独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第4章 最高神 編

第177話 【攻略対象 最高神リュザス】黒い青年の気配

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 初夏の風が、温かく、時に熱をもって頬を撫で、背中を推す。

 レーナの想いを熱く加速させようと、この世界ダンテフォールが目論んでいるかのように。


 熱い風に押されるまま、レーナを背に乗せた赤龍アルルクが向かったのは、ベルファレア王国の南に広がる砂漠の王国メイディア。この国に近付くにつれ、ベルファレア王国の夏の暑さとは比較にならない、肌を焼く熱波が幾重にも襲い掛かって来る。

「クロ男は間違いなく宝珠全部を飲み込むつもりよ。あいつが動き出したら、あっという間に遠い距離も移動しちゃう……。きっとすぐに火と水の所にも現れるわよね」

「みゃみゃっ みーぎゃっ ぎゃぅあぅ ぎゅおぁおー」

 レーナの呟きを拾ったアルルクが、力強く翼を上下させながら返事をする。

「いや、龍のまま話されても分かんないからね!?」

「ん゛ん゛っ! あー、うん。火のファルークんとこに来んのは久しぶりだな! アイツ引き籠りだし、遊びに行ってやったらきっと喜ぶだろーな!」

 途端にはっきりとした返事が返る。

「ちょっ!?」

「あ!」

 焦るレーナの眼下には、『しまった』の4文字がハッキリと表情に現れたアルルク。そして更に遥か眼下に広がる、風紋を刻んだ黄金に輝く砂の大地だ。

「飛行中に龍化解いてどーするのよぉぉぉーーーーー!!!」

 自由落下しながらレーナが絶叫する。

 バサリ

 と、間近で羽音が響く。

 どぅ

 と、地面までまだ距離があるにも拘らず、華奢なレーナの全身は僅かな浮遊感の後、すぐに何かに行き当たる。伝わる感触は、分厚くゴツゴツした、けれど強い弾力のある塊だ。

『ひーーーーさしぶりだなぁぁぁ! ワレの小さきモノたちよ! アルルク、レーナ。歓迎するぞぉ!!』

 レーナらを背で受け止めた火龍ファルークの巨体が視界いっぱいに翻り、踊るように弾みながら大空をかける。
 これで身の安全が確保されたかと問われれば、甚だ疑問な状況ではあるが、足場が確保された実感が湧くと同時に、どっと冷たい汗が噴き出たレーナだ。目の前にキョトンとした表情で尻餅をついているアルルクに、ふつふつと怒りが湧いてくる。

「乙女ゲームのエンディングも、世界崩壊もすっ飛ばして、わたしの人生が終わるところだったわよぉぉ!!」

「結果オーライだったな!」

 屈託のない笑顔が返されて拍子抜けするレーナらを、首を逸らしたファルークが目を細めて見遣る。

『ワレのつがいらは相変わらずイキが良いなぁ!』

 さらりと放たれた言葉に「それは断固拒否したはず」との抗議をすべく口を開きかけたレーナだったが、ふいに、空気が重く澱んだ気がして言葉を飲み込んだ。

 心なしか、先程までの刺すような暑さに紛れて、肌をピリピリと逆立てる妙な冷気が漂い出した――とも感じる。

「ねぇ、アルルク……。何か変」

 口に出した時には既にアルルクも、ファルークも同様の異常を感じ取っているらしく、共に口を噤んで周囲に鋭い視線を向けている。

 ―― ふふふっ……気付いた? おっかしいなぁ、こっそり近付いて何も気付かないうちに終わらせてあげようと思ってたのに。僕の思い遣りをふいにしちゃって。かーわいそー ――

 全く気の毒に思っている様子の無い、軽々しい口調と、まろやかな声には聞き覚えがあった。

「クロおとこ! 現れたわねっ」

 未だ姿を見せない青年に苛立ちを隠しきれず、憤然と声を上げたレーナに、四方八方からクツクツ、クスクスと微かな嘲笑が響いてくる。

「ファルーク! おまえの宝珠オーブは大丈夫なのか!?」

『ワレの宝珠の周囲は、人に守られているからな』

 アルルクの問いにあっさり答えるファルーク。
 その言葉に、レーナは一瞬安堵しそうになるが、この火龍はつがい以外に興味を持たない――いや、番自身に対しても、自分の欲求を通すことが最優先で、心を砕くことに欠ける化身だ。
 それに思い至ったレーナは、焦りを滲ませてファルークに視線を合わせる。

「けどよ? その守ってる『人』って、あのクロおとこに対抗出来るような力があるの!?」

『ハッハッハァー! 何を言う! ただの人が、ワレら化身の力に抗えるはず無かろうが!!』

 心底愉快とばかりに、高らかに笑い声を響かせるファルークに、レーナの薄れかけていた嫌悪感が一気に再燃する。
 彼に好意的であったはずのアルルクでさえ、なに言ってんだと眉間に皺を寄せる。

『ワレが、あやつを倒す助力となれば本望であろう! 力を削げれば重畳。ワレがあやつに牙を届かせる足掛かりとなれたなら、あやつらは役目を全うしたと満足であろう!』

「んなわけ、ないでしょーー!!」

 記憶通りの傍若無人ぶりに、レーナは憤りも顕わな大声を上げたのだった。
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