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第1章 精霊姫 編
第54話 【攻略対象 辺境伯令息】リュザスの助力のお陰です
しおりを挟む全身鮮やかな若草の緑の少女は、丁度レーナが手にしていた木片と同じくらいの背丈だ。そして今、レーナの手の中に木片は無く、精霊姫の髪は肩で切り揃えられたボブカットになっている。
だとしたら、答えは明らかだ。
『『なっ……何よこれぇぇぇ!!』』
大小2体の精霊姫の口から、同時に同じ叫びが発せられる。
3等身の愛らしい精霊姫と、8等身の美麗で女性らしい精霊姫が、同じポーズで同時に一言一句違わぬ内容を語る。小さな方の声が若干高いかもしれないが、抑揚も間も全く同じだ。
「えーっと……、子機?」
首を傾げて愛想笑いをしてみせると、大小のエメラルドの瞳が険しく眇められてレーナに向けられる。
『『コキって何よぉ!? あたしの身体、どうなっちゃったのぉぉ!?』』
「子機って言うのは、独立した複数の機器を一組みにして使うとき、端末として使う機器のことで、今の場合はコードレスの子機ってことになるのかなぁ?」
『『はぁ? わかる言葉で話しなさいよぉぉぉっ』』
2体同時に責め立てられるが、レーナだって訳が分からない。
(なんで、なんで!? 切り取って終わりじゃないの!? なんでちっさいのが出来上がってるの!?)
混乱するレーナは、修繕能力をまだ過小評価していたのかもしれない。とんでもない合体を実現してしまう困った力だとは思っていたが、新生命体ともいえる子機精霊姫が出来上がるなんて、予想外だにしていなかったのだ。
『『あの気味の悪いごちゃ混ぜ色の蝶と良い、あたしへの嫌がらせなわけ!?』』
「ごちゃ混ぜ色? ……あっ、虹色の蝶!」
(リュザス様だぁぁぁ! リュザス様がわたしに力を貸してくれたの!? 良かった、わたしひとりの修繕能力のせいじゃなかった!)
自分のとんでも能力が強化したわけではないと若干ほっとしたレーナだ。落ち着くと同時に、子機精霊姫についても閃くものがあった。
「多分、虹色の蝶はリュザス様があなたに力を貸すために現れたんですよ。だって、ほら小さなあなたの目の前にこうして……」
子機精霊姫をがしりと掴むと、レーナは顔の真正面に持ち上げて、自分の顔をくしゃりと歪ませる。
『『きゃははははっ!! なに? 急に!?』』
渾身の変顔に大小精霊姫が同時に大笑いする。
「つまりそう云うことですよ。今のは大きい貴女には直接見えていないですよね」
レーナは、小さい方で顔を隠す状態だったのだ。
「だから、本体の貴女じゃなく、小さい方だけを街に連れて行けば、樹海への影響は本体ほどじゃない状態で、色々見ることが出来るんじゃないですか?」
『『あ……』』
呆気にとられた表情で、精霊姫の笑い顔が固まる。
「リュザス様が、貴女を憐れんで手を貸してくれたんですよ」
レーナの言葉は、精霊姫だけでなく、その場に居合わせたエドヴィンやアルルクをはじめとした、執事や領兵たちにもしっかりと響いた。
―― 僕としては、レーナのためだったんだけどね。まぁ、面白いことが起こって楽しませてもらったし、僕への信心もちょっぴり増したから良しとしようかな ――
軽薄な声が、レーナにだけ届いているが、敢えて皆に伝える事じゃないと口を噤んだ。リュザスの言葉が聞こえることを告げて、聖女に祀り上げられるのは、やはり絶対に嫌なレーナだったからだ。
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