独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第1章 精霊姫 編

第21話 【攻略対象 辺境伯令息】異変の原因

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「ドーラーイィィーーーアードーッさぁぁーーーーん!」

「おい!? 怖さのあまり頭がおかしくなったのか!? え? 怖いんだけど、おい!?」

 どうやら失礼にも目の前の子供は、レーナの気が触れた方を疑ってきた。断じてそんなことは無いのだ。エドヴィンを、そしてシュルベルツ領を救うため、レーナの出した渾身の救済方法――それは

「ここは、あなた達のかかわりが深い妖精姫ドライアドの樹海でしょう? なら、きっと助けてくれるんじゃないかしら」

 奇異の眼で見てくるエドヴィンに、どや顔で説明する。子孫のためにご先祖様に一肌脱いでもらう、他力本願、自分の身バレも防げて万歳作戦だった。

(自分を守りつつ、何よりも頼りになる相手に助力を乞う! これ以上ない、抜かりない作戦だわ!)

 立てた策略の完璧さに打ち震えるレーナだったが、この時すでに彼女は決定的な失敗を犯していたのだけれど、それには気付いてはいない。聡いエドヴィンはしっかりと気付いていたが、周囲に頼りになる者の姿も無く、か弱い同行者が取り乱している状態で指摘するのを「今言うことじゃない」と控えているだけだ。

「ドーラーイィィーーーアードーッさぁぁーーーーん!」

 再び呼び掛けると、見えない暗い森の奥からゴウと突風が吹いて来た。

 と、同時に頭の中に儚げな女の声が響いてくる。


『なによ、なに!? うるさいわ あの人のいない世界なんて 太陽のない世界と同じよ そんなところに あたしを呼び出そうったって 無駄なのよ ぐすっ ぐすん』


「「うわぁ……」」

 おそらく……精霊姫なのだろう。信じたくないけれど。その彼女とのファーストコンタクトに、まさかのメンヘラ気質を感じ取って、2人の声が揃う。

『こんなに落ち込んでる あたしを 放っておくなんて 子孫の役目 果たす気ある!? あの人 あたしを悲しませないって 言ったのに すん ぐすん』

 なんだかんだ恨み言を言いつつも、会話を続ける気の有りそうなメンヘラ精霊姫(仮)だ。

「子孫の役目って、ナニ? 何かご先祖様から伝わってることとか、代々続いてたけど途切れたお祭りとか、風習とかってある?」

「初耳だ。――いや、それよりも、この声は本当に……?」

 訝し気なエドヴィンにレーナは、こんなタイプは気持ちを逆撫ですることは言わない方が良いと、「みなまで言うな」とばかりに微かに首を振ってみせる。すると彼は、すぐに察して言葉を飲み込んだ。さすが攻略対象。察しが良い。

『ひどいわ ひどいわ 愛してるなんて言っといて 自分だけ満足して あたしを放って逝ってそのまんまなわけ!? ひどいわひどいわっ ふぅわぁぁーーん』

 ぎーーーんと、頭の中にメンヘラ精霊姫(仮)の号泣が木霊して、エドヴィンとレーナは掴んでいた両手を放すと、自身の両耳を抑える。けれど、実際の音が聞こえているわけではないから、彼女の泣き声は防げない――どころか、どんどんヒートアップして行く。

『ふぅわぁぁーーぁぁあ゛あ゛あ゛ん  うーらーぎーりーもぉーーーのぉぉぉおおーーーーぁぁあ゛あ゛あ゛ん』

 身も世も無いギャン泣きが、防御無視の絶対的攻撃力を持って頭蓋の中を反響する。

「なんだ! こっ……こんな攻撃っ聞いたこともないぞ!? 物理!? いや、精神攻撃!?? 魔法防御も、物理防御も効いてないぞ!??」

 瞬時に防御の魔法を展開し、身体の周りに光る膜を纏ったエドヴィンが、信じられないと絶叫する。流石、子供でありながらも、ハイスペックな攻略対象だと感心するレーナだが、まだまだだ――とも確信する。女子のこの状態を攻撃などと捉えるとは。中身18歳オネエサンとして彼には残念男子にならぬよう、伝えておくべき事がある、と使命感に駆られて声を張り上げる。

「女子が号泣しだしたら、もう理屈も何も通用しやしないわ! 何人なんぴとたりとも逆らえない最強の攻撃になるってことよ! よく覚えておくことね! 下手に女の子に手を出して恨まれたら、こうなるんだから!! 女の子はむやみやたらに落とすべからず、顔が良いあんたなら特によ!!!」

 現場、現状での注意喚起は、どれだけ言葉を重ねるよりも説得力がある。レーナの言葉を愕然とした面持ちで聞いていたエドヴィンだったが、何故か最後は顔を赤らめていた。

 何でだ!? 伝わらなかったのか!? と、自身の説明力に自信を無くしかけたレーナだが、そんなことはお構いなしにメンヘラ精霊姫(仮)の泣き絶叫はヒートアップして行く。

『ぁぁあ゛あ゛あ゛ん あ゛ぃじでるっで い゛っだぁのぉに゛い゛い゛ぃぃぃぃーーーーーーあ゛あ゛ん やぐぞぐやぶる な゛んてぇぇぇーー うーらーぎーりーもぉーーーのぉぉぉおおあ゛あ゛』

「あんたのご先祖様、なにやってくれちゃってんのぉぉぉーー!!!」

 堪らずレーナが叫んで目を上げた先、黒ずんだ地面の広がる場所で、火もないのに焦げがじわりと広がる。さらには、透明な湖に真っ黒い木の葉が数枚ひらりひらりと、落ちるのが目に入った。

「え!? まさか、樹海の異変の原因って……」

 呟くレーナの脳裏に、どこかで聞いた別の声が響いた。



―――― ふふふっ 気付いた? 気付いちゃったね? ――――
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