あと何回逢える?

Mackimel ree

文字の大きさ
6 / 6

また逢える日まで [完]

しおりを挟む
12月に入ったばかりの冬の入口にしては、暖かい日の朝。
病院からの連絡を受けて、車を走らせる事1時間半弱。
病室に到着すると、変わり果てた父の姿。
瞳孔が大きくこれでもか!という程開き、酸素マスクを装着され、無理やり酸素を肺に入れられている状態。
2日前に来た時は、話も出来てたし、意識もしっかりしてたのに。
突然、何故?
そんな想いが、頭を掠める。
病室には、既に末弟と父の末妹夫婦も来てくれていた。

「私達が着いた時には、もうこんな状態で…」
「病院から連絡来たのが、遅かったんや、意識のある内に、呼んでくれてたら…」

彼らの言葉も耳に入らないくらい、私は取り乱していたと今になって思う。
父の冷たくなっている腕を握って、

「お父さん!お父さん!!私だよ!」

すると、父は、冷たい手で握り返してくれた様な気がした。

「いやぁーーーー!!死なんでよ!元気になるゆうとったやんか!!泊まりがけで一緒に美味しいもん一杯食べに行こうって約束したやん!」

私のその言葉は、叔母夫婦を辛くさせてしまったみたいで、部屋を出て行ってしまった。
けれども、父が帰って来る事は無く、末弟が、

「…もう、こんな辛い状態から解放したろやないか、な?、姉ちゃん」

そう話す末弟の声も震えて、目も真っ赤だった。
その顔を見て、辛いのは自分だけじゃない。
末弟も、そして、もしかしたら私達を置いて行く父が1番辛いのかも知れないと思った。

「………お父さん、今まで本当にありがとね。こんな情けない娘で、本当にごめん。もう、大丈夫だよ。また、いつか逢おうね。お父さんの娘で私は幸せだったよ」

無意識に、そんな言葉が口から漏れた。
その言葉が終わった時、心音計の心拍数が触れなくなり、室内とナースステーションにアラームが鳴り響く。
主治医と、看護師が慌てて駆け込んで来て、父の身体と瞳孔をチェックして、腕時計を見て父の人生が終わった時刻を告げられた。

あれから3年経った今でも、心の整理は付けられないでいる。
月命日には、今の処欠かさずに墓参している。
最初、父の居なくなった無人の実家で過ごす1人の時間が、1番辛かった。
今でも、正直、辛い。
思い出す度に、涙が溢れてくる。
大好きだった父。
学生時代には、反発もした。
我儘だった私の事を見捨てずに、可愛がってくれた父。
私が結婚した時、笑顔で送ってくれた父。
孫が産まれた時には、遠い故郷から車を飛ばして来てくれた父。
たった10分程の用事の為に、片道3時間高速を走って来てくれてた父。
沢山の父との思い出が、今の私を支えてくれている。

何処を探しても、父は居ない。
けれども、私達姉弟の心の中に、ずっと居るのを感じる。
今はもう、思い出話しか出来なくなってしまったけれども、出来ることならば、いつかまた、あなたの娘に産まれて来たいと心から願っている。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

処理中です...