魔石交換手はひそかに忙しい

押野桜

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今までは夜目のきく魔獣の特性を生かして早朝と深夜だけに襲撃を仕掛けていたらしい。
その夜や朝を避けて、気の緩む昼前が選ばれた。
メドジェ族を遠く離れて二つのメーユ軍の宿営地のメーユ側に回り込んだ場所に魔獣が集まっていた。
いくつもの部族の魔獣を集めたそうだが、意外と数は少ない。
別の場所にいるボルフがメーユ軍の横流し品の発光の魔術具を動かした。
パッ、と空に光が閃く。
辺境には山があり、小さな洞窟がいくつかある。ばらばらの方角にある洞窟の奥で、7個のピンに一斉に血が垂らされた。
ギョエッ、ギョエッと竜たちが興奮して鳴き出し、四方八方ばらばらに飛んでいく。
空中で振り落とされる騎士もいた。
7か所同時に知らせが来て、混乱して興奮しすぎた竜が制御できなくなってしまっているのだ。

「しばらく時間をおいて、竜が疲れるのを待とう」

というボルフの指示が出ている。
気配を消して連合軍が見守っていると、力を失った竜たちが落ちてゆくのが見えた。
落ちてきた竜に動揺して、いななく馬の声が聞こえる。
ボルフの発光の魔術具がまた空に光った。

「行こう!」

一斉に魔獣たちがメーユ軍に背後から襲い掛かる。
歩兵の群れを魔獣が襲うようなものだ。
人形のように人がばたばたと壊れてゆく。
脆い。
一方的でむごい戦だ。いや、ただの殺戮だ。
しかし今殺し尽くしてしまわなければこちらが滅ぼされてしまう。
その瞬間。

太く震える長い声が空に響いた。
ネリーが寒いメドジェの夜に聴いた焚き火を囲む歌の一つだ。
平和を願い自然と共に生きるメドジェ族の歌だ。
魔獣たちが勢いをなくす。
すぐさま別人のような声が響き始めた。
澄んで柔らかい不思議に伸びる歌声。
王都の祭の歌に、メーユ軍の騎士たちも立ち止まった。
不思議な時間が流れる。
メーユの騎士団から、和平協定の申し出を知らせる白い旗が立てられるのを確認してから、最後の光の魔術具が上がった。
洞窟の奥で血まみれになっていたピンが清められる。
痙攣していた竜たちが大人しくなって、クエー、と疲れ切った細い声を漏らすのが聞こえる。

「……イズール」
魔術具を使い終わったボルフが微笑み、ボルフの横にいたネリーがえっ?と声を上げた。
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