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第3章 乙女ゲーム始動 編
第136話 【攻略対象 隠しキャラ?】突然の神託!
しおりを挟む力の大きさに強弱あれど、生まれる人間のほとんどが魔法の力を持つ世界ダンテフォール。
それでも体内に宿す魔法の元となる力――魔力を、意志のまま発動することが出来る者は多くは無い。力ある者を血縁に取り込み続けた貴族ほどその数が多く、約7割が魔法を使う。だが、平民ではぐっとその数を減らして1割にも満たない。使う魔法にしても、火炎や土壁、大滝を生み出す強力なものを使えるのは更に少なく、8割近くの大多数は爪先に灯をともし、石礫を飛ばし、匙一杯の水を造り出すに留まる。
人の持つ魔力は便宜上、宝珠になぞらえた属性で分類される。攻撃の力に優れた『火』『水』、防御の力に優れた『土』『木』、人への直接操作の力に優れた『虚』『光』の6種だ。その中でも、癒しの技を持つ『光』属性の者は稀少だった。
微弱ながらも光属性を持ち、些少の怪我なら回復を早め、痛みを和らげる魔法を発動することができる人間――それこそが、シルヴィアだ。
世が世ならば聖女と敬われていたであろう彼女は、信心深い両親によって幼い頃から教会へ通うことが習慣付けられていた。だから学園の寮で暮らすようになっても、その習慣は粛々と続けられた。
その日も、シルヴィアは、いつもの週末と同じように学院に付属している教会で、祭壇前に両膝を突き、祈りを捧げ始めた。
だが、今日ばかりは「何かが違う」と本能が告げ、微かな胸騒ぎを感じていた。
そんな彼女の予感に応えるかのように、シルヴィアの脳内に直接、姿なき者の声が響く。
―― お前は、すべての人を愛し 愛されなければならぬ ――
まろやかに喉を震わせる、男性らしい心地よい声ではあった。だが脳内を蹂躙するように、その言葉は抗いがたい暴力性をもって思考に刻み付けられた。
シルヴィアに自覚はなかったが、彼女の中で何かが明らかに――変質した。
雷に打たれたように体を跳ねさせたシルヴィアは、その場にばたりと突っ伏した。居合わせた生徒が彼女を助け起こせば、虚ろな瞳をひしと一点に向け、歪に口角を上げながら何事かを繰り返している。
「神託を……授かりました。彼のお方の意思に従わなければ……」
壊れたように何度も紡がれる言葉と、彼女の夢現な表情に、助け起こした生徒は狂信者の面影を重ねて、絶句した。だが、次の瞬間には彼女の瞳はピタリと焦点を結び、助け起こした生徒に向かってふわりとほほ笑みかけた。
「あら、助けてくださったのですね。ご親切にありがとうございます」
浮かんだ笑みは、天使もかくやと云う美しく甘やかな面持ちだ。更に、さりげなく存在を主張する、彼女の左耳の上に輝く黒曜石の蝶の髪飾りは妖艶で、清純で儚げな彼女の雰囲気と合わさることにより、危うげな魅力を作り出している。目を奪われずにはいられない美貌を前にした生徒は、先程見たものが偶然の錯覚だったのだろうと自分に言い聞かせた。
その一瞬の違和感が、何よりも正しく事象を捉えたモノではあったのだけれど――。
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