3 / 5
とある導士の記憶
しおりを挟む
「何が神様だ!俺は絶対に、そんな地味で面倒なモンにはなんないからなっ!」
そう叫び、大きな荷物を纏めて神殿から青年が飛び出してきた。
頬に鳥のような刺青があるその青年は、まるで魔導士が好んで着そうな黒いローブに身を包み、憎い敵でも見るように出てきた神殿を睨みつけた。
その入り口には険しい顔をした黒髪の男が腕を組み仁王立ちをしている。
「今すぐお戻りください、でなければ力ずくでも戻っていただきますよ?」
「へぇ?やって見れば?兄上が何を言ったのか知らないけど…俺はもうこの神殿に戻るつもりは無い、俺は世界を守るヒーローになるんだ!」
そう青年が宣言をすると同時に、男の方から”ブチっ””と何かが切れる音が聞こえた。
だが、青年には聞こえていないようでさらに続ける。
「俺は自由に世界を廻って、困っている人間たちを助けて回るんだ。ふふん、どうだ?かっこいいだろう?と、言う事だから。じゃーな、俺の育った愛しの神殿。(よっしゃー、かっこよく決まったぜ!)」
キメ顔のまま、青年は男に背を向け意気揚々と立ち去ろうとしたその時、ガッシリと強く肩をつかまれ後ろへと引き戻された。勿論、掴んでいるのはあの黒髪の男だ。
心なしか、背後から冷気のようなものが流れているのは気のせいだろうか?いや、気のせいではない。
「な~に~が~、”俺の愛しの神殿”だゴルァ…!わがままもいい加減にしろよ、ルナ‼ガキみたいな事を言ってトワ様を困らせるのはやめろ、困っている人間を助ける前に、自分の兄の悩みの種を失くしたらどうだ?あぁん?」
「あだだだだだだっ!痛い痛い痛い‼えっ⁉なにコレ⁉めっちゃ痛いんだけど!骨折、骨折するからコレ!ボキってイクやつだから‼」
「ほぉ?それは大変だ、ならば別の場所を掴まねばなぁ?」
掴まれていた場所は、肩からその上の頭へと移り、青年に見事なアイアンクローをかます男。
「いや、もう掴まなくていい…って!うぎゃあぁぁぁぁぁぁーっ!頭がわれるぅぅぅぅっ‼」
「さぁ、こんな痛い思いをしたくないのであれば、バカな夢を追い求めてないでさっさと神殿に戻りますよ!」
「ふざけんな、このっ、朴念仁め‼離せよコノヤロウ‼」
「あ゛?」
「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁーっ‼」
朴念仁と言われ、それにムカついた男はさらにルナの頭を掴む握力を強めた。
ミシミシと頭が軋む音が聞こえ、このままでは頭が割れるのではないかと思ったルナは顔を青くした。
いくら神ではあれど、体が傷つけば痛いのだ。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい‼もうしません、言いませんから‼だから離して!許してください‼」
「……ちっ、また今度言いやがりましたら頭潰しますからね?」
「物騒‼なにこの人、本当に神に仕える神職者か⁉」
漸く解放された(というか投げられた)ルナは、痛む頭を押さえながら男を見た。
「さぁ、もう懲りたでしょうルナ様。帰りますよ」
「分かったよ……、なぁ~んて言うわけないだろう?バァカ‼」
「なっ⁉」
男がルナの反省した表情に納得し背を向けた一瞬の隙を狙い、ルナは持っていた杖を振るって、下界へと移動できる魔法を発動させた。
「俺は俺の夢を叶えるんだ!誰にもその邪魔はさせない、俺は自由に生きるんだっ‼」
「ふざけた事を…、待てっ‼」
「ふんっ‼待てと言われて待つバカがいるかよ‼」
男がルナを捕まえようと腕を伸ばしたが、ルナが消える方が早く、その手は空しく空を切っただけだった。
「くっそぉぉぉーっ‼あのクソガキ‼」
ルナを取り逃がしたことを悔しがる男、あまりにも悔しすぎて地面を勢いよく踏むと、地面に亀裂が入り綺麗に舗装された道が割れた。
そんな彼の側に、優美な服を着た美しい青年が現れにこりと微笑んだ。
「おやおや、どうしたのですかそんなに荒れて。またルナにやられましたか?」
「トワ様…、えぇそうです。私が油断したばかりにルナ様を”また”取り逃がしました。」
うなだれる男に、トワが笑って頷く。
