【完結】女神が『かぐや姫』なんて! ~ 愛され令嬢は実利主義!理想の婿を追い求めたら、王国の救世主になりました~

弥生ちえ

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第三章 文化体育発表会編

令息の婿入り候補として値踏みされるんなら望むところなんだけど、ハディスが出てくるのは何か違うよね!?

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『かぐや姫が愛を貫いたら人類存亡の危機を回避して王国を造っちゃいました!女神とよばれて溺愛されてます!  ~帝と5人の貴公子の献身は少女を女神へと導く~』

 女神が「かぐや姫」なんて、一体いつ誰が決めたのだろうか?ただの女の子だった彼女が女神と称えられるまでに起こった出来事を、ここに記し考察する。

 ―――建国期の調査パネルにわたしたちが纏めたのは、簡潔に言えばこのような内容だ。

 今も引き継がれる神器の継承者の様に、特異で巨大な魔力を持つ5人の貴公子に手を差し伸べられ、それを束ねた一人の令嬢「かぐや姫」と帝たちは、地上を跋扈していた魔物達を大掛かりな魔術で滅ぼして、安全を手に入れたこの地にフージュ王国を興した。その魔術は、かぐや姫と共に描かれる月からも力を得るもので、大きすぎる威力で地表を抉り、土砂を巻き上げ、王国の周囲を取り囲む峻嶺を創り出した。月も失った力の分だけ小さくなった。
 しかし地上を救った魔術は、かぐや姫を儚くしてしまい、悔やんだ帝はその功績を称えて彼女が女神となって月へ昇ったと後世へ伝えた。神格化された「かぐや姫」は今の世も変わらず女神として王国中から愛されている。

 ―――そんな風に、事実と、そこから導き出される推測とを交えて、公にできない事柄もさらりと加えてパネルに仕上げた。

「若者受けしそうなタイトルで、下級生たちもワクワクしながら歴史学に触れられる面白い趣向だと思うよ。さすがセレネだね。」
「スバルやマイアロフ様が助けてくれたお陰よ。わたしだけだときっともっと暴走したと思うもの。」

『愛憎渦巻く建国期』のキーワードは、渋々涙を飲んで割愛したわ。だって、ギリムが凄く不本意そうで何か言おうとするのに、護衛ズに圧をかけられて口出しできなくなっているのが気の毒だったもの。共闘するうちにドロドロとした何かがあってもおかしくはないとは思うんだけど、そこはまぁ、乙女の妄想に留めることにしたわ。

「集めてくれた資料も的確で良かったと思うよ。バンブリア商会のセレネのところの商隊の方々に協力してもらえて本当に助かったよ。」
「カヒナシ領にスバルと一緒に迎えに行った商隊が、ちょうどエウレアからの山越えルートを通る事になっていたから、歌劇の衣装生地の注文と一緒に化石採取も頼んでおいたのよ。商隊の皆さんが何故か『商会の将来の為ですから』なんて大げさなことを言って手伝ってくださったの。」

 そして王国を取り囲む俊嶺が、青龍の背中から目にした光景で、王城を中心として綺麗な円を描く超巨大クレーターだと云うことはハッキリと分かった。つまり、この国を襲った隕石落下や大きな爆発の様なものの痕跡だと言うことだ。資料として峻嶺が地表の土が抉れた結果出来たものである証明に、平野にしかない植生の名残として、高山帯の地層から出た植物化石を実例としてあげておいたわ。

「あぁ、バンブリア商会の方々の言わんとする意味は分かるけど‥‥それってつまりセレネのお婿さん獲得とかにかかってるんだろうけど‥‥。なかなかそれは‥‥うーん。」

 ばっさりと物を言うスバルが珍しく口ごもってるわ。何で?

 こてり、と首を傾げると、講義室に居た何人かの令息が「ふぅぁっ」なんて奇声を上げるのが耳に入ったけど、すぐにわたしの側の扉の向こうからゾクリとする何かが漂って、声を上げた令息たちは慌てて顔を背けたり、講義室から駆け出したりした。

 うん‥‥これは、ハディスとオルフェンズの殺気ね。そうね、スバルが口ごもった原因が分かったかも。




「月から力を得たとは、どうしてそんなことが分ったのかね。」
「残念ながら、確証ではなく、推測なのですが。ここに資料として提示しました神殿の壁画や国王直轄のこの学園図書館所蔵の古書、絵巻物の写しをご覧ください。」

 来賓の立派な身なりの大人相手に、自分達のパネルをプレゼンする。各パネルには時間を決めてそれぞれのグループから説明員を1人は置くことになっているのだ。

 今はわたしの担当時間で、プレゼンはわたしの得意分野!何も問題はないはずなんだけど‥‥。

「いや、有難う。興味深い研究結果だったよ、閣下に宜しく。」
「さすが閣下の見込まれたご令嬢だね。」
「あのお方に目をかけてもらってるからって、いい気にならないでくださいまし。けど、おつむの中身は認めてあげてもよくてよ。」

 ギリムやスバル担当の時間は令嬢令息や父兄が満遍なく立ち止まるらしいんだけど、わたしの担当時間だけは何やらおかしな客層が来る。反応は様々なんだけと、共通しているのは「わたし」を値踏みするような視線と、ハディスに係る一言。
 いや、どこかの家督継承の可能性もない三男以下の、計算が出来て、トークが上手く、頭の回転が速くて、愛嬌のある顔立ちの―――そんな令息の婿入り候補として値踏みされるんなら望むところなんだけど、ハディスが出てくるのは何か違うよね!?

「ハディス様!?わたしの婿探しの妨げになりますから、そんな服装で傍に張り付くのは止めてくださいねっ?営業妨害、婚活妨害ですよ!」
「えぇーっ、護衛らしい適正距離で見守っているだけだよぉ?悪い買い手が付かないように目を光らせてるんじゃないかー。」
「どこの世界にそんな恐れ多い図柄の刺繡付きジャケットを着て、由緒ありげな剣まで腰に佩いた護衛が居るんですか!手頃な感じの令息が一人も寄って来ないじゃないですかっ。」
「寄せるつもりはないからねー。」
「んなっ!?」

 やられた――――!!
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