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第4章 最高神 編
第189話 【攻略対象 最高神リュザス】尽くすのが推し活の醍醐味だから
しおりを挟む脱兎のごとくその場から駆け出したレーナではあった。だが、残念ながら彼女を取り巻く空間は、リュザスの個人的異空間だ。目に見えるリュザスから物理的に距離を取ったつもりでも、彼の手の中でしかない。
「なんで逃げるのさー。照れなくてもいいのに。レーナの望むことなら、どんなワガママだって僕が叶えちゃうんだから。ね?」
無駄に華々しくも美麗な笑顔が、ずいずいと迫ってくる。どこまで逃げても。隠れられる場所もない。
「そうじゃないの! それだと良心が痛むんだってば!! わたしばっかりに利があることしか頼めないから、無理!」
既にリュザスの望む『一途な想い』とやらは、蛙化で絶賛小康状態だ。大きな声で『推し』とリュザスを語れるかも怪しい。
「えー? 僕はそれでも良いんだけどな。いっぱいワガママを聞かせて? 僕を頼って、僕に甘えて?」
「一方的に甘えて頼るなんて、対等な関係じゃないでしょ!? 推しにだって、グッズを買ったり、人に薦めたりして尽くすのが醍醐味なんだからっ」
繰り返すが、それより何より、すでにリュザスは推しではないかもしれない。――とは、さすがに申し訳なさと、恐ろしさで言うことは出来ないが。
「構わないよ。そのまま僕なしでは居られなくなると良い」
蛙化したとはいえ、人では有り得ないレベルの美形から、さらりと、堕とす気MAXな気障なセリフをぶつけられては、冷静ではいられない。
瞬時に、頭の血液が沸騰したと思える熱に襲われたレーナは「ぎゃーーー!?!?」と、今世一番の叫びを上げて再び当所の無い逃走を図ったのだった。
虚無の空間をひた走り、虹色に輝く美神の気配を感じなくなったところで、レーナは膝を抱えてしゃがみ込んだ。可能な限り身を縮めて、一応の隠遁を図ったつもりである。白一色の空間での悪足掻きではあるが、ひとまず気持ちを落ち着かせることのできたレーナは、ようやく落ち着いて考えを巡らせはじめた。
世界の崩壊を防ぐために黒男を止めなければならない。
宝珠、あるいは化身が彼に取り込まれ、そのせいで地上に与えられていた「大気」「火」「水」「森」「陽」「土」の恩恵が失われつつあるのだから。
出来る事なら、黒男が取り込んだ力を元の宝珠らへ還したい。
ただそれが叶ったとしても、他者から絶対的な信奉や想いを得なければ、弱ってしまう彼らだ。力の返還が、十全な力を取り戻すことと同義にはならない。延命措置に過ぎないのだ。
ゲームの各ルートで見た、世界の崩壊を防ぎきれない不穏漂うエンディングは、念願叶って最高神リュザスとの邂逅を果たした今も回避できてはいない。
いや、むしろ―――
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