独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

文字の大きさ
141 / 237
第3章 乙女ゲーム始動 編

第142話 【攻略対象 隠しキャラ?】聖地巡礼の顛末

しおりを挟む

 黒髪の青年は、彼が掻き消した瘴気と同じく、空気に融けるように一瞬で姿を隠した。

 入れ替わる様に大きな黒い蝶が1羽現れて、ビロードの輝きを放つ羽根でひらひらと宙を舞う。全員の視線を充分に集めた蝶は、ゆっくりと空へ昇りはじめた。

「――あ、待って!」

 言うが早いか、レーナが蝶に向かって手を伸ばす。けれど指先は敢え無く空を切り、蝶は黒髪の青年と同じく空気に融けて消えた。

「何やってんだよ! 危ないだろ!! あんな得体の知れないモノに触ろうとするなんてっ」

 慌てて彼女の伸ばした手を掴んだエドヴィンだが、レーナは未だ蝶の消えた場所を思いつめた様子で見詰めている。「声が……同じ……?」と、唇だけで紡いだ彼女の言葉は、誰にも聞き取られることはなく、彼女の疑問に答える者は居ない。

 青年の出現からレーナの暴挙による一瞬の緊張感に包まれた現場。そこには、全ての異常が微塵の気配も残さず消え去り、瘴気も青年も幻だったのでは――と思えてしまうほどの平穏が訪れたのだった。






 太陽は既に大きく西に傾いている。明るく暖かな朱色の光の中、聖地巡礼は再開された。

最後シメはやっぱり、ゲームのパッケージにもなっていたお城よね!」

 先程の不可解な出来事を微塵も感じさせない、溌剌とした声が響く。開始時の高揚感溢れる笑顔そのままのレーナは、城壁に設けられた門の前に居る。

 不可思議な出来事はあったものの、結果として瘴気も黒髪の青年も、蝶も何一つ痕跡を残さずに消えてしまったのだ。だから彼女らは、早々に切り替えることにした。元気を取り戻したレーナは、今にも門の中へ飛び込んで行きそうだ。

「見物目的では入城できんぞ」

 エドヴィンが、危惧であってくれとの思いを込めつつ声を掛ければ、愕然としてレーナが振り返る。

「えぇっ! 観光で前庭だけってわけにもいかないの?」

「まさかとは思ったが……。誰もが門の内に入れては、ここに住まう王族の身が守れんだろ」

「けど、ちょっと飛び上がれば なんとかなりそーだぜ?」

 アルルクが、人外手段をさらりと持ち掛ける。

「不審者として、即、魔術師団か騎士に撃ち落とされるに決まってるだろ。ここからの眺望で我慢するんだな」

「えぇぇぇーーー! 見るだけなのぉ!? 魔法で時間毎に壁画を変化させる夜会ホールや、1本だけ柱の模様が異なる湖の見えるテラスに、王妃様が改良を重ねて作られた虹色の薔薇が咲く庭園の実物が見られないのぉぉ!?」

『それに宝珠オーブも見ておきたいんだけどぉ!?』

 ぎょっとしたのは傍のエドヴィンだけではない。門を護っていた衛兵までもが、ただならぬ発言をしたレーナと、プチドラに注目する。

「とにかく、観光や散歩で王城には入れん! 然るべき行事での招待を待て!!」

 ゲーム知識があるために、放っておいたら更に詳しすぎる内部事情を言ってしまいそうなレーナだ。焦るエドヴィンは、強引に彼女を引き離して、この日の聖地巡礼は幕を閉じたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

処理中です...