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第3章 乙女ゲーム始動 編
第148話 【攻略対象 隠しキャラ?】所詮わたしはモブ村娘
しおりを挟む新たに登場したのは、硬い赤髪を無造作に一括りにした幼馴染――ではなかった。
オイルを塗り込んで艶やかに整えた髪をすっきりと後ろに向かって撫で付け、引き締まった体躯を際立たせる白い細身のタキシードを纏った攻略対象アルルクだ。
「アルルク君は、王都大神殿での神託により『勇者』の加護を持つと認められている優れた人材だ。そんな彼が能力を開眼するにあたり、捲き込まれた凶事にも、レーナ嬢が関与していると聞く」
クラウディオ王子の言葉に、周囲の生徒らからザワリと、動揺と不快を表わす喧騒が生まれる。
水仕事で川へ向かったレーナに付きまとった挙句、魔族に遭遇したのを『関与』と言うならそうなのかもしれない。だが関与と言うにはあまりにレーナの意志に乏しい出来事だ。もっと適切な言葉がある気がするが、中途半端に事実が絡められているために、即座に否定することも出来ない。
それもシルヴィアの企みであるのだが、言葉の違和感に首を捻るレーナは反論のタイミングを逃している。
さらにクラウディオ王子は、レーナを追求すべく言葉を重ねる。
「レーナ嬢が災厄を引き寄せ、齎しているのは明白! 偶然巻き込まれたのが勇者であるアルルク君や、守りの魔法に長けたエドヴィン君だったからこそ、事なきを得ただけだ。そのように危険なレーナ嬢を、王国の宝であり前途ある若者らの集う学院に、このまま留め置くわけにはいかん!」
どうやらクラウディオ王子とシルヴィアは、レーナを王立ダルクヴィスト貴族学院から追い出したいらしい。或いは、雁字搦めの監視の元、不自由な学院生活を強いるつもりなのか。
(それはとっても痛いわ……。ゲーム未見の講義も楽しかったのに。何より、学院をクビになったらドリアーデ辺境伯の力を借りられなくなっちゃう)
レーナがこの世界で生きる主目的はリュザス探しだ。
ドリアーデ辺境伯がレーナの後ろ盾となり、リュザス探しに手を貸す条件として、彼の家門を汚さぬ程度の学力や知識を身に付けることが挙げられていた。平凡村娘でしかない彼女がそれを達成するために、シュルベルツ領では各種専門教師について学び、鍛練してきたし、王立ダルクヴィスト貴族学院には卒業の称号を得るために通っている。
(ただの平民としてリュザス様探しをするのは金銭、情報面で痛いわね……)
この年齢で、またしてもRe:スタートに見舞われるとは思っていなかったレーナだ。「リュザス様が遠退いちゃうわ……」とため息混じりに呟きつつガックリと肩を落とせば、虹色の蝶の髪飾りがふわりと熱を持つ。
「レーナをいじめるな!!」
突如声を張り上げたのは、壇上のアルルクだった。
「何だよ、大事なことだからって言われて来てみれば! レーナをいじめるなんてきいてねーぞ!!」
「アルルクさんにとっても、大切なことなんですよ?! 貴方はレーナさんに惑わされ、理不尽に危険な目に遭ったのです! エドヴィンさんだって、森では危険な目に遭いましたよね!? このまま側にいてはいけないんです。私が悪者になって……貴方の心を傷付けないでおこうとしているんです」
わかってください、と悲壮感溢れる涙目で訴えるシルヴィアは、誰が見ても思い遣り溢れる立派なヒロインだ。
レーナを排除する一方で、エドヴィンや、アルルクは留め置きたい。そんな彼女らの思惑がようやくハッキリとした。だから、ハーレムルートを取ろうとして邪魔になったレーナを余所にやりたいだけなのか。――と、ストンと腑に落ちると同時に、学園がどうでも良いもののように思えた。
所詮レーナは平凡村娘で、主要ストーリーには関わり無い立ち位置の存在だ。
今の展開で行けば、レーナ個人が問題視されているだけで、世話になった辺境伯や、アルルク、エドヴィンらに迷惑は掛からない。
それに、リュザス探しを出来なくなるわけではない。
(ならヒロインの思惑に乗っかっての退場も、悪くないんじゃない?)
そう思った。
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