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第3章 乙女ゲーム始動 編
第131話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】アルマジロの引っ越し理由
しおりを挟む呆れを隠さないプチドラが、両手を腰に当ててアルマジロに声を掛ける。
『弱ってるんなら、本体のところに戻ったらどうなの? そもそもここは、ホントの貴方の居場所の【土の宝珠の神殿】じゃあ無いでしょ? こんなに人の多い学院の傍じゃなくって、土の地面が延々広がる人里離れた場所だったじゃない』
呆れを隠さないプチドラが、両手を腰に当ててアルマジロに声を掛ける。
『駄目、だよ! あそこはっ! ただでさえ、訪れる人もなくって……祈りを捧げられること、も、ないんだよ? ずっと、あんなところに居たら、もっと早く……きえちゃってた、よ!!』
だから、人と魔力を求めたアルマジロは、強い魔力に満ちた若者の集う、王立ダルクヴィスト貴族学院の側へと住処を移してきたのだと言う。
「そんな話は、全く聞いたことがありませんね」
疑り深く、探る視線を向けながらバルザックが言えば、アルマジロは傷付いた表情を浮かべる。
『居たよ、ずぅっと……100年よりも前、から。誰も、気付いてくれない……から、ヒントも置いたんだよ。人が気付いて、信仰してくれなきゃ……ぼくに力は満ちない、から』
けれど、本来祀られる場所から遠く離れたこの森に、まさか宝珠の化身が引っ越してきていると気付く人間もおらず、故に信仰されることもない。どころか、信仰されることを求めて人前に姿を現せば、魔獣出現だと攻撃されて、魔力も気力も消耗してしまう。そうして、信仰が廃れ、徐々に力を失い、気力も失った土の宝珠の化身は、今やその生命をも喪おうとしている。
『ぼくは……消えないために、頑張って、強い魔力に満ちた若い人間の集まるこの場所に……少しでも力を留めたくて……すごく頑張って結界を作ったんだ、よ』
森からの魔獣の侵出を防ぐために、大昔の賢者が作ったとされる魔法障壁。その実は、アルマジロの力を留めるため、彼自身が力を振り絞って展開したものだった。
そんな中、思うように信仰が集まらない現実に危機感を抱き、自身へと導くヒントを学院に置いたのだ。――だが、力の欠片に気付く者があっても、アルマジロ自身に気付く者は居なかった。
「まぁ、あのヒントで、光る塊がポロポロ見付かったなら、あれが正解だと思うわね。わたしも、ちょっとだけそう思ったし」
『紅茶の子たちに先を越されて焦ってたものねー。だからこそレーナはムキになって、他の答えを是が非でも見付けようとしたんだわねー』
肩の上でキャラキャラ笑うプチドラに、チラリと恨みがましい視線を向けたレーナだ。けれど、間違いではないので、むぐぐと口を噤むしかない。
「どうやら、アルマジロ殿の望みを我々が叶えることは出来ないようですね。とは言ったものの、先程レーナさんが仰った通り『まだ手遅れにはなってない』のです。こうして学院に在籍する私達がアルマジロ殿の存在を知れた。それは、大きな前進なのではないでしょうか」
黙り込んだレーナの代わりに、バルザックが言葉を引き継ぐ。
せめて神殿があってくれたら、まだ最高神の眷族とも言うべき宝珠の化身が『そこに居る』と認識されたであろう。また、せめてその姿が、ファルークや、ゾイヤの様に、威厳ある龍の姿であったなら。
けれど、現実はアルマジロなのだ。
丸くて、ゴツゴツして、顔がひょろっと長い、そのままのアルマジロなのだ。
『これまでもあのヒントを辿った学生の中には、光る塊を手にした子達もいたんでしょうに。それでいて大本の、土の宝珠の力を持った化身が、足元に丸まってることに思い当たらないなんてねぇ』
呆れた、と言わんばかりのプチドラだが、過去の学生らと同じく、その可能性に全く考えが及ばなかったレーナは、何も返すことが出来ない。残念ながら、レーナはシュルベルツ領で魔力と魔法についての勉強を行ってきた今でも、魔力の違いについて感じ取ることなどできないのだ。もしかすると、魔力に敏感なエドヴィンなら気付いたからしれないが、残念ながら今回の実地訓練は下位クラスから順に行われるので、彼はこの事態に気付いてはいないだろう。それに――
「仕方ないわよ。だってこの辺りで宝珠と言えば、王城にある陽の宝珠なんだもの。まさか、ここに無い宝珠の化身が現れるなんて思いもしないわ」
唇を尖らせて言うレーナに、プチドラが何かに気付いた様にハッと目を見開く。
『あぁ、それなんだけど! 陽の宝珠……学院のすぐ近くにあるはずなのに、全然気配を感じないのよね。お城から来てる、あの王子様から感じる気配もおかしいの。なぜか大気の宝珠なのよ。入学式で始めて見た時から、変だなぁって思ってたのよ』
突然の重大告白に、レーナのみならず、バルザックまでもが息を飲んだ。
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