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紅葉屋の大旦那コウ
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「おい…狐よ、嘘は駄目だぜぇ、嘘は。いくら何でもそんな…紅葉屋の大旦那は言い過ぎだ。」
紅葉屋の大旦那コウは、齢500年を超える神狐と言われており、トワ神に作られた神獣の眷属であるとは言われているが、本当のところは解らない。
だが、一つ言えることは、その容姿が美麗であることだ。
大陸で最も美しい女性と言われる、この帝国の第一王女ステラも認めるほどの美貌の持ち主で、流し目など向けられるものならば、老若男女問わずに溜息を吐きながら見惚れるのだという。
ライ自身も、遠目ではあるが件の大旦那を見かけたことがある。
たしか現帝王の生誕を祝う宴の時だったか、ライの一座が王宮で余興としてショーを披露する機会があった。
帝王や王族はもちろんの事、招かれた貴族や隣国、配下国の客が観客だったのだが、その中に白銀の美しい髪を簪で緩く巻いた狐耳の見目麗しい男が、古の高位の魔術師が好んで着たという服を纏ってライの曲芸を見ていたのを記憶している。
でも、どう見ても目の前の狐は似ても似つかぬ姿だし、いや、大きさからして比べるにはあまりにも違いすぎる。
「いや、どー見ても似てねぇし面影も…なぁ?狐っつー共通点しかねぇだろぃ。」
困惑するライに対し、自らをコウと名乗る狐はのほほんと返す。
「ふふふっ…まぁ、この姿ですからねぇ、怪しむのも無理はありませんよ~。今の姿で私が分かるのは、かなり高位の魔力保持者のみですから。」
そう言って、狐はその短い後ろ足で立ち上がり、「よいしょ」と言って飛び上がった。
「うぉ!?なんでぃ!?」
ボフンッ!と狐を中心に煙が出て、数秒程ライの視界を遮った。
再びライが目を開けた時、目の前にいたのはあの狐ではなく、妖艶に微笑む麗人の青年、紅葉屋の大旦那コウだった。
「嘘だろぃ、まさか本当に大旦那様だったとは…。」
「どうですか?ライ殿、これで信用していただけましたか?」
「あ、あぁ…。でもよぉ、なんでまたあんな姿でいたんでぃ?ここはおめぇさんの宿だろうに」
「えぇ、まぁ、あの姿は日向ぼっこ用で、私だとバレずに仕事をさぼれるんですよぅ。まぁ…家族以外の従業員のみにですが…。それに、あの姿が結構楽であったりするんですよ。」
「ほぉ~?で、話は変わるが、おめぇさんのその服、陽の国のモンじゃねぇかい?しかもその模様と着こなし、ずいぶんと古い…、神代のモンだ。」
ライの言う陽の国という国は、この帝国の隣にある異国で、帝国より小国でありながら、独特の文化と魔術を使い、その魔術師は”導師”とその国では呼ばれている。
その異国、陽の国はこの帝国よりも古い時代、トワ神がまだ健在していた時代から存在していたと言うが、この大旦那はその時代から生きているのだろう。
神狐なのだから当たり前ではあるが…、それにしてもこの時代になってまで神代の服装をしているのは不思議だ。
「よくご存じですね、えぇ、これは神代のものです。私は昔、陽の国に住んでいまして、特にこの時代の服がとても気に入っているんですよ、だから、従業員の服も神代をベースに今風にアレンジして使っているんです。」
「あぁ、どうりで見たことがあると思っていたが…そうか、陽の国の…。」
「私にとって、陽の国は特別なんです!!もちろん、リヴェルディア帝国も大好きですが!!」
「お、おぅ…。」
「それにしても、ライ殿は陽の国にお詳しいのですね、もしかしてライ殿も陽の国出身なのですか?」
コウの質問に、ライは一瞬だけ目を悲しげに伏せて、微笑んだ。
「まぁ…そんな時期もあったような気がするねぇぃ…、俺は芸人なもんで長年色んな国を巡ってっから、昔の事はあんまり覚えてねぇんだ。すまねぇな紅葉屋の大旦那。」
「いえいえ、こちらも少し不躾な質問をしてしまったようですね、大変失礼いたしました。」
ライの様子に、コウも何かを察して深く聞くことを避けた。
誰だって、聞かれたくないことの一つや二つあるものだから。
そうしてしばらく、玄関で他愛もない世間話をしていると、玄関の扉が開き、漸く我が家にアースが帰ってきた。
「お、やっと帰ってきたかアース!!」
「あ゛!?」
疲れ果て、憔悴した様子のアースはライを見た瞬間、ライの鳩尾に向かって拳を叩きつけた。
