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第3章 乙女ゲーム始動 編
第125話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】まさかの同行者あらわる
しおりを挟む居丈高に声を掛けられて振り返れば、レーナのすぐ背後には紅茶降らし令嬢を先頭に、カロリーナと、その取り巻きたちが並んでいる。
「どうして? 情報交換がしたいの?」
「高貴なるカロリーナ様に協力するのは当然でしょ? 貴女も卒業後の立身出世を望むなら、処世術を身に付けなさいな」
紅茶降らし……いや、紅茶令嬢が、カロリーナ子爵令嬢をそっと差し出した手で示せば、手にした扇を広げたカロリーナが自慢げに胸を逸らす。
『破落戸みたいね。目を掛けて欲しければ、上納金ならぬ情報を寄越せって?』
キャラキャラと笑うプチドラの言葉に、紅茶令嬢が、カッと頬を赤らめる。更に令嬢らから剣呑な雰囲気が漂ったところで、レーナが溜め息を吐きながらカロリーナに視線を定めた。
「別に、付いて来ても良いわよ? 」
「何か魂胆が有りますの?」
やけにあっさりとした返しに、不安を感じたカロリーナ自身が堪らず声を上げる。
「わたしはしがない平凡村娘よ。貴族の貴女に、何にも出来ないわよ」
「良く言うわ。水のことを忘れた訳じゃないでしょうね!」
「お互いね」
ニッコリ微笑むレーナに、カロリーナと紅茶令嬢はむぐぐと口ごもる。あの『紅茶降らし美化事件』では、偶然怪我人も出なかったため、熱々紅茶を降らせた彼女らには何の処罰も成されなかったのだ。
何より被害者となるレーナ自身が、それを望んだからだ。平凡村娘の安穏な立ち位置を護るために。
「どうする? また騒ぎを起こす? それとも一緒に来る?」
『ちょっ!? レーナ?』
「何の魂胆が有りますの?」
カロリーナが、広げた扇子から覗く目を眇めて、探るようにレーナを見詰める。
「別に? 普通に公開されてるヒントを元にして、推測を組み立てただけだもの。歴代何人もの学生が通過してきた訓練だし。秘密にする意味も、ないでしょ」
言いながら、ショルダーバッグから様々な図形やメモが記された紙切れをペラリと取り出して見せる。それは、寝惚けた彼女が不可思議な言葉で走り書きしたもので、カロリーナらには判読不可能な代物となっている。
「探索、謎解きゲームは、大勢でプレイするのも楽しいもの。ワクワク探検を体験したいなら、一緒にどうぞ?」
にこりと微笑むレーナに、カロリーナらは微かにたじろぐ。
「また君は、どうしてそう厄介事の元になりそうな提案を進んでするのでしょうね?」
下がった眼鏡を上げる素振りをしながら、目に見えぬ結界の切れ目を示す石造りの標柱の影から現れたのは、バルザックだ。
「入学早々のこともあります。私も見守らせていただきますよ?」
『レーナ気付いてる? あいつ、気配遮断の魔法まで使ってずっと隠れてたのよ。このやり取りがなくても着いてくるつもりだったはずよ』
「えぇー……。なんで攻略対象者がこっちに来るのよぉぉ」
ぼやくレーナの浮かぬ表情を無視し、バルザックは期待に満ちた清々しい笑顔を浮かべている。
かくして入学後初の実地訓練『魔獣討伐』は、レーナと、カロリーナ子爵令嬢ら、それにバルザックが同行することになったのだった。
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