独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第3章 乙女ゲーム始動 編

第114話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】紅茶の雨

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 一般コモン寮へ向かうため、高貴ノブレス寮の前を通ると頭上から紅茶が降ってきた。

「超局地的異常気象……!?」

『んなわけないでしょ!!』

 咄嗟に熱々紅茶の雨を、水の防御膜で防ぎつつ楽観的観測を述べてみるが、プチドラにすげなく現実に引き戻された。ちなみに、最初から防げた訳ではない。しっかり修繕リペア能力を使う程度には、火傷を負った。

(ただの平凡モブ村娘なわたしに、こんな濃厚なエピソードなんて要らないのに。面倒な)

 やれやれと見上げれば、上品に髪を結いあげたご令嬢が3階の窓際でティーポットを傾け、紅茶の雨の発生源となっている。紅茶は、レーナの頭上に傘型に展開した水の防御幕で弾かれている。上から見れば、頭に掛かっているように見えていることだろう。

「わたしじゃなきゃ大ごとだよ?」

 ぼそりと呟いた声に、プチドラが『どうする? どうしちゃう?』とワクワクを隠しきれない悪魔の囁きを口にする。

「いやいやいや、プチドラちゃんってば。玲於奈の時を合わせれば、ここの子たちの倍は生きているのよ? 精神的大人なのよ。怒鳴ったりだとかはしないわ?」

 言いながら見上げれば、熱々紅茶降らし娘の背後から、カロリーナ子爵令嬢が顔を覗かせた。いい気味だと言わんばかりにニヤついて、レーナを見下ろしている。精神的大人であっても、ちょっとばかりムッとした――ら、

 ばしゃ

 突然、窓から顔を出した2人の令嬢の頭上に水が降り注いだ。

 一瞬にして、カロリーナと紅茶降らし娘の2人は、池に飛び込んだと見紛う程の、ずぶ濡れになっている。令嬢らは一瞬絶句した後「何よこれーーー!!」と大騒ぎしながら顔を引っ込めた。

『精神的大人設定、どこにいっちゃったのかしらねー』

「大人よ? やられて嫌なことは、やるべきじゃないって分かって欲しいから、そのままお返ししたのよ。熱湯紅茶じゃなく、冷たいお水なのは、精神的大人だからこその配慮よ?」

 どやぁ、と胸を張って言うレーナに、プチドラは『はいはい、そーね』とおざなりな相槌を打つ。納得は、していないらしい。しっかりと話し合うべく、レーナが宙に浮かんだプチドラを、両脇からがっしりと捕まえたところで、頭上に大きな影が差した。

「レーナを傷つけるヤツは 許さねーーー!!」

 聞き慣れた声と共に、上空から降って来たのは赤髪に赤い軽装鎧姿の目にも鮮やかな少年。攻略対象のうち闊達な幼馴染枠の『勇者アルルク』だ。

 レーナの目の前に着地すると、剣の柄に手を掛け、低く戦闘の構えを取りつつ周囲へ視線を走らせる。彼の姿は乙女ゲーム攻略対象に相応しく、凛々しくも愛らしいイケメンへと変貌を遂げていた。その証拠に、彼の登場により周囲には令嬢らの甲高く甘い悲鳴が響き渡っている。それは、不審者に対するものと言うより、アイドルに向ける黄色い悲鳴に近い。

 レーナと同郷の冴えない鼻たれ坊主だったアルルクも、今では勇者の称号を得、さらには龍化・人化を自在に操って、龍の姿で空を自由に飛び回ることまで出来てしまう。今もそうやってこの場へ来たのだ。ゲーム内の彼は、ヒロインからの攻略が進んだ後に、秘められた能力開花の形で龍化も出来るようになっていたから、このアルルクはそれよりも優秀と言える。

(あの手のかかる鼻たれ坊主が、すっかり立派になっちゃって……! すごいわアルルク!)

 暖かなしずくがほろりと目から零れそうになるレーナに、プチドラが呆れた視線を向けた。
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