独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

文字の大きさ
180 / 237
第4章 最高神 編

第182話 【攻略対象 最高神リュザス】水の宝珠、飲まれる(後)

しおりを挟む

 意気込んで声を交わして程なく、轟々と降り続ける雨に異変が起こった。

 黒い雲の立ち込める豪雨。その落ちる水滴のひとつひとつが、レーナの目の前で意思を持つように不規則な軌道を取り始めたのだ。

「なに!?」

 困惑の声を上げるレーナに、アルルクも蛇行して軌道を変え、不穏な雨の一塊ひとかたまりから逃れて飛ぼうとする。だが、不可解な動きをするかたまりは2人の傍から離れることは無い。かと言って、危害を及ぼすことも無いし、黒い青年の出現時に感じる嫌な感じはしない。

 困惑しきったレーナらを充分に焦らして、一つ所に固まった雨粒の塊がゆっくりと人の顔を象った。

「ヴォディム!?」

 ゆらゆらと揺れながらも怜悧な美貌を表わした、水で出来た顔は水の精霊王ヴォディムのものだ。

『ゾイヤが』

 レーナやアルルクを打つ激しい雨音を押しのけて、涼やかな青年の声が耳元に届く。

『ワタシを庇って……―――』

 淡々と告げられる言葉が、そこでプツリと途切れる。
 豪雨が耳障りなノイズとなって、言葉を聞こうとするレーナの邪魔をしているのか、続くヴォディムの言葉はいつまでも耳に入って来ない。

「一体、どうしたの?」

 嫌な予感も相まって、焦ったレーナが大きく声を張り上げて問い掛ければ、ヴォディムは動くことの少ない美貌の面に、明らかな苦渋の色を浮かべる。
 言葉にするのが、さも苦痛であるかのような表情に、レーナはハッと息を飲む。

『ワタシだけが、逃げおおせた』

 絞り出すような声は、彼の乏しい表情より雄弁に無念を物語る。

『水の宝珠が飲まれ、ワタシ……だけが……――』

 ヴォディムはただ無念を伝えたかったのか、それとも宝珠と共に超常の力をも失ってしまったのかのかは分からない。途切れ途切れの言葉だけを伝えて、現れた時と同じく忽然と消え去ってしまった。

 ファルーク襲撃から間を置かず、黒い青年は水の宝珠を吸収していた。
 水龍ゾイヤの尽力により、力の源を失いはしたが水の精霊王ヴォディムだけは辛うじて逃げ出すことが出来たらしい。

「一体何なのよ、あの黒男っ……! 世界中を我が物顔でひょこひょこ移動して!!」

「ぎゃう!」

「無傷な宝珠が無くなっちゃったじゃない! これじゃあ、向かう先を考え直さなきゃいけないわ……」

 レーナはグッと唇を噛み締めて思考を巡らせる。黒い青年を止め、世界の崩壊が訪れる前にリュザスに逢わなければならないのだ。だが邂逅の余韻に浸る間もなくダンテフォールが無くなってしまったのでは、たまったものではない。やはり世界は救わねばならない。最高神の力を分けた全ての宝珠、あるいは化身の力を手に入れてしまった青年に、ただの人間が対抗するのは分が悪い。

「黒男に対抗できるとしたら、きっと大元の最高神リュザス様だけよね。くっ……結局リュザス様を探さなきゃいけないんじゃない!」

 リュザスに会う為、世界を救わなければならないし、世界を救うにはリュザスに会わなければならない。結局はリュザスが鍵なのだ。だからレーナは、リュザスに逢うにはどうしたら良いのかを、うんうんと唸りながら考える。

 何処が、彼と繋がる場所なのか。

「リュザス様を祀った場所……リュザス様の声を聞く場所……最高神の声……」

「ぎゃう」

 厳めしい成獣の姿となったアルルクも、レーナの前では甘えた声で鳴く。彼は、勇者のを受けた剛の者でもあるはずなのだが、幼馴染み故の小さい姿がどうしてもちらつく放っておけない存在だ。

「そんな可愛い声で鳴いちゃって。あなただってれっきとした勇者の神託を授かってるんだけどねー……んん? 神託?」

 しかもそれを授かることが出来るのは、最高神リュザスを祀る神殿の頂点である王都大神殿のみだ。

「ぁああああーー! ひょっとしなくても、灯台下暗しってやつよね!?」

 神託、それこそが神の声なのではと、ようやく思い至ったレーナだ。
 一層激しさを増した雨が打ち付ける中、レーナとアルルクは目的地を変え、王都大神殿のあるベルファレア王国へ進路をとった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

処理中です...