【短編集】おとなし男子の悪役転生!ヒロインとか興味ないので筋トレしてたら、恋愛フラグが乱立してたみたいです。

弥生ちえ

文字の大きさ
17 / 17
4.ヒロインとか興味ないので筋トレしてたのに、呪物な3箱が届いたんですが。

俺を置き去りにして、攻略対象ヒロインらが何か物騒な会話をしている!

しおりを挟む

「その無礼者を摘まみ出せ!!」

 凛とした声が響く。

 俺の周りに吹き荒れていた強風はいつの間にか止み、周囲の景色も一変していた。どうやらあの『王族箱』に仕込まれていたのは転移の魔法陣だったらしい。

 俺が摘まみ出されるのか!? と、咄嗟に身構えたが違っていたようだ。

「離せ!! 話せばわかるっ、この格好には事情がっ……、貴様ら男子垂涎のシチュエーションを知らんのか!?」

『あああ』の騒ぎ立てる声に振り向けば、両脇から騎士に吊り上げられた奴の姿が目に入った。極太の真っ青な縦結びリボンを首元にだけ残し、腰の辺りで破けた、派手な包装紙さながらの水色の煌びやかなローブを纏った奴――その下には、何も着けられてはいない。

 ふらふら、プラプラさせながら、艶やかに磨き上げられた大理石の床を引き摺られて行く姿は、衣服には包まれてはいないが、哀愁には包まれている。周囲が豪華だからこそ一層。

 そう、俺と箱たちは一瞬のうちに王城の一室へと転移させられていた。


「ふむ、怪我はないようだな。あまり心配をかけてくれるな」

 予想通り俺の目の前に現れたのは、いつも通り学友を――ではなく、少女漫画の如く細く見目麗キラキラしい護衛騎士らを引き連れたクリスティアナ姫だ。学園内では学園長に次いで高い地位を持ち、学園生ながら風紀と規律の番人の役割も担う彼女は、当然ながらこの王国の由緒正しい姫君だ。

「聖女ユリーナから話は聞き及んでいる。なんでもバレンタインの贈り物を拾得物だと警邏隊へ届けてしまうとか」

 扇で口元を隠し、くつくつと笑う姿も麗しい。

「んもぉ、内緒なのに何で話しちゃうんですかぁ!」

『くしゃみ箱』がパカリと開いて、中から平民聖女ユリアーナが出て来た。両腰に左右の握り拳を当てて、ぷっくりと頬を膨らませている。

「バレンタインに貴女自身を贈って警邏隊に突き返されたのに、ホワイトデーで性懲りもなく同じことを繰り返す貴女もどうかと思いますわよ」

『生足箱』の蓋がパカリと開いて、魔術師団長の娘ソルドレイドの顔が覗く。いつの間にか箱の両サイドから生腕までが生えている。

「今回は贈ったんじゃなくって、ホワイトデーのお返しを受け取りに行ったんですぅ~!」

「抜け駆けはずるいですわ。筋肉逞しいヒロイキ様に、貴女だけ抱えられるだなんてズルい……はしたないですわ!!」

「けれど結局2人だけでは、ヒロイキに受け取らせられなかったのだがな。ふっ、お前たちのやり方では詰めが甘いのだよ」

 俺を置き去りにして、攻略対象ヒロインらが何か物騒な会話をしている!

 なんだ!? 今回の一件は、ヒロイン総出で俺を悪役の道に推し進めようとする世界の強制力だったのか!? 冗談じゃない!!

 俺は脱兎のごとく駆け出した。

 ついこの前の、王妃に成り代わった3分間の全力疾走で、城内の多少の様子は分かるつもりだ。って云うか、分からなくとも逃げる!! 悪役堕ちルート直結の、破滅フラグを立てられるワケにはいかない!

 ヒロイン達の声が更に俺を追い掛けてくる。

 俺の『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』悪役生活はまだまだ続く。気を抜けば、廊下の向こうからプラプラさせながら猛ダッシュで追って来る主人公に断罪されて僻地の強制収容所送りになるか、男娼に堕とされるか……とにかくゲーム通りならロクでもない未来が待ち受けている!!

 事あるごとにゲーム補正が働く日常生活を無事に過ごす事が出来るのか!?





 俺の穏やかな筋トレライフの破滅フラグ回避生活は、終わらない。






《完》
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
恋愛
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

処理中です...