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第4章 最高神 編
第221話 【攻略対象 平凡村娘】組み合わせられるなら、分離も出来るはず!
しおりを挟むリュザスは、世界の存続を願って群れを消したのではない。レーナを手に入れるために上っ面の危機を退けただけなのだ。それをレーナは良く分かっている。だからこそ、口先だけでの助力の申し出を断り続けてきたのにと憤慨するレーナに、リュザスはキョトンと目を丸くする。
リュザスの両肩に置いた両腕を突っ張らせて渾身の力を込め、今度こそ彼の腕から逃れた。
「世界を構成してきた、全ての宝珠の力は戻っていないのよ。まだ世界は救われていないわ」
エドヴィンやアルルクらの立つ傍に降り立ち、浮かぶリュザスを見上げて宣言する。
ヴォディムの傍らには未だ、あの口やかましいゾイヤの姿はない。細やかなチェーンで彼の首に掛けたガラス玉の中、満たされた水に頼りなげに浮かぶ青い玉が在るだけ。
豆ドラや豆マジロは、通常の姿を失ったまま。
大気の宝珠は、レーナに自覚はないが、吸収し尽くして消滅させてしまったまま。
ファルークは、宝珠もろとも青年に飲み込まれて消えたまま。
陽の宝珠は―――
「あれ? クロ男はどうなったの!? 確か陽の宝珠の化身だって言ってたわよね?」
見回したレーナの視界の片隅に、蹲る黒い青年が映った。両腕が肩ほどまで消えており、徐々にその先も消滅を進めているようだ。
「ちょ、リュザス! クロ男が……陽の宝珠の化身が消えそうっ! 助けなきゃ!!」
声を上げるレーナに、リュザスは「やっと大人しくなったのにぃ?」と不満も露に唇を尖らせる。
―― その男は、自分の望みを叶えるためになら手段を選ばない、傲慢で冷酷なエゴイストだ。世界の全てが失われるとしても、望みのもの以外にはまるで興味が無いんだ ――
黒い青年が苦悶に顔を歪めながら訴える。
「うるさいよ」
言うなり、リュザスが黒い青年に人差し指をツイと向ける。
「だめだって!!」
咄嗟にレーナが黒い青年に覆い被さり、リュザスは慌てた様子で向けた手を引っ込める。
「何すんだよレーナ、危ないだろ!? 君に何かあったら、僕はもう存在する気力を喪ってしまうんだから!!」
「だったら、無情なことをしなければ良いだけでしょ! わたしは、世界を守りたいの。クロ男は陽の宝珠の化身だよね。だから救わなきゃ!」
宝珠全ての存在と力を取り戻し、世界を真の意味で崩壊から救って、エンディング以降の世界を生きるのが、今のレーナの望みなのだ。最高神への信奉を失った人間に絶望して、人の世界の存続を望まなくなったリュザスを支える為にも、彼の分身であり、人の暮らしを身近に支える宝珠や化身の存在は必要だ。
「けど、放っておいてもじきにソレは消えるよ? 僕が使ったのは、瘴気を消し去る浄化だ。ソレは、力を付けるために、手っ取り早く蓄えられる瘴気を使ってたからね。
それに、僕はゲームでヒロインの聖女が世界を救うために、浄化を放ったのを再現したんだ。試練攻略を頑張るレーナの意志を尊重したんだよ」
「リュザスのためにも、消えさせるわけにはいかないわ。宝珠や化身たちを元に戻して欲しいの。今の世界が崩壊しないために」
「それは無理かな。僕は創り出すことは出来ても、戻すことはできないんだもん。だから世界を壊さない様に、僕の力を分けて宝珠にしたんだよ。レーナが言うなら新しいのを創るよ」
それが良い、と晴れやかな笑顔を見せる最高神にレーナは唇をギュッと噛み締める。
(どうしても、元には戻せないの? ヴォディムのゾイヤも、新しく創ったんじゃあ違うものになってしまうって言ってた。
力が増しても、知り合った皆が消えて、別の何かになるのなんて悲しすぎる。
けど、プチドラちゃんや、アルマジロみたいに、力が及ばないところは人間も協力して、永らえさせることも出来るはず)
ならば、弱っていたとしても、元の化身や宝珠の欠片さえ残っていれば、なんとか出来るのではないだろうか―――?
ふと、思い至ったレーナは豆ドラを見詰める。豆ドラは、プチドラから分離させた同一意思を持つ子機が、さらに生命維持超省略状態となって安定した状態だ。
プチドラは、レーナが精霊姫の髪と、精霊姫の樹海の木の根から修繕で創り出した。
(――だったら!)
組み合わせて修繕出来るなら、その逆で混ざったモノを分離することも出来るのではないだろうか。分離して、消滅しない様、今度こそ民衆の信奉を集めて彼らの力を復活させる。
レーナには、それが唯一の方策であり、この世界に残された光明に思えた。
「リュザス、わたしはこの世界を助けるために全力を尽くすから」
宣言して、蹲る黒い青年の背に両手を当て、修繕の力――それを逆流させるように行使した。
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