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第4章 最高神 編
第217話 【攻略対象 平凡村娘】最高神は遊興を後悔する
しおりを挟む―― はぁ? ……は、ははは。……っ、何だって言うんだよ!? 狡すぎるだろ!? こんなの ――
ポツンと空中に浮かんだ黒い青年が、額に右手を圧し当てて虚しく笑う。
辺り一面を黒く埋め尽くしていた、魔族と魔獣の群れも今はない。隆起し、裂けて崩れた大地の上に立つのは、人間と、それに味方した化身だけだ。
「だよね? 僕って何でも出来ちゃうんだよ。嫌になっちゃうよね」
たった今、何百もの存在を無慈悲に掻き消したとは思えないほど、涼やかな微笑を湛えた最高神が、3柱の化身と協力者を背にして黒い青年に対峙する。
その両腕には、力なく手足を投げ出して目を瞑るレーナか抱かれている。
―― そうやって、澄ました顔でっ……僕の命懸けの足掻きを、喜劇でも眺めるようにしてるんだっ ――
「うん。愉しんでた。けど今それを、とぉっても後悔してるとこ」
壊れ物に触れるように優しく、物憂げな瞳を向けつつ愛しげに、レーナの額に唇を寄せる。だが蒼白な顔は微かな反応も返さず、力の抜けた腕は、指先さえもピクリとも動かない。
―― なんだよ、それ……。人間が一人、動かなくなっただけでそこまで気に掛けるなんておかしいだろ!? 思い遣りのあるフリなんて、今更……。それで僕たちへの仕打ちが消えるとでも思ってるんじゃないだろうな!! ――
「君たちにやったことは、僕なりの優しさだよ? 無かったことにする必要なんて無いんだけど?」
―― 創っておいて、弄んで、飽きるまで残酷な仕打ちを続けて! それが優しさだって!? ふざけるな!! ――
激昂しつつも、悲痛な叫びを上げる黒い青年が、リュザスに向かって真っすぐに降下して来る。纏った瘴気を剣の形に変えてリュザスに迫る。
悲壮感溢れる表情で大きく剣を振り上げる青年を、微動だにせず見詰めるリュザスは、あと僅かで攻撃が届くといったところで、心底鬱陶し気に溜息を吐いた。
「ねぇ。君ってホントに、僕そっくりだよね? 身勝手で、弱くて、我儘で、依存したがりで。僕に成り代わりたいって言うから、様子を見てたのに。あれは僕の真似をするってことだったわけ?」
瘴気の剣が、真っ直ぐリュザスの眉間目掛けて突き出される。
「だったらもう君は不要だ。この世界に、僕と同じものは必要ないから」
―― なに、を ――
青年が言い終わる間もなく、リュザスが細く吐息を浴びせると、眼前の剣は見る間に形を無くして崩れ去る。剣の形を失い、黒い靄と化した瘴気も見る間に無色に変化し、浄化されて行く。
剣を無くした青年は、自身の色までもが失われて行くのを、愕然とした表情で見続けながら、ついには地面にどさりと落下した。
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