「ぐぇぇっ!?」
「てめぇ!!何、人ん家に勝手に不法侵入しとんのじゃ!!ボケぇっ!!」
「久々の再開なのに酷ぇっ!!」
紅葉屋の大旦那コウは、齢500年を超える神狐と言われており、トワ神に作られた神獣の眷属であるとは言われているが、本当のところは解らない。
だが、一つ言えることは、その容姿が美麗であることだ。
大陸で最も美しい女性と言われる、この帝国の第一王女ステラも認めるほどの美貌の持ち主で、流し目など向けられるものならば、老若男女問わずに溜息を吐きながら見惚れるのだという。
ライ自身も、遠目ではあるが件の大旦那を見かけたことがある。
たしか現帝王の生誕を祝う宴の時だったか、ライの一座が王宮で余興としてショーを披露する機会があった。
帝王や王族はもちろんの事、招かれた貴族や隣国、配下国の客が観客だったのだが、その中に白銀の美しい髪を簪で緩く巻いた狐耳の見目麗しい男が、古の高位の魔術師が好んで着たという服を纏ってライの曲芸を見ていたのを記憶している。
でも、どう見ても目の前の狐は似ても似つかぬ姿だし、いや、大きさからして比べるにはあまりにも違いすぎる。
「いや、どー見ても似てねぇし面影も…なぁ?狐っつー共通点しかねぇだろぃ。」
困惑するライに対し、自らをコウと名乗る狐はのほほんと返す。
「ふふふっ…まぁ、この姿ですからねぇ、怪しむのも無理はありませんよ~。今の姿で私が分かるのは、かなり高位の魔力保持者のみですから。」
そう言って、狐はその短い後ろ足で立ち上がり、「よいしょ」と言って飛び上がった。
「うぉ!?なんでぃ!?」
ボフンッ!と狐を中心に煙が出て、数秒程ライの視界を遮った。
再びライが目を開けた時、目の前にいたのはあの狐ではなく、妖艶に微笑む麗人の青年、紅葉屋の大旦那コウだった。
「嘘だろぃ、まさか本当に大旦那様だったとは…。」
「どうですか?ライ殿、これで信用していただけましたか?」
「あ、あぁ…。でもよぉ、なんでまたあんな姿でいたんでぃ?ここはおめぇさんの宿だろうに」
「えぇ、まぁ、あの姿は日向ぼっこ用で、私だとバレずに仕事をさぼれるんですよぅ。まぁ…家族以外の従業員のみにですが…。それに、あの姿が結構楽であったりするんですよ。」
「ほぉ~?で、話は変わるが、おめぇさんのその服、陽の国のモンじゃねぇかい?しかもその模様と着こなし、ずいぶんと古い…、神代のモンだ。」
ライの言う陽の国という国は、この帝国の隣にある異国で、帝国より小国でありながら、独特の文化と魔術を使い、その魔術師は”導師”とその国では呼ばれている。
その異国、陽の国はこの帝国よりも古い時代、トワ神がまだ健在していた時代から存在していたと言うが、この大旦那はその時代から生きているのだろう。
神狐なのだから当たり前ではあるが…、それにしてもこの時代になってまで神代の服装をしているのは不思議だ。
「よくご存じですね、えぇ、これは神代のものです。私は昔、陽の国に住んでいまして、特にこの時代の服がとても気に入っているんですよ、だから、従業員の服も神代をベースに今風にアレンジして使っているんです。」
「あぁ、どうりで見たことがあると思っていたが…そうか、陽の国の…。」
「私にとって、陽の国は特別なんです!!もちろん、リヴェルディア帝国も大好きですが!!」
「お、おぅ…。」
「それにしても、ライ殿は陽の国にお詳しいのですね、もしかしてライ殿も陽の国出身なのですか?」
コウの質問に、ライは一瞬だけ目を悲しげに伏せて、微笑んだ。
「まぁ…そんな時期もあったような気がするねぇぃ…、俺は芸人なもんで長年色んな国を巡ってっから、昔の事はあんまり覚えてねぇんだ。すまねぇな紅葉屋の大旦那。」
「いえいえ、こちらも少し不躾な質問をしてしまったようですね、大変失礼いたしました。」
ライの様子に、コウも何かを察して深く聞くことを避けた。
誰だって、聞かれたくないことの一つや二つあるものだから。
そうしてしばらく、玄関で他愛もない世間話をしていると、玄関の扉が開き、漸く我が家にアースが帰ってきた。
「お、やっと帰ってきたかアース!!」
「あ゛!?」
疲れ果て、憔悴した様子のアースはライを見た瞬間、ライの鳩尾に向かって拳を叩きつけた。
「ぐぇぇっ!?」
「てめぇ!!何、人ん家に勝手に不法侵入しとんのじゃ!!ボケぇっ!!」
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