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第三章 文化体育発表会編
最終学年だから、ユリアン程の行動に出ないまでも、それなりに焦っているわけよ。
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久し振りの『神殿』の単語に、ちらりと、ムルキャン暴走の切っ掛けになったのではないかとさえ思える気怠げな大神殿主の姿を思い出した。
「ちなみに神殿の参拝者が増えているって云う情報は、業務が大変になっているって大神殿主からのSOSですか?」
「そうだな。だが、そんなもの放っておくさ。あいつがしっかり仕事すれば良いだけの話だ。」
おぉーう。切って捨てるような言い方をしたギリムは、とってもイイ笑顔だ。
そうね、ギリムがここに居るのは大神殿主がサボりまくってきた仕事を普通にさせるためなんだものね。
「それでね、セレネにも聞いてもらえたらって思うんだけど。」
スバルは、神殿の騒動は知らない。だけど、ギリムの反応になにかを察したのか苦笑する。
「わたしで良ければいくらでもお伺いしますよ。それで?バジリスクの時とはよく似ているんですか?」
スバルとギリムは困惑したように顔を見合わせる。
「いや、むしろ逆なんだ。だから私たちも悩んでしまってね。」
「今は、魔物の目撃が増えている。公爵領もしかりで、いつもに無い数の魔物が現れている。」
「けどバジリスクの時は、魔物の目撃が減っていたんだ。あの時は、バジリスクが現れる数年前から、魔物を見かけることが極端に減って、多くの人たちが魔法素材を採取しに森へ行くことが増えていてね。一時的に樹海付近の小さな村や町は潤ったんだけど、そこで騒ぎが起こって。採取のために人も沢山集まっていたものだから被害も大きかったんだ。」
だから領主であるエクリプス辺境伯は、自らは勿論のこと、一族や私兵、志願兵、冒険者、傭兵までもを交えた大々的な兵団を編成して、魔物の討伐を行ったのよね。その大所帯の中にこっそり紛れていたまだ幼さの残るご令嬢スバル・エクリプスが八面六臂の活躍を見せたと、当時はそりゃあ大騒ぎだったわ。
「最近は、今まで魔物の目撃例のない市街地に出現している。ただ、現れる頭数も1頭2頭と云ったところで、スタンピードの様に、生息地から大量発生の末に溢れ出てきた訳でもない。ただ、魔物の生息地である森や湖、草原はかつてないほど魔力を含んだ植物や鉱物が多く獲れているらしい。」
「魔力を含んだ植物や鉱物の豊作、その点だけは昔と共通しているんだ。」
「豊作になって、人が魔物の生息地へ入り込むようになったから、魔物が出て来た・とか?警告か、もしかしたら人を栄養源と見なす魔物が、獲物を追う様に人里まで出て来たとかかしらね?」
うーん。土台このメンバーじゃあ、どれだけ話し合ったところで空想や想像の域を出ない話しか出来ないよね?神殿司、騎士爵なんてすごい肩書がある2人だけど、誰も魔物の生態なんて詳しくないんだもん。
そのまま3人で考え込んだけど、結局結論は出なかった。
学園の授業は、文化体育発表会の開催が来月末に決まったことにより、それに向けての特別プログラムへと内容が移行した。例えば、音楽は舞台発表を目的とした歌劇の演目決めになったり、歴史学はフージュ王国年代史を幾つかのグループに分かれて掲示発表出来る様、取り纏めの方針や、紙面構成についての話し合いが行われた。また、体術や剣術は発表会当日に学年別トーナメント戦が行われることになっている事もあり、出場予定の令息達はいつも以上に気合の入った練習を行っていた。
わたしも体術や剣術がやりたかったのだけれど、それは入学当初からヘリオスをはじめとした家族にきつく止められている。お陰で騎士団でのデジレとの対決では、剣技らしいものが全く出来ないへっぽこぶりを披露する羽目になったんだよね。
そして今は歴史学のフージュ王国年代史作成にかかるグループでの話し合いを行っている。ちなみにグループは、今日の着席場所で決められたので、わたし、スバル、ギリムの3人になった。ハイスペックな2人と一緒で、心強くて有り難い。
「フージュ王国の年代史で、どこを切り取って纏めても良いのなら、建国期なんてどう?この王国が歴史に初めてその名前を刻んだ時をまとめてみるの!掲示順は絶対にトップバッターになるし、たくさんの人の目に触れられる、良い機会だと思うわ。」
掴みが肝心!有望なお婿さん獲得への一手にしたいのよ。これでもわたしは最終学年だから、ユリアン程の行動に出ないまでも、それなりに焦っているわけよ。
「建国期か、ならば神殿の知識のある俺が力になれるな。」
「それは頼もしいな、確かに王国創生に関わる女神を祀った神殿に仕えるマイアロフ殿が、共に取り組んでくれるのならこんなに頼もしいことはない。私はセレネが決めることなら何でも賛成だよ。面白くならないわけがないからね。」
にっこり。と、スバル。
えっとぉ、わたし普通に課題をやろうとしているだけよ?わたしが何かやらかす事と信じて疑わないそのセリフはどうかと思うけど?
