【完結】女神が『かぐや姫』なんて! ~ 愛され令嬢は実利主義!理想の婿を追い求めたら、王国の救世主になりました~

弥生ちえ

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第三章 文化体育発表会編

大人しいはずのメリリアンの瞳孔が開ききっているわ!?あぁ、ほらユリアンまでドン引きしてるじゃない。

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 ユリアンは、食い入るようにハディスの上着ジャケットの地模様になっている『有翼の獅子』を見て数度目を瞬かせると、信じられないものを見る様にわたしに視線を移す。

「なによ貴女!ガチ中のガチじゃない!やばっ‥‥。コスプレにしたってそれは無いわー。」
「れっ‥‥レパード様、そのような物言いは良くありませんわ!」

 顔を歪めてドン引きした様子のユリアンを、メリリアンが窘める。何となく、違和感のある反応‥‥?

「だって、いくら良い男で見せびらかしたくたって、王族コスプレはまずいでしょ?!王子もいるんだから。玉の輿狙いのあたしだってそこまで病んで無いわよー!貴女も生徒会長だし、最高学年なんだからそんな遊びばっかりしてんじゃないわよ。」

 びしり、と指差されて注意された。ユリアンに。

「レパード様っ!先輩に向かってそのように乱暴で不遜な物言いはいけません!先輩には先輩の事情があるんですよっ!」

 清楚な後輩令嬢メリリアンには、思わぬところで気を使われた。
 気が遠くなりかけたところで、側から諸悪の根源の忍び笑いが聞こえてくる。そして、2人が痛ましいものを見る目を向けているわたしの頬のすぐ傍に顔を寄せて注目を奪い、おどけた様子で自分の口元に一本だけ立てた人差し指を当ててみせる。

「僕とセレネとの秘密だから、皆には内緒だよ?」

 内緒なら何でこれ見よがしに堂々と『有翼の獅子』模様なんてあからさまな王族の証付きの服なんて着てるんでしょうねー。しかもこんな風に距離感が近すぎるから、いつもは友好的だったご令息の皆さんも気を遣うのか、態度がおかしいのよ。ここのところ、わたしたちの姿が見えた途端、青い顔をしていそいそと立ち去っていくご令息の後ろ姿ばかり見ている気がするもの。

「ハディス様?レパード様、ジアルフィー様?ちょっと勘違いがあるようだから言っておきますけど、わたし、至って健全に学園生生活を送ろうとしているんですからね?間違っても後ろめたいこととか、恥になるようなことは一切してませんし、するつもりもありませんから!」
「分かっておりますわ!バンブリア生徒会長は流行を創り出すお方ですもの。今回のこともその一環ですのよね!少しだけ乙女の闇を見るような趣向だとは思いますがそれもまた一興ですのね。乙女の心に刺さる萌え‥‥高鳴りも華やぎも無い上に問題ばかり起こる政略的婚約者関係で干乾びた心に、甘露の水が染み渡る心地良さですわ。ごちそうさまです!」

 大人しいはずのメリリアンの瞳孔が開ききっているわ!?あぁ、ほらユリアンまでドン引きしてるじゃない。って言うか、メリリアンはカインザとの婚約関係をそんな風に思ってたのね。

「レパード様が現れてからのカインザ様は、これまで以上に愚鈍でふわふわして‥‥ほんとに、驚く程どうしようもない状態になられて。アポロニウス王子にも発破を掛けられる事になったにもかかわらず、まだそれに気付いてくださらなくって。それならいっそ、離れたら良いのかなって思ったんです。そしたらあの騒ぎで‥‥。」

 思う以上に深―――い溜息が、悩まし気に頬に片手を添えたメリリアンの口から漏れる。

「ほんとに、あたしもなんでカインザ様があんな軟弱になっちゃったのかワケ分かんないわ。せっかく靡いてくれたんなら、出世が見込めるイイオトコでいてくれたら良いのにねー。だから、あたしも他の優良物件をまだまだ探さなきゃいけないワケよ!貴女みたいに従者に王族コスプレさせて遊んでる時間は無いワケよ!」

 散々だな。カインザ。

「お前たち‥‥まさかそんな事を考えてたのか‥‥‥。」

 急に聞こえてきた震える声に、正面に立つメリリアンとユリアンがギクリと肩を揺らす。
 わたしと、必要以上の至近距離に寄り添っていたハディスが、塞いでいた2人の視界から逸れる様に身体をずらすと、丁度わたしたちの背後から近付いて来ていたオルフェンズと、その左手で襟首を猫の様に背後から掴まれたカインザが、呆然とした様子で表情無く目を見開いている姿が現れた。

「オルフェ、ありがとう。貴方にしか出来ない事だったから、ホーマーズ様をこっそり連れて来る様に、無理を言ってしまって御免なさい。助かったわ。」
「桜の君の頼みなら、屑をひとつ運ぶくらい何でもありませんよ。」

 そう、わたしはここへメリリアンと共にユリアンを引っ張って来る時に、オルフェには隠遁を使ってこっそりとカインザを連れて来て話を聞かせる様に頼んでいたのだ。ハディスとわたしは、姿の見えないカインザに2人が気付かないように注意を引きつつ、本音を引き出させる役割を担って、迷走する青少年カインザ更生のためのちょっとしたお節介をしてみたのだった。
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