「えぇ、君の悔しがる声が聞こえていましたから大体の察しはついていましたよ。」
「お恥ずかしい限りです」
「ふふふ、そんなに気に病むことはありませんよ。あの子もよい年頃です、自立をするために様々なものを見聞きし、体験することが成長するためには必要です。ですから、いつまでもこの神殿に縛り付けてばかりいてはルナの成長を妨げてしまいます。」
少し寂しいですが仕方ありません、と、トワが言うと、男は諦めたように短く嘆息した。
「分かりました…、貴方様がそうおっしゃるのであれば私は何も言いますまい。」
「ありがとう、でも…もし、僕に何かあれば…その時は…」
「トワ様‼それ以上はお止め下さい」
顔を顰めこれ以上聞きたくないとでもいう様に言葉を遮る男、そんな男にトワは優しく彼の震える手を包み込んだ。
「僕は弱いから、いつか君やゼウス、そしてルナを頼らなければならない時が来るだろう。今だって君とゼウスに頼っている部分が多い、年々自分の神力が弱まっている事も実感しているさ。この神力が尽き眠りについた時、僕が目覚めるまでにこの世界を管理してもらわなければならないから、だからその時は…よろしく頼むよレクター。」
そう悲しげにトワが微笑むと同時に、男、レクターは目を覚ました。
「夢を見ていたのか…」
随分と昔の夢を見ていたものだ、と思いながらレクターは身を起こした。側では自分と同じような異国風の導士服を着た子供がすやすやと寝息を立てている。
時より辺りが揺れるのは、ここが船の中である事を証明している。
室内にある時計を見れば、分針が目的の港へ到着する時刻の30分前を指していた。
「そろそろ降りる準備をしなければいけませんね、マオ、起きなさい。」
「ん~…」
起きる様子のないことが分かり、しばらく寝せておくことにした。もし起きなくても、自分が抱えて船を降りればいい事だ。
「全く、今頃どこで何をしているのやら。見つけ出しだらただじゃおきませんからね‼」
眉間に皺を寄せ、すっかり癖になってしまった溜息を吐き、レクターは下船の支度を始めたのだった。
そう叫び、大きな荷物を纏めて神殿から青年が飛び出してきた。
頬に鳥のような刺青があるその青年は、まるで魔導士が好んで着そうな黒いローブに身を包み、憎い敵でも見るように出てきた神殿を睨みつけた。
その入り口には険しい顔をした黒髪の男が腕を組み仁王立ちをしている。
「今すぐお戻りください、でなければ力ずくでも戻っていただきますよ?」
「へぇ?やって見れば?兄上が何を言ったのか知らないけど…俺はもうこの神殿に戻るつもりは無い、俺は世界を守るヒーローになるんだ!」
そう青年が宣言をすると同時に、男の方から”ブチっ””と何かが切れる音が聞こえた。
だが、青年には聞こえていないようでさらに続ける。
「俺は自由に世界を廻って、困っている人間たちを助けて回るんだ。ふふん、どうだ?かっこいいだろう?と、言う事だから。じゃーな、俺の育った愛しの神殿。(よっしゃー、かっこよく決まったぜ!)」
キメ顔のまま、青年は男に背を向け意気揚々と立ち去ろうとしたその時、ガッシリと強く肩をつかまれ後ろへと引き戻された。勿論、掴んでいるのはあの黒髪の男だ。
心なしか、背後から冷気のようなものが流れているのは気のせいだろうか?いや、気のせいではない。
「な~に~が~、”俺の愛しの神殿”だゴルァ…!わがままもいい加減にしろよ、ルナ‼ガキみたいな事を言ってトワ様を困らせるのはやめろ、困っている人間を助ける前に、自分の兄の悩みの種を失くしたらどうだ?あぁん?」
「あだだだだだだっ!痛い痛い痛い‼えっ⁉なにコレ⁉めっちゃ痛いんだけど!骨折、骨折するからコレ!ボキってイクやつだから‼」
「ほぉ?それは大変だ、ならば別の場所を掴まねばなぁ?」
掴まれていた場所は、肩からその上の頭へと移り、青年に見事なアイアンクローをかます男。
「いや、もう掴まなくていい…って!うぎゃあぁぁぁぁぁぁーっ!頭がわれるぅぅぅぅっ‼」
「さぁ、こんな痛い思いをしたくないのであれば、バカな夢を追い求めてないでさっさと神殿に戻りますよ!」
「ふざけんな、このっ、朴念仁め‼離せよコノヤロウ‼」