「なら、フージュ王国の建国期で決まりね!」
わたしたち3人はフージュ王国が、この地に建国した理由や経緯などの成り立ちを、神話や古史を紐解きながら調べることにした。
「ちなみに神殿の参拝者が増えているって云う情報は、業務が大変になっているって大神殿主からのSOSですか?」
「そうだな。だが、そんなもの放っておくさ。あいつがしっかり仕事すれば良いだけの話だ。」
おぉーう。切って捨てるような言い方をしたギリムは、とってもイイ笑顔だ。
そうね、ギリムがここに居るのは大神殿主がサボりまくってきた仕事を普通にさせるためなんだものね。
「それでね、セレネにも聞いてもらえたらって思うんだけど。」
スバルは、神殿の騒動は知らない。だけど、ギリムの反応になにかを察したのか苦笑する。
「わたしで良ければいくらでもお伺いしますよ。それで?バジリスクの時とはよく似ているんですか?」
スバルとギリムは困惑したように顔を見合わせる。
「いや、むしろ逆なんだ。だから私たちも悩んでしまってね。」
「今は、魔物の目撃が増えている。公爵領もしかりで、いつもに無い数の魔物が現れている。」
「けどバジリスクの時は、魔物の目撃が減っていたんだ。あの時は、バジリスクが現れる数年前から、魔物を見かけることが極端に減って、多くの人たちが魔法素材を採取しに森へ行くことが増えていてね。一時的に樹海付近の小さな村や町は潤ったんだけど、そこで騒ぎが起こって。採取のために人も沢山集まっていたものだから被害も大きかったんだ。」
だから領主であるエクリプス辺境伯は、自らは勿論のこと、一族や私兵、志願兵、冒険者、傭兵までもを交えた大々的な兵団を編成して、魔物の討伐を行ったのよね。その大所帯の中にこっそり紛れていたまだ幼さの残るご令嬢スバル・エクリプスが八面六臂の活躍を見せたと、当時はそりゃあ大騒ぎだったわ。
「最近は、今まで魔物の目撃例のない市街地に出現している。ただ、現れる頭数も1頭2頭と云ったところで、スタンピードの様に、生息地から大量発生の末に溢れ出てきた訳でもない。ただ、魔物の生息地である森や湖、草原はかつてないほど魔力を含んだ植物や鉱物が多く獲れているらしい。」
「魔力を含んだ植物や鉱物の豊作、その点だけは昔と共通しているんだ。」
「豊作になって、人が魔物の生息地へ入り込むようになったから、魔物が出て来た・とか?警告か、もしかしたら人を栄養源と見なす魔物が、獲物を追う様に人里まで出て来たとかかしらね?」
うーん。土台このメンバーじゃあ、どれだけ話し合ったところで空想や想像の域を出ない話しか出来ないよね?神殿司、騎士爵なんてすごい肩書がある2人だけど、誰も魔物の生態なんて詳しくないんだもん。
そのまま3人で考え込んだけど、結局結論は出なかった。
学園の授業は、文化体育発表会の開催が来月末に決まったことにより、それに向けての特別プログラムへと内容が移行した。例えば、音楽は舞台発表を目的とした歌劇の演目決めになったり、歴史学はフージュ王国年代史を幾つかのグループに分かれて掲示発表出来る様、取り纏めの方針や、紙面構成についての話し合いが行われた。また、体術や剣術は発表会当日に学年別トーナメント戦が行われることになっている事もあり、出場予定の令息達はいつも以上に気合の入った練習を行っていた。
わたしも体術や剣術がやりたかったのだけれど、それは入学当初からヘリオスをはじめとした家族にきつく止められている。お陰で騎士団でのデジレとの対決では、剣技らしいものが全く出来ないへっぽこぶりを披露する羽目になったんだよね。
そして今は歴史学のフージュ王国年代史作成にかかるグループでの話し合いを行っている。ちなみにグループは、今日の着席場所で決められたので、わたし、スバル、ギリムの3人になった。ハイスペックな2人と一緒で、心強くて有り難い。
「フージュ王国の年代史で、どこを切り取って纏めても良いのなら、建国期なんてどう?この王国が歴史に初めてその名前を刻んだ時をまとめてみるの!掲示順は絶対にトップバッターになるし、たくさんの人の目に触れられる、良い機会だと思うわ。」
掴みが肝心!有望なお婿さん獲得への一手にしたいのよ。これでもわたしは最終学年だから、ユリアン程の行動に出ないまでも、それなりに焦っているわけよ。
「建国期か、ならば神殿の知識のある俺が力になれるな。」
「それは頼もしいな、確かに王国創生に関わる女神を祀った神殿に仕えるマイアロフ殿が、共に取り組んでくれるのならこんなに頼もしいことはない。私はセレネが決めることなら何でも賛成だよ。面白くならないわけがないからね。」
にっこり。と、スバル。
えっとぉ、わたし普通に課題をやろうとしているだけよ?わたしが何かやらかす事と信じて疑わないそのセリフはどうかと思うけど?
「なら、フージュ王国の建国期で決まりね!」
わたしたち3人はフージュ王国が、この地に建国した理由や経緯などの成り立ちを、神話や古史を紐解きながら調べることにした。
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