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第3章 乙女ゲーム始動 編
第144話 【攻略対象 隠しキャラ?】ヒロイン・シルヴィアの裏の顔
しおりを挟むプロムナード当日。
レーナは、この日までのシルヴィアとの遣り取りを、思い起こしていた。
「レーナさんの資料は、とても見やすいって評判なんですよ! 私も感心してるんです、すごいなぁって。私には出来ないです!」
ゲームパッケージさながらのキラキラ笑顔のシルヴィアが、ひとしきり持ち上げてくる。憧れの眼差しで褒められては、誰であれ多少なりとも嬉しくなるものだ。そんな風に気持ちが緩んだところですかさず「生徒へのアンケート」や、「校内設備や備品の確認点検」など、誰かがやらなくてはならないが、決して表に出ることの無い地味な仕事の数々を寄越してくる。
レーナは何度も生徒会室での業務を行おうとした。だがこんな風に、いつも決まって現れるシルヴィアが言葉巧みにレーナを別件に誘導し、生徒会室から遠ざけてしまう。
そして成果は、シルヴィアが生徒会へ報告している。無理を言って生徒会に所属してもらっているレーナに、面倒を掛けるわけにはいかないから――と云う名目で。
「上手く使われたもんだな。あの資料はシルヴィア嬢が作ったものだと生徒会役員はみんな認識しているぞ。こうして今、レーナから聞くまで私だってそう思っていた」
「あぁぁ……ちょっとだけそんな気はしてたよ。平凡村娘だから縁の下の力持ち的な立ち位置なのは仕方ないと思ってはいるんだけどぉぉ」
項垂れるレーナの頭を、プチドラと共によしよしと撫でながらエドヴィンは思案を巡らせる。
この日を迎えるまで、エドヴィンは生徒会室に行き、他の役員と共にプロムナードにかかる雑事を行ってはいる。けれど彼の感覚によれば、出席者名簿や式次第など、根幹に関わる部分からは遠ざけられている印象がある。
「だからシルヴィア嬢は、どこかおかしいと言っていただろ。ある日突然、明け透けに王子やバルザック先生、それにアルルクや私に擦り寄り始め、同時にレーナを貶める発言を潜ませるようになったんだ。このプロムナードで、何か仕掛けて来るやもしれん」
「分かってるよ。けど信じたくなかったなぁー……。シルヴィアさんは、いつもヒロインらしい優しい笑顔と言葉を向けて来るから、わたしを気遣ってくれてるもんだとばっかり思ってたんだもの……」
『女って怖いわねー。ヒロインちゃんってば、レーナを悪者にして自分の引き立て役にしてたのよ。思い通りにするために、手段を選ばないなんてねー』
心底うんざりと言わんばかりに、目を伏せて左右に首を振るプチドラだが、精霊姫の樹海の怪現象を引き起こした彼女にだけは言われたくないセリフだ。レーナとエドヴィンが揃って胡乱な視線を向けたのは言うまでもない。
「それでも折角巡って来たお城に入れるチャンスを、ぜぇったいに逃すつもりはないわ。だからプロムナードには参加するけどね」
『わざわざ罠に掛かりに行くわけね。まぁ……行ってくれなきゃ、あたしが泣いちゃうけどね』
「「それはだめ」」
咄嗟に出た同じ言葉に、エドヴィンとレーナは顔を見合わせる。絶叫姫の泣き声騒ぎに想いを馳せ、とんでもない事件でも意外になんとかなった経験を思い出した二人は笑顔を浮かべ、力強く頷き合った。
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