独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

文字の大きさ
42 / 237
第1章 精霊姫 編

第42話 【攻略対象 辺境伯令息】根っこ相手に超苦戦

しおりを挟む

「ひっ……! 精霊姫ドライアド様がお怒りに」

「何てことだ」

 領兵らが顔を青くして見詰める先では、地面から突き出た木の根に、レーナが肩を貫かれている。

 どう見ても、自然現象ではない。何者かが意志を持って植物を用い、レーナを攻撃したのだ。彼女を襲った根は、ほこらから地中を這って近付き、害意を持って突き出されたようだった。

「いた……くない! 治るっ!!」

 我儘わがまま娘に負けて堪るかと、レーナが力強く宣言すれば、突き刺さったはずの根が彼女の身体を境にして前後の地面にぼたりと落ちる。

(ああああ……治っちゃった。取り込んじゃった。今度は木だよ!? 痛くなくなったけど、これって大丈夫なの!?)

 今更ながら、内心で盛大に慌てふためくレーナだ。

 ―― 大丈夫なんじゃない? 僕の見込んだレーナだもん。それにもうちょっと頑張ったら、役に立つもの・・が来そうだし ――

 再び頭の中に青年の声が響く。

「どこがっ・大 丈夫っ だっ……て!?」

 頭の中の声に返事をしながら、ニョキニョキと地面から突き出しては引く木の根を躱す。飛び退き、後退り、必死の体捌きで祠から大きく距離を取れば、不自然に言葉が途切れる。舌を噛みそうだが、青年の呑気で勝手な言い草に反論せずにはいられなかった。

 レーナを狙って、禍々しく捻じれ尖り、黒く変じた木の根が次々に地面から突き出してくる。即死でなければ――ある程度・・・・までの自分の傷なら「治る」と念じ、呟けば修繕リペアできるとレーナは考えている。魔物にやられた腹の傷は本当に深かったから。けれど、刺されば痛い。だから、そんなものに進んで当たりたいとは思わないのだ。

(閉じ籠った精霊姫が出てくるように煽ったのはわたしだけどさぁ! 痛いのは嫌だってば。リュザス様が信じてくれるのは嬉しいんですけど!!)

 のんびりとして笑みさえ含んでいそうな青年の声に、レーナは心の中でひっそりと悪態を吐く。けれど、その間も地中から次々に木の根が彼女目掛けて突き出て来るから、必死で避ける。根の狙いは、彼女の煽りの甲斐あってか、レーナただ一人だ。執事や領兵は近付こうとしても、根がやんわりと脚に絡み付いて押し留めている。彼女への扱いとは雲泥の差だ。

 いつの間にか祠の周りは、地中から突き出た木の根にグルリと取り囲まれ、祠を胴にしたタコの様になっていた。

 祠を囲んで、屋根よりも高く上空へ延ばされた根は、近付けないレーナを嘲笑うかのようにウネウネと揺れて踊る。

「もぉもぉもぉっ! 煽ってんじゃないわよぉぉ」

 自分のことを棚に上げて、腹立ちを込めて叫ぶレーナの声が森に木霊する。煽れば簡単に現れるかと思った精霊姫とエドヴィンは、未だ現れる気配もない。だから多分に焦りもあった。
 とは言え、ここが彼らの籠る場所でないとは思ってはいない。自ら一緒に確かめに行くことを提案したリュザスが、彼らの居る場所へ案内していると信じているレーナだ。祠に近付けさせない様に、これだけの抵抗を受けるのも信憑性の裏付けになっている。

 固く閉ざした祠の扉の奥には、間違いなく精霊姫とエドヴィンが居る。

 そう確信しながらも近付けずにいるのは、祠を取り囲んだ「踊る根」が、レーナの些細な動きを追って右へ左へと照準を絞って動くからだ。今は50メートルほどの距離を取って様子を見ているが、近付けば必ず攻撃してくるだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...