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第3章 乙女ゲーム始動 編
第146話 【攻略対象 隠しキャラ?】婚約破棄!? いや、してないし!
しおりを挟む華やかな場にそぐわぬ、鋭い声が響く。
「1年C組、レーナ嬢! 前へ出たまえ!!」
ホール最奥の壇上。そこに現れたクラウディオ王子が仁王立ちとなり、険しい表情で声を張り上げている。彼の傍らには、不安げな面持ちのシルヴィアが立ち、その数歩下がった背後には不敵に口角を上げるバルザックが腕組みをして周囲を見渡している。
「こっ……婚約破棄!?」
「そもそもレーナは、クラウディオ王子と婚約なんてしてないだろ!?」
玲於奈の記憶がとんでもない勘違いを導き出して、呟いた言葉にすかさず突っ込みが入る。「定番でしょ」とうそぶくレーナに、エドヴィンが心底あきれた視線を寄越す。そんなふざけた遣り取りをしていたお陰で、却って冷静になったレーナだ。
(王子の冷え冷えとした表情と、シルヴィアさんの庇護欲をくすぐる不安げな様子なんて……。ぜったいにヒロインを護って、悪役を退治する図式を作ろうとしてるわよね!?)
――とすれば悪役は悩まずとも分かる、レーナだ。だが、理由が分からない。いや、もとより生徒会参加を渋って、なるべく顔を出さない様にしていたから身に覚えは有りすぎる。それをシルヴィアに利用されもしたのだ。けれど、このように全学院生の集う王城で断罪するような内容かと言えば弱い気がする。
「考えても仕方ないわね。ようやくシルヴィアさんの思惑がハッキリしそうだし、ちゃちゃっと行ってスッキリして来るわ」
それを済ませたらプロムナードよりも楽しみな王城探索だと、決意を漲らせるレーナに、不安の色は無い。大股で一歩踏み出そうとしたところで、ぐん、と腕を引かれた。
「いや、ちょっとは私を頼りにしてくれても良いんじゃないのか?」
レーナを引き留めたのはエドヴィンだ。心底不満げに、エメラルドの瞳を眇めている。だが、レーナは子供と見ている彼の助力など端から当てにしていない。だから、見開いた眼をぱちくりと瞬かせた。
「やめた方がいいわよ? エドは貴族なんだから、立場ってものがあるわ。その点わたしは自由な平凡村娘だし。あなたよりずぅっとシガラミが少ないんだから」
だから、精神年齢+18歳のお姉さんに任せておきなさい。そんな気持ちを込めた、安心感を与えるつもりの言葉だった。だが、受けたエドヴィンは一瞬傷付いた表情を浮かべるも、すぐに強い意思を漲らせる瞳を向けてくる。
「私は出会ったばかりのあの頃、決めたんだ。秘密だと言って教えてくれた、レーナのヒーローになることを! 危険が迫った時、助けに来てくれる皆の憧れの存在だと、君が目を輝かせたヒーローに」
『男の人生を狂わせるなんて、断罪される悪女って感じね』
キャラキャラと笑うプチドラが、茶々をいれる。エドヴィンが、ここまで強い意思を見せて折れないことは、短くない付き合いで理解している。共に行くしかない――と諦めて溜息を吐き、エスコートしようと差し出された彼の腕に手をかけた。
甚だ面倒なことになったが、いざとなったら全ての責任がレーナ個人に向くよう、上手く誘導しなければならない。そう決意を滲ませて。
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