【完結】女神が『かぐや姫』なんて! ~ 愛され令嬢は実利主義!理想の婿を追い求めたら、王国の救世主になりました~

弥生ちえ

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第三章 文化体育発表会編

再び無理やりくだくだと悩む元になってしまう爆弾を投下されたと―――さすがに気付いた。

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「ウソでしょ!?子猫ちゃんをフッちゃったのぉ?」
「待って!そうじゃなくって、こんなトコで話す事でもなくって‥‥っだぁもぉー!」

 ポリンドに詰め寄られたハディスが、焦れたように頭をかきむしる。けどまぁ、わたしとしては色々自分の思い上がりとかを思い知って落ち込んだりもしたけど、それはもう良い。だからハディスがまだ何か言い募ろうとするのを「お気遣いは要りませんよ。」ときれいな令嬢スマイルで押し留められるくらいには、割り切る事が出来ている。
 それより伝えたいことがある。

「そんなことはもうどうでもいいんです!わたし見たんですよ!凄いです!世界は‥‥黒い魔力で満ち溢れているんですね!」
「え、待って!どうでも良くないから。僕が思ってるのと全然ちがく伝わってるからっ。それに世界に満ち溢れるのは普通は『素敵なこと』とかじゃないのぉ!?」
「何を仰ってるんですか?ポリンド講師と見ましたもん!間違いなく峻嶺の中や周囲は黒い魔力があちこちに溢れていて、こんな穏やかなのが嘘みたいな邪悪さでした!世間ってわたしが思うよりも闇が深いんですよ。」

 初めて見る事が出来たこの王国の空からのアングルに、テンション爆上がりだったわたしの言葉は止まらない。最近は特に課題を通してこの国の地形に興味を持っていたから、まさかこんなにも早く望みが実現するとは思ってもみなかった。

「突っ込みどころ満載ねぇー。カッコつけようとして、すれ違ってるパターンね。焦れるんじゃなくて馬鹿馬鹿しくなるわ。」
「桜の君にはこのままでお過ごしいただければ私は満足です。赤いのはこのまま見守れば自滅しそうですから。」

 わたしとハディスを、疲れた表情のポリンドと、良い笑顔のオルフェンズが見守る。何となく不穏な会話をしている気がするのは気にしないでおこう。まぁ、それはともかく。

「ポリンド講師!さっき見たことをレポートにまとめてもいいでしょうか?!」
「いいよー。」

 想像以上に軽い感じで即座に返された返事に、おぉ、これで歴史学の課題に新たな成果が付け加えられる!と、喜んでいたのに‥‥。ポリンドがすかさず「ただし。」とピシャリと言って人差し指を突きつける。

「提出先は国王陛下だよ。地形の事とか、黒い魔力溜まりとかについて書くつもりでしょ?そんなの、この国のウイークポイントとか国防の問題に直結してくるんだもん、学園の発表会で軽ーく発表されると困るんだけどぉ?けど、黒い魔力の在り処と分布については、王家こちらとしても興味あるし放っておけないから、今日見た内容はレポートにして提出ね。提出先は歌劇練習の時に、私に頂戴。陛下あにうえに子猫ちゃんからの報告書ですって、ちゃんと渡しておくから。」
「えぇー!?折角の歴史学課題の内容充実が図れるネタだと思ったのに、横暴ですー!どんっと目立つ発表をして、より良い条件のお婿さん候補を獲得したいんですよ、わたしは!」

 ぐっと拳を握り締めて文化体育発表会における意気込みを力強く宣言すると、ポリンドは半眼でわたしと、側の護衛ズをチラチラ見遣ってから溜息を吐く。

「今更どこかの人並み以上でしかないご令息が現れたところで、その2人が居る限り、子猫ちゃんの側に居付くのは難しいと思うけどぉー?並々ならぬ執着とスペックの持ち主なんて、敵に回したくなんて無いわー。」
「わたしの護衛が、わたしのお婿さんの敵になるわけ無いじゃないですか。それにその頃にはハディス様は契約が切れるんですから、そもそも会うこともないでしょう?」

 護衛の2人がとてもすごい人で、男爵令嬢でしかないわたしの傍にいてくれるのが稀有なことは理解している。

「だから、2人はわたしに関わり続けるような勿体無いことはしちゃいけないんです。期間限定で、力を貸していただける凄い人たちに感謝することはあっても、それ以上は求めません。」

 言いながら、微かにつきりと胸の奥が痛んだのは気にしちゃいけない。

「いや、だからはっきり言うけど護衛に留まる気はないからね。どこまでいけるかは、まぁ、覚悟しておいて?」

 ポリンドとの会話にスルリと割り込んで、何事も無い様な澄ました表情で言い置いたハディスは、最後に目が合うとにやりと笑う。

「は‥‥?」

 わたしとしては、フられて傷ついた気持ちがありつつ、現実的に婿に成り得ない相手への想いを断ち切れると安心すらしていた。フラれたと思うことで安心していたかった。だからこそ、その話を蒸し返さないように、他の話題をわざわざポリンドへ持ち掛けたりもしていたのに。
 再び無理やりくだくだと悩む元になってしまう爆弾を投下されたと―――さすがに気付いた。





 月見の宴は晩餐会の部へと移っていた。滞りなく進行されたわけではなかったが、暴れる青龍の姿に恐れ戦く貴族達に向かって国王が「慈悲深き癒しの魔力を我々にもたらしてくれる生き物である神器の龍が、我々を傷つけなどしないことは常識だろう。」と泰然とした態度で構えていたため、特段の混乱は起きなかった。

 ただ、その晩餐の場には、体調不良を理由に席を辞した王弟ポセイリンドだけでなく、王弟ハディアベス、ならびに継承者オルフェンズを始め、数人の人物が居なくなっていた。と言うのも、危害を加えないはずの龍に驚き、一部の者が混乱をきたしたため、神器の継承者が優れた能力を発揮して事態の収拾を買って出てくれたからだ‥‥と、王は告げた。
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