24 / 237
第1章 精霊姫 編
第24話 【攻略対象 辺境伯令息】オドロオドロシイ状態の魔力に覆われたモノ
しおりを挟むぐったりしたまま屋敷へ連れ帰られたレーナとエドヴィンは、急ぎ呼ばれた医師の診察で異常なしと確認された後、それぞれの部屋で休ませられることになった。とは言うものの当人たちは、樹海の中で気を失ったままだったから、目覚めたらベッドの上で昼過ぎだったと云う感覚だ。
レーナは、ベッドの上で軽食を摂った後、メイドから「昨日の話を聞かせて欲しい」とのドリアーデ辺境伯からの伝言を受け取っていた。気持ち的には、まだまだ休み足りないけれど、騒ぎを起こした自覚はあるから、疲れの抜けきらない身体を引き摺って、どうにか指示の有った部屋へと赴いた。
そこは、午後の暖かな日差しが降り注ぐ一室で、既に部屋の中央に設えられた円卓にはレーナの父とドリアーデ辺境伯、それに居心地悪そうに小さくなって座るエドヴィンの後ろ姿が在る。
「レーナ! いくら可愛いくても、やってはイケナイことがあるんだぞ!? 愛らしさの尊すぎるレーナに万一のことがあったら、お父さんは肥溜めに飛び込んで、そこを終の棲家にしながらレーナとお母さんに懺悔し続ける自信があるんだからな!!」
「ふふっ、何を言っておるのか全く分からんが。まぁ良いではないか、御父上。我が護衛らの、不足が明らかになる収穫もあったのだ。充分な備えのつもりであったものを、このような子供らに後れを取る事態となるとはのう」
シュルベルツ領に到着した夜――今となっては一昨日の夜だが、共に飲み明かした父と辺境伯は意外にも意気投合したらしく、今日も揃って茶を飲みながら談義をしていたらしい。その場で、目覚めたレーナとエドヴィンをまとめて呼び出し、精霊姫の樹海での話を聞こうではないか……という流れになったようだ。
辺境伯家で用意された小ざっぱりした衣装を纏った父が、ティーカップを持って、ドリアーデ辺境伯と円卓を挟んで座っている。力仕事をする男らしい太い指が、華奢な陶器の耳を摘まんでいる姿を見たレーナは、注意を受けているはずなのに、ポカンと口を開けてしげしげと眺めてしまった。似合わないとは、こう云うことを言うのだろう。
(うわぁー。ここはゲーム世界だとは思うけど、お父さんのこの絵面は絶対にスチルには成り得ないわ。よかった、お父さんは間違いなく一般庶民ね。うんうん、ならその娘のわたしだって、やろうと思えばしっかり一般庶民として埋もれられるはず! もう少し大きくなったらリュザス様を探す旅に出るのよ……)
「昨日は、私の力不足により、父上の客人を危険に晒してしまったこと。まずはお詫び申し上げます。レーナ嬢、御父上。この度は大変申し訳ありませんでした」
ぼんやりと考えに浸っていたレーナは、隣で深々と頭を下げたエドヴィンの言葉でようやく我に返った。
「あ、ですです。わたしも、お詫びもうしあげます」
考え事をしていたせいで、おざなりになってしまった謝罪の言葉に、父がぎょっとした様子を見せる。けれどそれには構わず、エドヴィンに倣って頭を下げる。すると、レーナの肩に着くおかっぱ髪がサラリと流れて、右耳の上で虹色の髪飾りがキラリと光った。
「んんんっ!? レーナ、それは!?」
父がいきなり気色ばんで腰を浮かせながら、ギロリと鋭い視線をエドヴィンに向ける。いや、なんでその反応? とレーナが首を傾げれば、父が「小さくても男は男か……油断ならん!」などと憤然と口走っている。反対に、ドリアーデ辺境伯は面白いものを見たとばかりに軽く両目を見開いた後、両方の口角を吊り上げた。
「御父上、残念ながらレーナ嬢の髪飾りは、我が息子から贈った物ではなさそうだ。誰かの魔力が妄念の様に絡みついているが、我の見知った者ではなさそうだからな」
わざとらしく溜息を吐きつつも、楽し気に告げられた内容は物騒なものだった。どうやら彼は『魔力』の性質を見分けることが出来るらしい。警邏隊詰所の屋外訓練施設では、離れたところからレーナが修繕を使ったことにも気付いていたようだった。やはり攻略対象エドヴィンの父親で、精霊姫の血を引く彼は、ハイスペックな存在のようだ。対して、レーナをはじめ、父母も、なんならご近所の皆さんにも魔力を見分ける能力など無い。魔力とは、道具に溜めて使うことのできる便利なモノという認識なのだから。
ただし、全く気付いていなかったが、今現在レーナの頭に付いているらしい髪飾りは、便利な魔力ではなく、妄念などと云うどこかオドロオドロシイ状態の魔力に覆われているようだ。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら
渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!?
このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!!
前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡
「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」
※※※
現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。
今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました!
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる