48 / 59
お金はお金を呼ぶらしいのである
しおりを挟む
街は噂で持ち切りだ。
「あの、新しい小鳥の歌はもう聞いたかい?」
「もちろんさ。あんな素晴らしい歌い手が今までどこに隠れていたんだろう」
「コトリと二人の掛け合いがとてもいい。公演してくれないかな」
「恋歌を出してくれないかなぁ。彼女と二人で歌いたいんだ」
「メーユの歌もいいけれど、あの、和平協定の儀の時の歌が特に気に入ったね!」
道を歩いているだけで、そんな会話が耳に入ってくる。
恥ずかしそうに顔を赤らめて、
「原住民族の歌が認められて嬉しいよ」
と、ボルフは言った。
そう、ボルフは身体で稼いだのだ……その声で。
サリラは久しぶりに会ったレイアとボルフを歓迎し、快く協力してくれた。
いや、サリラは情だけでは動かない。
ちゃんとボルフの価値が分かったということだろう。
小鳥は順調に売れているようだ。
今日はサリラにお礼を言いに行くのだ。
ちゃんとした街着をアドルから借りたボルフは、育ちの良さがにじみ出る気品がある。
「小さな民族にも、もっといい曲があったでしょう?魔術具を作ってしまいましょうよ」
「いや、桑の木を買うお金は貯まったから……」
と逃げる父に
「蚕の施設を作りたくはないの?」
と、問いかける。
「蚕は、それぞれの家で育てるから……」
「そうやって人に任せきりはだめよ。魔獣の民だって戦争で家を壊されたり傷ついたりしているんでしょう?蚕が作れなくなった家もあるだろうし、身体を壊して魔獣化できなくなった人に仕事を与えればいいのに」
「……何で分かるの?」
魔石交換手をしているから、分かるのだ。
他の人たちにもいずれ見えてくる問題だ。
父の小鳥も評判だし、自分の負担が減るのは歓迎だ。
サリラ家の正門をくぐり、いつもの部屋の一枚板のテーブルで3人は顔を合わせた。
「……それでは、もう明日には辺境に帰ってしまうのね。予定があるのかしら?」
「いいえ、戦も終わりましたし、僕の仕事はないのですけれど、妻も家に戻りましたし、辺境が好きなので」
金貨の袋の大きさに戸惑いながらボルフが言う。
私も戸惑ったわね、と思いながらイズールは横で眺めている。
「そうそう、お願いがあって。古くていいのだけれど、小さなメソ族の端切れが手に入らないかしら?」
「できますよ。重ねて刺繍を入れてもいいでしょう。何に使われるんですか?」
「ハポン国でも和平交渉の儀がすごく話題になっていて、小鳥が高値で売れるんだけど、もう一工夫しようと思って」
2人には話が見えない。
「メソ族の端切れであの歌を入れた魔術具を包んで売れば、倍の値段で売れると思うのよ。あの布はメーユでは流行らないけれど、諸外国では美術品として評価されているから。メソ族以外でもいい布があったらありがたいわ」
ガタン、と座っていたボルフが立ち上がる。
嬉しそうに体を震わせて、今にもサリラに抱きつかんばかりだ。
テーブルが大きくてよかった。
「あなたは原住民族の救世主だ……!」
あーあ、相変わらず捉えられているよ。
「ところで、ネリーがメーユに帰って来ないって本当ですか?」
イズールがサリラに向かって聞くと、ボルフがうんうん、とうなずいた。
「メドジェの族長の妻になったからね。お似合いの二人で、見ていてほほえましいよ」
(……?)
一生独身だと思っていたネリーが、いきなり「妻」……。
訳が分からない顔をしているイズールに、ボルフが語り始めた。
「あの、新しい小鳥の歌はもう聞いたかい?」
「もちろんさ。あんな素晴らしい歌い手が今までどこに隠れていたんだろう」
「コトリと二人の掛け合いがとてもいい。公演してくれないかな」
「恋歌を出してくれないかなぁ。彼女と二人で歌いたいんだ」
「メーユの歌もいいけれど、あの、和平協定の儀の時の歌が特に気に入ったね!」
道を歩いているだけで、そんな会話が耳に入ってくる。
恥ずかしそうに顔を赤らめて、
「原住民族の歌が認められて嬉しいよ」
と、ボルフは言った。
そう、ボルフは身体で稼いだのだ……その声で。
サリラは久しぶりに会ったレイアとボルフを歓迎し、快く協力してくれた。
いや、サリラは情だけでは動かない。
ちゃんとボルフの価値が分かったということだろう。
小鳥は順調に売れているようだ。
今日はサリラにお礼を言いに行くのだ。
ちゃんとした街着をアドルから借りたボルフは、育ちの良さがにじみ出る気品がある。
「小さな民族にも、もっといい曲があったでしょう?魔術具を作ってしまいましょうよ」
「いや、桑の木を買うお金は貯まったから……」
と逃げる父に
「蚕の施設を作りたくはないの?」
と、問いかける。
「蚕は、それぞれの家で育てるから……」
「そうやって人に任せきりはだめよ。魔獣の民だって戦争で家を壊されたり傷ついたりしているんでしょう?蚕が作れなくなった家もあるだろうし、身体を壊して魔獣化できなくなった人に仕事を与えればいいのに」
「……何で分かるの?」
魔石交換手をしているから、分かるのだ。
他の人たちにもいずれ見えてくる問題だ。
父の小鳥も評判だし、自分の負担が減るのは歓迎だ。
サリラ家の正門をくぐり、いつもの部屋の一枚板のテーブルで3人は顔を合わせた。
「……それでは、もう明日には辺境に帰ってしまうのね。予定があるのかしら?」
「いいえ、戦も終わりましたし、僕の仕事はないのですけれど、妻も家に戻りましたし、辺境が好きなので」
金貨の袋の大きさに戸惑いながらボルフが言う。
私も戸惑ったわね、と思いながらイズールは横で眺めている。
「そうそう、お願いがあって。古くていいのだけれど、小さなメソ族の端切れが手に入らないかしら?」
「できますよ。重ねて刺繍を入れてもいいでしょう。何に使われるんですか?」
「ハポン国でも和平交渉の儀がすごく話題になっていて、小鳥が高値で売れるんだけど、もう一工夫しようと思って」
2人には話が見えない。
「メソ族の端切れであの歌を入れた魔術具を包んで売れば、倍の値段で売れると思うのよ。あの布はメーユでは流行らないけれど、諸外国では美術品として評価されているから。メソ族以外でもいい布があったらありがたいわ」
ガタン、と座っていたボルフが立ち上がる。
嬉しそうに体を震わせて、今にもサリラに抱きつかんばかりだ。
テーブルが大きくてよかった。
「あなたは原住民族の救世主だ……!」
あーあ、相変わらず捉えられているよ。
「ところで、ネリーがメーユに帰って来ないって本当ですか?」
イズールがサリラに向かって聞くと、ボルフがうんうん、とうなずいた。
「メドジェの族長の妻になったからね。お似合いの二人で、見ていてほほえましいよ」
(……?)
一生独身だと思っていたネリーが、いきなり「妻」……。
訳が分からない顔をしているイズールに、ボルフが語り始めた。
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる