魔石交換手はひそかに忙しい

押野桜

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お金はお金を呼ぶらしいのである

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街は噂で持ち切りだ。

「あの、新しい小鳥の歌はもう聞いたかい?」
「もちろんさ。あんな素晴らしい歌い手が今までどこに隠れていたんだろう」
「コトリと二人の掛け合いがとてもいい。公演してくれないかな」
「恋歌を出してくれないかなぁ。彼女と二人で歌いたいんだ」
「メーユの歌もいいけれど、あの、和平協定の儀の時の歌が特に気に入ったね!」

道を歩いているだけで、そんな会話が耳に入ってくる。
恥ずかしそうに顔を赤らめて、

「原住民族の歌が認められて嬉しいよ」

と、ボルフは言った。
そう、ボルフは身体で稼いだのだ……その声で。
サリラは久しぶりに会ったレイアとボルフを歓迎し、快く協力してくれた。
いや、サリラは情だけでは動かない。
ちゃんとボルフの価値が分かったということだろう。
小鳥は順調に売れているようだ。
今日はサリラにお礼を言いに行くのだ。
ちゃんとした街着をアドルから借りたボルフは、育ちの良さがにじみ出る気品がある。

「小さな民族にも、もっといい曲があったでしょう?魔術具を作ってしまいましょうよ」

「いや、桑の木を買うお金は貯まったから……」

と逃げる父に

「蚕の施設を作りたくはないの?」

と、問いかける。

「蚕は、それぞれの家で育てるから……」
「そうやって人に任せきりはだめよ。魔獣の民だって戦争で家を壊されたり傷ついたりしているんでしょう?蚕が作れなくなった家もあるだろうし、身体を壊して魔獣化できなくなった人に仕事を与えればいいのに」
「……何で分かるの?」

魔石交換手をしているから、分かるのだ。
他の人たちにもいずれ見えてくる問題だ。
父の小鳥も評判だし、自分の負担が減るのは歓迎だ。

サリラ家の正門をくぐり、いつもの部屋の一枚板のテーブルで3人は顔を合わせた。

「……それでは、もう明日には辺境に帰ってしまうのね。予定があるのかしら?」
「いいえ、戦も終わりましたし、僕の仕事はないのですけれど、妻も家に戻りましたし、辺境が好きなので」

金貨の袋の大きさに戸惑いながらボルフが言う。
私も戸惑ったわね、と思いながらイズールは横で眺めている。

「そうそう、お願いがあって。古くていいのだけれど、小さなメソ族の端切れが手に入らないかしら?」
「できますよ。重ねて刺繍を入れてもいいでしょう。何に使われるんですか?」
「ハポン国でも和平交渉の儀がすごく話題になっていて、小鳥が高値で売れるんだけど、もう一工夫しようと思って」

2人には話が見えない。

「メソ族の端切れであの歌を入れた魔術具を包んで売れば、倍の値段で売れると思うのよ。あの布はメーユでは流行らないけれど、諸外国では美術品として評価されているから。メソ族以外でもいい布があったらありがたいわ」

ガタン、と座っていたボルフが立ち上がる。
嬉しそうに体を震わせて、今にもサリラに抱きつかんばかりだ。
テーブルが大きくてよかった。

「あなたは原住民族の救世主だ……!」

あーあ、相変わらず捉えられているよ。

「ところで、ネリーがメーユに帰って来ないって本当ですか?」

イズールがサリラに向かって聞くと、ボルフがうんうん、とうなずいた。

「メドジェの族長の妻になったからね。お似合いの二人で、見ていてほほえましいよ」

(……?)

一生独身だと思っていたネリーが、いきなり「妻」……。
訳が分からない顔をしているイズールに、ボルフが語り始めた。
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