独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

文字の大きさ
35 / 237
第1章 精霊姫 編

第35話 【攻略対象 辺境伯令息】荒ぶる精霊姫にネリネの花束を

しおりを挟む

 翌朝。

 いつもの調査作業開始の時刻に、レーナは領兵詰所ではなく辺境伯家を訪れた。

 ドリアーデ辺境伯から精霊姫ドライアドほこらの場所を聞き出すためだ。ゲームでも登場した祠ではあったが、現実に樹海に足を運ぶと方向感覚はろくに働かなくなり、正確に位置を示すことは出来そうになかった。所詮しょせんゲーム知識は、現実の感覚には及ばないと理解させられたレーナだ。

 昨日のうちにエドヴィンが、父であるドリアーデ辺境伯に面談を申し入れてくれていたお陰で、レーナは直ぐに辺境伯の執務室に通された。

「お主が聞きたいと言っていたのは、樹海の中に在る精霊姫ドライアドほこらだったのう?」

 部屋の突き当りに置かれた、オーク色の重厚な執務机に着いたままで、ドリアーデ辺境伯がエメラルドの瞳を細める。彼の手元には、今日の面談のために揃えられた書物が数点積まれており、その中には、樹海の地図と思しき古めかしい羊皮紙の巻物もある。

「はい。そこが今回の騒ぎを治める、鍵になる場所のはずです」

 応えるレーナは、執務机と入口扉の中間に置かれた長方形のローテーブルに着いていた。短辺に1人掛けのソファが置かれ、長辺に3人掛けのものが置かれた8人もの人間が一度に打ち合わせを行えるゆったりしたサイズのはずだ。

 だが、今回もエドヴィンは馬車の時と同じく、広い椅子のレーナの腰かけるすぐ隣の触れそうな距離に座っている。

「レーナ、私も昨日はその辺りを詳しくは聞いていなかった。精霊姫を宥めるために居所である祠へ行くというのは普通の考えだ。まあ分かる。だが、今は荒ぶる彼女が近付けさせてはくれないだろう」

 真横で顔をのぞき込むエドヴィンの意図は測れないが、昨日の花束の延長での行動だとしたなら、なかなかに強い執着心だと困惑するレーナだ。けれど、今はそんな些細な事よりも、自分の引き起こしてしまった領地滅亡の引き金になりかねない事態を治めることに集中しようと割り切る。

「そこで、必要になるアイテムが『ネリネの花束』なんです。彼女は、それを待ち兼ねているはずですから」

「お主は何を根拠にそんなことを言う? 我が領兵を使っての調査でも、そんな報告は微塵もなかったであろう」

「そうですね、確かに風習や祭り、言い伝えで知っていること……と尋ねても無かったですね」

 話しながら部屋を見回るレーナの目には、この部屋に在る執務机とタペストリーが映る。執務机には、側面を彩るネリネの花唐草と精霊姫のレリーフが施され、壁を彩るタペストリーにはネリネの花がふんだんに咲き誇る縁模様が編み込まれて、中央に豪奢で可憐な精霊姫の姿が刺繍されている。

「だからこそです」

 言い切るレーナに、辺境伯、エドヴィンの他、この部屋に留まる執事や衛兵までもが表情に疑問を浮かべる。

「玄関ホールに降りる階段。あそこに在る絵も、街中に在るあらゆる絵や柄や物も、何故必ず精霊姫とネリネが一緒になっているんですか?」

「何を言っている? そういうものであろう」

「そう思いますよね。ここに住む人たちは。だからこそです」

 それからレーナは、精霊姫を宥める方法を告げたが、彼らは揃ってその言葉に懐疑的な反応を示していた。

 けれど、外ならぬ異常事態を引き起こし、尋常でない力を持つレーナの提案を試しても良いだろう、とのドリアーデ辺境伯の一言によりその日の午後には準備を整えて、精霊姫のドライアド・樹海ラヴィリアへ出立する事となった。


 レーナにとっては甚だ不本意な賛同理由ではあったのだが、仕方がないのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...