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第3章 乙女ゲーム始動 編
第124話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】魔法の授業だ! 学園ものだ!
しおりを挟むレーナは、ゲームでこの世界を12回過ごしたことのある羽角 玲於奈でもある。
だが、それは所詮小さな画面の、限られた場面だけでの見聞だ。『虹の彼方のダンテフォール ~堕ちる神と滅びる世界で、真実の愛が繋げる奇跡~』が彼女にとっての現実世界となった今、ゲームの切り取られたエピソードでは体験しきれなかった学院の毎日は、心躍る連続となっていた。
50脚の机が弧を描いて階段状に設置され、正面中央の低くなった位置に設えられた教壇と黒板に向かう講義室。そこでは今、魔法学の授業が行われている。
白髪頭の老魔法使いが黒板を書く手を止めて、学生を振り返った。
「魔力循環の方法は、人それぞれ血の道の巡りが異なる様に、それぞれの体調、性格や生い立ち、先天的要素によって変化します。
よく似た相手を見付けることは出来ても、全く同じと言える相手を見付けるのはまず不可能だと、賢者フールフーも申しております。
ですからここまで座学の基礎を学んだ諸君には、己を知るための実地訓練を行いたいと思います」
教員からの実地訓練の宣言に、教室中からざわめきが起こる。
兄姉や先輩からこの時を聞いていた者は、期待に胸躍らせ、あるいは不安に顔を曇らせる。初めて耳にした者は、周囲の反応を興味津々で窺っている。
「実地内容は、例年通りの魔獣討伐と致します。先輩諸氏との交流を図り、より実りある実技となることを期待しております」
事前の情報収集も課題に含まれているらしい。学生を見渡す教師は、意味深な微笑を浮かべて見せる。
この訓練は、武力、学力のみならず、幅広い交流、情報の取捨選択の能力をも鍛えるものなのだ。ちなみに、レーナはゲーム内でこの訓練を行った記憶は無い。つまり、乙女ゲームの恋愛要素が起こりえない、ただの授業だと云うことだ。
「かえって新鮮よね! せっかくの学園なんだもの、こんなお楽しみがあってしかるべきよね!」
『学院ね。それと討伐訓練ね。浮かれてたら痛い目見るわよ』
「分かってる、分かってる! ワクワクはしてるけど、初見プレイは慎重派だから安心して!」
『やっぱり遊び感覚なんじゃない。もぉ』
レーナの肩に座ったプチドラが、組んだ足の上で頬杖をついて唇を尖らせた。
魔獣討伐当日は、朝からどんよりと黒い雲が立ち込め、重々しい空が広がっていた。
王立ダルクヴィスト貴族学院の背後に広がる深い森。その周囲は、広大な敷地にも関わらず、大昔に名の知れぬ賢者が作ったとされる魔法障壁が張り巡らせてある。代々学院生らは、その守られた施設で、特別な訓練を受けるのだ。
レーナら1年C組の面々は、森への出入り口として唯一設けられた結界門に集合していた。
ゲームのイベントならば、絵になる快晴となっているだろうに――と思うレーナではあるが、残念には感じていない。むしろ理想的でない気候に、現実味を感じて感動すら覚えていた。
(ヒロインも、攻略対象も関係ない、リュザス様の世界の新たな一面を堪能できるのよね!? 冒険も、宝探しもドンと来い・よ!)
期待感を隠しきれないレーナは、実は昨夜から一睡もしていない。
『ワクワクし過ぎよ!? 行事前に一睡もしないだなんて』
「授業として、討伐や宝探しに謎解きが出来るのよ!? 図書室の隠し書架の本に、誰もが手に取れる百科事典の内容を組み合わせたら、ヒントが出るなんて!」
レーナの頭の上で、プチドラが呆れ返るのも仕方がない。そのヒントを見付けたのは、午後6時の学院図書館閉館のギリギリ直前。そこから寮に帰って、今朝まで謎解きをしていたのだ。
「ちょっと貴女? そのお話し、カロリーナ様になさったのかしら」
ふいに、険のある第三者の声が割り込んだ。
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