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第3章 乙女ゲーム始動 編
第126話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】ゲーム未見のイベント!
しおりを挟む隠し書架の本と百科事典から導き出されたヒントは、とある場所を示す「文章」だった。
――――――――――――――――――――
金花樹のふみしめる地に、土のいできはじめあり
☘︎.。゜˖*
――――――――――――――――――――
その一言だけが浮かび上がったのだが、レーナはそこに添えられた「光る地面から生えた幼木」の挿絵におおよそのあたりを付けていた。
「どっちも、100年ほど前の学院設立当時に書かれた、とっても古い本だったわ。きっと、歴代の学生たちにも与えられたヒントなのよ」
レーナは肩の上にプチドラを乗せたまま、森の中を確信を持った足取りでぐいぐいと進んで行く。その背後にはカロリーナ子爵令嬢、紅茶令嬢の他、カロリーナの取り巻きである2人の令嬢。殿に彼女らを見守る名目のバルザック・リュトルンが続いて歩く。
因縁でしか結び付いていないチグハグな女性陣に、魔法にしか興味を覚えない大魔導士の組み合わせだ。だから、彼が教師らしく彼女らの間を取り持ち、会話を繋げることなど無い。
黙々と進む彼女らの周囲には、やがて甘い香りが漂い出した。そこまでプチドラと僅かに言葉を交わす以外は、静かに歩を進め続けていたレーナだったが、ぴたりと立ち止まる。
そして、クルリと振り返って後続の面々を見渡すと、溌溂とした声を上げた。
「ここから、個人での探索に切り替えましょう! わたしの手に入れたヒントは、さっき言った通り『金花樹のふみしめる地に、土のいできはじめあり』よ。この辺りの香りが『金花樹』のものね」
周辺には『金花樹』に咲いた橙色の大振りな花から放たれる薫香が、濃密に立ち込めている。
「光る地面から生えた幼木の絵が示す場所は、間近だと思うわ。けど魔獣討伐の為の場所だけあって、辺りには魔獣の気配もある。移動じゃなく探索のターンになるここからは、時間との闘いよ!」
レーナが拳を握りしめて力説する。野に生きる動植物が自然界に漂う魔力を大量に帯びると、身体機能を大きく変化させ、狂暴化して魔獣となる。そんな物騒なモノが人の意を汲み、探索を大人しく待ってはくれない。こちらに気付けば襲い掛かって来るだろう。
「森に詳しい使い魔のプチドラちゃんの話では、この森で『金花樹』が在るのはこの先だけ。――ただし、その木は1本ではないらしいわ」
声を落としたレーナに釣られて、令嬢らが神妙な面持ちでゴクリと唾をのむ。
「光る地面の幼木が、どれかは解らない――そう仰るのかしら?」
紅茶令嬢が言えば、レーナは「そう」と重々しく頷く。
「だから、ここからは現地を観察しながらの謎解きよ。そのキーワードが示す木がどれなのか、頭を捻り、探さなきゃならないの。わたしも答えは解らない。けど、せっかく解いたキーワードの答えが知りたいの。ゲーマーの血ね」
その言葉に、カロリーナが「げーまー……?」とポツリと呟く。すでに謎解きゲームが気になって仕方がない故の、迂闊な発言だ。慌てるレーナだが、プチドラが小さな手をパチパチ打ち鳴らして全員の注意を引く。
『ほらほら! 魔獣討伐の課題もあるから、もたもたしてる時間はないわよ! すぐに探索しなきゃ!』
「そ、そうね! 誰が見つけても恨みっこなし! 折半なんてケチなことは言わないわ。見付けた人の総取りね。さっさと答えを見つけましょう!」
中身超年上なプチドラの助け舟に、レーナは大焦りで便乗し、一行は金花樹群生地の探索行動に移った。
カロリーナと取り巻き令嬢ら4人は協力することにしたらしく、揃って同じ方向へ移動して行く。レーナとは付かず離れず、目に届く範囲をキープしながら、彼女に窺う視線を向けてくる。
『ばれてないと思ってるのかしら、あのこ達ってば、レーナが何かを見付けたら奪い取る気よね』
プチドラの言葉を受けて視線を向ければ、令嬢らは焦った様に顔を逸らす。やましい気持ちがバレバレだ。
「そうかもしれないわねぇ。けど、謎が解けるならそれでもいいわ」
小物感漂う反応に、若干呆れながらプチドラと一緒に移動し始める。平凡でありたいレーナは、手柄を上げるよりも、見知らぬイベントをクリアしておきたい気持ちの方が強い。
バルザックは、『彼女らを見守る名目』を守る気はあるらしく、双方が見える位置に留まって静観している。
『あの子たち、絵のままの幼木を探してるわね』
「絵のままなら双葉だものね。まぁ、そっちの線は、彼女らに任せたわ。けど、わたしが探すのは樹齢を経た巨木よ」
言いながら、視線を上に向けて周囲を見渡す。
(本の書かれた100年前に芽生えた木だとしたら、普通に成長した今はきっと……)
「あった」
ぽつりと呟いたレーナの目は、一本の木に釘付けになっている。
それは、周囲の木々よりも一段と広く枝を伸ばした巨木で、幾つもの橙色の大振りな花を絢爛と咲き誇らせているのだった。
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