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第3章 乙女ゲーム始動 編
第115話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】ゲーム主要キャラの渋滞
しおりを挟むアルルクの成長に感動の涙を浮かべ、プチドラからすっかり呆れた視線を向けられたところで、それに気付かないレーナは、めいっぱい澄ました調子で口を開く。
「アルルク。格好つけてるとこ悪いんだけど、熱湯紅茶の雨はもう止んでるわ。怪我も無いし。心配しなくて大丈夫よ」
「えぇっ!? せっかくレーナの危機に 格好良く登場! って出来たと思ったのにぃ!?」
悲壮な表情を浮かべて、アルルクは大袈裟に頭を抱えてみせる。だが、特に掛けられる声はない。手の間からちろりとレーナを覗き見たアルルクは溜息を吐くと、打って変わって厳しい視線を周囲に走らせ、大きく息を吸い込んだ。
「いいかぁ!! レーナを虐めたら、オレが黙ってないからなっっ!!」
カロリーナと紅茶降らし令嬢をはじめとした、レーナに仇なす者許すまじとの意思も顕わに、周囲に凛とした声が響き渡る。派手な登場を目撃し、音に聞いて駆け付けた者も多く、更なる突然の大音声に注目が集まる。アルルクは満足気だが、レーナは彼の暴挙に真っ赤になった。
「モブなわたしを目立たせないでーーー!」
「なんで? オレはレーナを守るって決めて来てんだからな!」
ニカッと笑いながら向けられた顔は、愛嬌のある大型犬だ。成長にともない、彼は人型でも、チビドラゴンと同じくらいの破壊力を身につけたらしい。
「くっ……、さすが攻略対象者ねっ! けどね、アルルクが出会わなきゃいけない子とのイベントは、ここでじゃないのよ! 修行場所の神殿に居なきゃ」
「なんだよそれ。オレは、レーナのために来たんだぞ」
「え!? けど神殿で修行再開したいから王都についてくるって言わなかった?」
「オレはまだ、レーナたちと学校に通える年じゃないからな。ウソも ほーべんってヤツだ」
「んなっ!?」
まさかの理由に愕然とするレーナだが、確かに違和感はあったのだ。僅か一年と少しで修行を切り上げ、シュルベルツ領に押し掛けた彼だ。自ら再教育を受けに戻るなど、あり得るのだろうかと。
『なぁに、レーナってば分かってなかったの? あたしは、そんなとこだろうとは思ってたけどねー』
キャラキャラ笑うプチドラに、ならなぜ教えてくれなかったと恨めしげな視線を向けつつ、レーナはがっくりと項垂れた。
「レーナ!」
呼び掛けられた声に振り返れば、更にこちらを目立たせる人物が駆け付けるところだった。
「レーナの力が、発動するのを感じた! 何があったんだ!? 大丈夫か!?」
物凄い勢いで、超絶美形が幻覚の花を背負って迫り来る。青年期に足を踏み入れた精霊姫の血を引く辺境伯令息エドヴィン・ドリアーデだ。ゲーム12巡もの画面で見ただけでなく、共に学んだシュルベルツ領での日々ですっかり見慣れたはずなのに、彼が発するイケメンオーラの拡散上限は留まることを知らないらしい。光を受けると黄金に輝く緑の髪と、エメラルド色の瞳が、今日も眩しく輝いている。
「うわぁっ」
レーナは、低く声を上げて逃げ出しそうになるのを、なんとか踏みとどまった。背後に、気になる人物がいたからだ。
「大丈夫ですか!?」
ヒロインまでもが、息を切らしながら華奢な腕を精一杯振って駆けて来る。校章を探していた少女も一緒だ。
(なんで乙女ゲームの主要メンバーが、平凡村娘の些細な嫌がらせ現場に、大事件みたいな顔をして集まるのーー!?)
ゲーム開始半日にして、注目を浴びすぎる出来事の連続に、レーナは平凡生活の危機を感じて慄くのだった。
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