独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第3章 乙女ゲーム始動 編

第111話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】こっそり探し物&お直しでドジっ娘イベント発生!?

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 校章は、親指の先程の小さなレリーフではあるが、制服に糸で縫い付けてある。そう簡単に外れる物ではない。

(だとしたら、嫌がらせを受けた……ってところかしら?)

 当たりを付けつつ改めて少女を見る。すると、校章の付いている襟の一部が引き攣れた様になり、糸の切れ端が残っている。

「校章は見付かったの?」

「いいえ……庭園の生垣へ投げ捨てられてしまって」

 レーナが聞けば、少女は暗い面持ちで俯き、代わりに答えたシルヴイアが憂いに眉を下げつつ窓の外へ視線を向ける。そこには高低様々な草木が繁り、花々が咲き乱れている。

 この中を探すのは、確かに骨が折れそうだった。だからこそ、教室に向かうことを優先させたのだろう。

『困った子がいるものね』

「ホントに。シめられたのは、わたしだけじゃなかったのね。この学院、平民出身者への当たりが強いわよね」

 プチドラと言葉を交わしながら、レーナが自らの校章をプチリと毟り取る。

「あ、結構簡単に取れちゃうのね」

『はぁ? 何やってんの?』

 ぎょっと目を剥くプチドラを「まあまあ」と宥める。視線で緑豊かな庭園を示せば、プチドラはレーナの意図を理解して、呆れた様に溜息を吐く。そして『付き合いきれないわー』とボヤキながら宙に浮かび、ふらりと窓の外へと飛んで行ってしまった。

「わたしって、縫い物が得意なんだよね」

 言いながら、俯く少女との距離を詰める。気安い調子で少女の襟を両手で掴み、生地の様子を確認するように裏表を返しつつ眺めてから、糸の残る校章跡にそっと人差し指を這わせる。

「そうそう、わたしたちの教室はこの廊下を真っ直ぐ、柱六本分進んだあのオレンジ色の花器のところで左に曲がって……」

 ふいに道順を説明し出したレーナにつられて、2人は廊下の先を確認するように視線を向ける。

「ほいっ! でーきたっ」

「え……?」

 レーナが、少女の襟元をポンと叩いたことで、2人の意識が廊下の先から校章のあった位置に戻る。すると、そこにはいつの間に縫い付けたのか、元通り――生地の引き攣れも治った状態で、王立ダルクヴィスト貴族学院の校章がキラリと光っていた。

「道順、今ので分かったよね。先に行ってて」

 明るく言うが、レーナが自身の校章を少女に与えたことで、彼女らは戸惑い、申し訳なく思っているのだろう。躊躇して動こうとしない2人に、さらに重ねて「いーの、いーのっ! 大丈夫だからっ!!」と強く言いつつ背中を強引に押せば、ようやくノロノロと歩き出した。

 2人が廊下の先へ進む後ろ姿を見送っていると、傍を離れていたプチドラが、ふわりと浮かんで戻って来る。

『精霊遣いが荒いんだから。見付からなかったらどうするつもりだったのよ』

「勝算は大アリだったよ。だってプチドラちゃんなら、緑の中はお手のものだって信じてたし。けど、勝手に頼っちゃってごめんね」

『まぁ、良いわよ。精霊姫のドライアド・樹海ラヴィリアの緑たちほどではないけど、探し物くらいなら植物の声を辿って簡単に見付け出せるもの』

『はい、オヒトヨシさん』と笑いながら手渡されたのは校章だ。レーナはそれを自分の襟元に持って行くと、修繕リペア能力を使って制服に取り付ける。

「じゃあ、急いで教室に向かわなきゃね!」

『そうそう、緑達に校章のことを聞いてたら、レーナのクラスの先生が教室に入ったとも言ってたわね』

「えぇっ!!」

 それから人目の無いのを良いことに、廊下を猛ダッシュしたレーナだったが、教室に辿り着けば、プチドラが言った通り教師が教壇に立っていた。

 遅れて教室に入る『ドジっ娘』イベントはしっかり発生してしまったのだった。
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