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第3章 乙女ゲーム始動 編
第149話 【攻略対象 隠しキャラ?】爆炎の魔女レーナ?
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「レーナに謂れの無い罪を着せるとは! 彼女の才覚を見出だした我がドリアーデ家とシュルベルツを愚弄する気か!! 辺境の地を隣国より守り続ける、ドリアーデ辺境伯当主の慧眼まで疑う発言は不愉快きわまりない」
わずかに触れるだけのエスコートをしていた腕を、隣り合うレーナの腰にしっかりと回して引き寄せたエドヴィンが、怜悧な美貌に怒りをはっきりと表わして声を上げる。
「そうだ! レーナはおっちょこちょいで、考えが足りなくて、んで、とんでもないバカやることはあるけどっ。でも仲間だと思ったヤツは見捨てない、優しいレーナなんだ!!」
壇上のアルルクは、一足飛びでレーナの傍らにやって来て、エドヴィンとは逆隣に立つ。予期せず、両隣に正装した攻略対象者を従えることになったレーナは、迫り来る本物の美麗な視覚の暴力に目を白黒させるしかない。だが、自身がモブだと信じるレーナの想定外な出来事はこれで終わりではなかった。
『ぼくの恩人である、彼女に迷惑をかけるなんて……! ぼくが許さないっ!!』
地面が小刻みに揺れ、巨大アルマジロが城壁の中に姿を現したのだ。とは言え、城の中には入れない巨体だから、舞踏会ホールから繋がる広いテラスとを仕切る、大きな窓の外から中を覗き込んでいる。外には多くの衛兵が配備されていたが、突如として現れた土の宝珠の化身を見たことの無い者がほとんどで、敵か味方かも判断できずに大騒ぎとなっている。
『ここに在る宝珠よりも、今のぼくは強いよ? レーナに何かするヤツは、ぼくが許さない!』
『あんたが何かしなくたって、最高神さまが黙ってないでしょうけどねー』
アルマジロに引き続き、それまで我慢していたプチドラが耐えきれない様子でキャラキャラと笑い出す。あどけない少女型の従魔だと認識されていたソレは一頻り笑うと、ゾッとするほど鋭い光を瞳に湛え、全身からアルマジロに匹敵する魔力を発する。
レーナに害為す者は許さない。
あらゆる力在る者の、確固たる意志を乗せた圧がその場を覆い尽くし、当事者のみならず高見の見物を決め込んでいた全ての参加者をも威圧する。
見えざる力の脅迫により、静寂に包まれたホール。そこに、パンパンと手を打ち鳴らす音が響いた。
「気は済みましたか? レーナさんが害をなすと云うのは誤解です。大魔導士の加護を受け、王国魔導士長の肩書をいただく私が断言します。彼女から禍々しい魔法の気配は一切発せられていません」
顔色を無くして立ち尽くしたクラウディオ王子とシルヴィアの背後から、おもむろに踏み出してきたのはバルザックだ。
「何より森での出来事には私も居合わせましたが、今回現れたのは行きずりの『爆炎の魔女』の仕業で間違いありません。レーナさんは空を飛ぶことが出来ませんからね。あんなことができるのは、魔法の知識豊かな、神の如く微細な魔力調整をも可能とする、極めて優れた魔法の使い手で、かつ魔力も豊富な稀有な人材なのですよ!」
魔法でレーナを浮かせた自分を、これでもかと持ち上げるバルザックだ。げんなりとした視線を向ければ、悪びれない爽やかな笑顔が返ってくる。
「さて、それよりも私が気になっているのは、このような愚行を誘導したシルヴィアさんの方です。あまりに光の聖女とは掛け離れた、欺瞞に満ちた相応しくない行動。そろそろ白状してもらいましょう、お前は何者だ!」
バルザックが言い放つと同時に、攻撃魔法で砂礫の矢を射る。
矢が迫るシルヴィアは突如夢から覚めたように目を見開き、眼前に迫った攻撃魔法を愕然と見詰め――
バリン
ガラス細工の砕ける、硬質で高い音が響いた。
バルザックの放った砂礫の矢が、シルヴィアの左耳の上を掠めて、黒い蝶の髪飾りを破砕したのだ。
握り潰された黒い蝶の亡骸の様に、バラバラになって床に落ちた髪飾りから、ふわりと黒い影が立ち上る。と同時に、心地良い青年の声が響いて来る。
―― ふぅん……人だからって、侮りすぎたみたいだ ――
影は集束して形を成し、見覚えの在る姿を取った。
「リュザス様……じゃない。あの路地で瘴気を吸いとった、黒い……」
他神と言うには、推しに似すぎていて一度見ただけなのに忘れられない。
黒い色彩のリュザスもどきが、そこに顕現していた。
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