰められた後に白状すると、大河は驚きながらも嬉しそうで、「ここまで部活に行きたく無いと思ったのは初めてだ」とキャプテンにあるまじき呟きを零したのだった。
「あんな、一昨日めっちゃおもろいテレビやっとってな」
本当は昨日話したかったけれど。
面白いことは大河に話したくなるし、美味しいものを食べれば大河にも食べさせたくなる。
いつもいつも直央の中心は大河で、四六時中大河のことを考えている。
つまりそのくらい好きなのだが、恥じらいが邪魔をして「好き」という言葉はなかなか言葉にできない。
──こんなふうに、どうでもいい話ならなんぼでもできるんやけどなあ。
直央は抑揚をつけて見聞きしたことを面白おかしく話す。最後にはドーンとオチを持ってくる。
すると、大河がくすりと笑ってくれたから、飛び上がるくらい嬉しい。
気分が良くなって、もっと饒舌になる。
そういえばこんなこともあった、と別の話題がぽんぽん出てくる。
照れていたことはすっかり忘れて話に夢中になっていると、大河の目線が一瞬直央から外れて横を向いた。
直央も視線で追えば、案の定そこには壁掛け時計がある。
「……もう時間やんな」
今週は土日とも大河は部活の予定だから、次に会えるのは月曜日だ。
そのせいか、随分と沈んだ声になってしまった。
机の上のペットボトルは、まだお茶が半分以上残っている。
「ああ、でもあと少しくらい平気だ」
離れがたい。
たぶんそれは大河も同じなのだろう。
どこか、2人きりになれる場所があればいいのに。
──あ。
思い出したことがあって、言うか言わないか迷って膝の上で握った拳2つに力を入れる。
「どうした」
「ん、いや、その……何でもないわっ」
──やっぱ言うのやめとこ。
そう決断を下してすぐ、「有明先輩!」と直央は背後から名前を呼ばれる。
振り向くと、ひとりの男子生徒がいる。
今まさに大河に話すのはやめておこうと決めた内容に関係する人物が、目の前にいる。
慌てて立ち上がって自分の身体で大河の視界を遮るが、小さな直央ではおそらく全く意味がない。
「誰だ?」
なぜか不機嫌そうに大河が聞いてくる。
「いや、こいつは山本いうて、その、1年で」
「お前は……後輩も手懐けているのか」
背後で大河が小さな声でぶつぶつと何か漏らしているが、直央の意識は山本に向いていた。
なぜなら、今この場で例の話をされるのはまずい。
「山本悪い、今はちょっと堪忍……」
しかし無情にも山本は「すぐ済みますから。はいどうぞっ」と満面の笑みで紙袋を差し出してきた。
仕方なく受け取ると、それはずっしりと重い。
「先輩リクエストのエロ系の漫画ですよ。おすすめ適当に詰めときましたんで」
10冊以上は入っていそうな紙袋を、直央は受け取ってきゅっと胸元で抱きしめる。
「ありがとぉな……」
無理やり笑顔を作って、今にも消えそうなか細い声で礼を言う。
「じゃあ、また対戦もしましょうね」
颯爽と去っていく山本の後ろ姿を、片手を上げて無言で見送る。大河の痛い視線を感じつつも、そっと着席する。
「あいつゲーム仲間でな、オンラインで何回か対戦しとって」
直央が好きなマイナーゲームのキャラクターのキーホルダーを山本が鞄に付けていたから、思わず声をかけたのが始まりだ。
そんな調子で他にも、直央には学年の垣根を超えた友人がいる。
座り直して、じっとしていられずとりあえずお茶を一口流し込む。
「で?エロ漫画を借りたって?欲求不満か」
「ごふっ……あほかっ」
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直央は男女の恋愛に興味はない。が、これがあながち間違いではない。
「小説と同じで漫画も活字だから、読むのは苦手だと以前言っていただろ」
「それは、そうやけど、あの」
「何だ」
「だから……その」
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