「あ゛?」
「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁーっ‼」
朴念仁と言われ、それにムカついた男はさらにルナの頭を掴む握力を強めた。
ミシミシと頭が軋む音が聞こえ、このままでは頭が割れるのではないかと思ったルナは顔を青くした。
いくら神ではあれど、体が傷つけば痛いのだ。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい‼もうしません、言いませんから‼だから離して!許してください‼」
「……ちっ、また今度言いやがりましたら頭潰しますからね?」
「物騒‼なにこの人、本当に神に仕える神職者か⁉」
漸く解放された(というか投げられた)ルナは、痛む頭を押さえながら男を見た。
「さぁ、もう懲りたでしょうルナ様。帰りますよ」
「分かったよ……、なぁ~んて言うわけないだろう?バァカ‼」
「なっ⁉」
男がルナの反省した表情に納得し背を向けた一瞬の隙を狙い、ルナは持っていた杖を振るって、下界へと移動できる魔法を発動させた。
「俺は俺の夢を叶えるんだ!誰にもその邪魔はさせない、俺は自由に生きるんだっ‼」
「ふざけた事を…、待てっ‼」
「ふんっ‼待てと言われて待つバカがいるかよ‼」
男がルナを捕まえようと腕を伸ばしたが、ルナが消える方が早く、その手は空しく空を切っただけだった。
「くっそぉぉぉーっ‼あのクソガキ‼」
ルナを取り逃がしたことを悔しがる男、あまりにも悔しすぎて地面を勢いよく踏むと、地面に亀裂が入り綺麗に舗装された道が割れた。
そんな彼の側に、優美な服を着た美しい青年が現れにこりと微笑んだ。
「おやおや、どうしたのですかそんなに荒れて。またルナにやられましたか?」
「トワ様…、えぇそうです。私が油断したばかりにルナ様を”また”取り逃がしました。」
うなだれる男に、トワが笑って頷く。
「えぇ、君の悔しがる声が聞こえていましたから大体の察しはついていましたよ。」
「お恥ずかしい限りです」
「ふふふ、そんなに気に病むことはありませんよ。あの子もよい年頃です、自立をするために様々なものを見聞きし、体験することが成長するためには必要です。ですから、いつまでもこの神殿に縛り付けてばかりいてはルナの成長を妨げてしまいます。」
少し寂しいですが仕方ありません、と、トワが言うと、男は諦めたように短く嘆息した。
「分かりました…、貴方様がそうおっしゃるのであれば私は何も言いますまい。」
「ありがとう、でも…もし、僕に何かあれば…その時は…」
「トワ様‼それ以上はお止め下さい」
顔を顰めこれ以上聞きたくないとでもいう様に言葉を遮る男、そんな男にトワは優しく彼の震える手を包み込んだ。
「僕は弱いから、いつか君やゼウス、そしてルナを頼らなければならない時が来るだろう。今だって君とゼウスに頼っている部分が多い、年々自分の神力が弱まっている事も実感しているさ。この神力が尽き眠りについた時、僕が目覚めるまでにこの世界を管理してもらわなければならないから、だからその時は…よろしく頼むよレクター。」
そう悲しげにトワが微笑むと同時に、男、レクターは目を覚ました。
「夢を見ていたのか…」
随分と昔の夢を見ていたものだ、と思いながらレクターは身を起こした。側では自分と同じような異国風の導士服を着た子供がすやすやと寝息を立てている。
時より辺りが揺れるのは、ここが船の中である事を証明している。
室内にある時計を見れば、分針が目的の港へ到着する時刻の30分前を指していた。
「そろそろ降りる準備をしなければいけませんね、マオ、起きなさい。」
「ん~…」
起きる様子のないことが分かり、しばらく寝せておくことにした。もし起きなくても、自分が抱えて船を降りればいい事だ。
「全く、今頃どこで何をしているのやら。見つけ出しだらただじゃおきませんからね‼」
眉間に皺を寄せ、すっかり癖になってしまった溜息を吐き、レクターは下船の支度を始めたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる