独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第4章 最高神 編

第182話 【攻略対象 最高神リュザス】水の宝珠、飲まれる(後)

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 意気込んで声を交わして程なく、轟々と降り続ける雨に異変が起こった。

 黒い雲の立ち込める豪雨。その落ちる水滴のひとつひとつが、レーナの目の前で意思を持つように不規則な軌道を取り始めたのだ。

「なに!?」

 困惑の声を上げるレーナに、アルルクも蛇行して軌道を変え、不穏な雨の一塊ひとかたまりから逃れて飛ぼうとする。だが、不可解な動きをするかたまりは2人の傍から離れることは無い。かと言って、危害を及ぼすことも無いし、黒い青年の出現時に感じる嫌な感じはしない。

 困惑しきったレーナらを充分に焦らして、一つ所に固まった雨粒の塊がゆっくりと人の顔を象った。

「ヴォディム!?」

 ゆらゆらと揺れながらも怜悧な美貌を表わした、水で出来た顔は水の精霊王ヴォディムのものだ。

『ゾイヤが』

 レーナやアルルクを打つ激しい雨音を押しのけて、涼やかな青年の声が耳元に届く。

『ワタシを庇って……―――』

 淡々と告げられる言葉が、そこでプツリと途切れる。
 豪雨が耳障りなノイズとなって、言葉を聞こうとするレーナの邪魔をしているのか、続くヴォディムの言葉はいつまでも耳に入って来ない。

「一体、どうしたの?」

 嫌な予感も相まって、焦ったレーナが大きく声を張り上げて問い掛ければ、ヴォディムは動くことの少ない美貌の面に、明らかな苦渋の色を浮かべる。
 言葉にするのが、さも苦痛であるかのような表情に、レーナはハッと息を飲む。

『ワタシだけが、逃げおおせた』

 絞り出すような声は、彼の乏しい表情より雄弁に無念を物語る。

『水の宝珠が飲まれ、ワタシ……だけが……――』

 ヴォディムはただ無念を伝えたかったのか、それとも宝珠と共に超常の力をも失ってしまったのかのかは分からない。途切れ途切れの言葉だけを伝えて、現れた時と同じく忽然と消え去ってしまった。

 ファルーク襲撃から間を置かず、黒い青年は水の宝珠を吸収していた。
 水龍ゾイヤの尽力により、力の源を失いはしたが水の精霊王ヴォディムだけは辛うじて逃げ出すことが出来たらしい。

「一体何なのよ、あの黒男っ……! 世界中を我が物顔でひょこひょこ移動して!!」

「ぎゃう!」

「無傷な宝珠が無くなっちゃったじゃない! これじゃあ、向かう先を考え直さなきゃいけないわ……」

 レーナはグッと唇を噛み締めて思考を巡らせる。黒い青年を止め、世界の崩壊が訪れる前にリュザスに逢わなければならないのだ。だが邂逅の余韻に浸る間もなくダンテフォールが無くなってしまったのでは、たまったものではない。やはり世界は救わねばならない。最高神の力を分けた全ての宝珠、あるいは化身の力を手に入れてしまった青年に、ただの人間が対抗するのは分が悪い。

「黒男に対抗できるとしたら、きっと大元の最高神リュザス様だけよね。くっ……結局リュザス様を探さなきゃいけないんじゃない!」

 リュザスに会う為、世界を救わなければならないし、世界を救うにはリュザスに会わなければならない。結局はリュザスが鍵なのだ。だからレーナは、リュザスに逢うにはどうしたら良いのかを、うんうんと唸りながら考える。

 何処が、彼と繋がる場所なのか。

「リュザス様を祀った場所……リュザス様の声を聞く場所……最高神の声……」

「ぎゃう」

 厳めしい成獣の姿となったアルルクも、レーナの前では甘えた声で鳴く。彼は、勇者のを受けた剛の者でもあるはずなのだが、幼馴染み故の小さい姿がどうしてもちらつく放っておけない存在だ。

「そんな可愛い声で鳴いちゃって。あなただってれっきとした勇者の神託を授かってるんだけどねー……んん? 神託?」

 しかもそれを授かることが出来るのは、最高神リュザスを祀る神殿の頂点である王都大神殿のみだ。

「ぁああああーー! ひょっとしなくても、灯台下暗しってやつよね!?」

 神託、それこそが神の声なのではと、ようやく思い至ったレーナだ。
 一層激しさを増した雨が打ち付ける中、レーナとアルルクは目的地を変え、王都大神殿のあるベルファレア王国へ進路をとった。
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