【完結】女神が『かぐや姫』なんて! ~ 愛され令嬢は実利主義!理想の婿を追い求めたら、王国の救世主になりました~

弥生ちえ

文字の大きさ
257 / 385
第四章 女神降臨編

いざ登城。念には念を入れた変装をしているつもり。

しおりを挟む
 ギリムから、ミワロマイレが国王からの召集を受けた事に伴って、しばらく神殿と救護院の仕事をすることになると聞いていたわたしは焦った。召集の期日は分からないけど、既にハディスや王子が王城に詰めているから、そんなに日は無いんだろうってことは簡単に想像出来たから。
 けど、すぐに召集に応じられたら学園のあるわたしが着いて行けないじゃない!

 だから、わたしは仕事熱心ワーカホリックなところのあるギリムに、思い付く限りの生徒会会計の仕事を詰め込んで、週末までの足留めを計った。

「調整ですわ。それにあの資料は生徒会でちゃんと使いますから無駄な作業ではないですよ。」

 今着ている巫女服に似合うように、優雅に笑って見せると、ギリムは眉間の皺を深くする。

「くっ‥‥召集の事をうっかり話した、俺の落ち度か。」

 心底口惜しそうに項垂れるギリムは、この一週間本当に頑張ってくれた。生徒会会計は、ギリムが休学するということで業務の滞りを心配したけど、しばらく安泰だ。

「それにしても、学園はちゃんと行くんだな。サボろうという考えがないのは破廉恥娘にしては意外だったぞ。」

 静かに悔しがるギリムに苦笑を向けつつ、ミワロマイレが本当に意外だという風に言う。いや、どんな素行不良だと思われてるの、心外な。

「本職じゃないですから、一週間まるまる大神殿主に着いて行ってバレない自信はありませんもの。なら本来の身分の学生の領分はしっかり果たして、学園の休日に絞って潜入する方が合理的じゃないですか?」
「なるほど。」

 納得の表情を浮かべたミワロマイレに、ギリムが顰めっ面を向ける。

「いや、大神殿主‥‥凄い事を言ってる風だが、結構なワガママで俺たちが振り回されているだけだ。単にバンブリア嬢の都合に合わさせられただけだからな?!」
「はっ‥‥!?なるほど。」

 気付いたのね。結構早かったわね、さすがギリム。

「まあまあ、結果的にそうだったってだけですよ。今日は引き継ぎを少ししたら登城するんでしょ?時間は限られてますよ。わたしに構わずお早くどうぞ?」
「それすらもバンブリア嬢の都合にしか聞こえんのは気のせいか‥‥、まあ良い。」

 どのみち引き継ぎはするしかないしな、とため息混じりに呟いたギリムは、ミワロマイレと登城前最後の引き継ぎを行ったのだった。




 確かにハディスは言ったわ、王弟と騎士の両方の立場での仕事があって、決まりじゃないけど遅からず行くことになりそうだって。それでオルフェンズはハディスに向かって、自分は何のしがらみも無くて、ずっとわたしの側に付いているから、何の危惧も無く離れて良いって言ったのよね。

 なのに2人揃って居なくなってるってどう云うことよ!?

 登城し、外と城内を繋ぐ巨大な扉を前に、ミワロマイレを先頭にした神殿からの一行が並んで開門を待つ。わたしは長身のミワロマイレの真後ろを陣取らせてもらい、ヴェールを頭からすっぽり被った巫女装束で念には念を入れた変装をしているつもりだ。

 この中にハディスが居るはず、そしてこの前は、入れるはずなのに入れてもらえなかった‥‥。
 そう思いつつ入り口を見上げていたから、向ける視線が苦々しくなっても仕方ないと思うのよ。

「破廉恥娘、抑えろ。お前の感情で何か色々漏れ出てるぞ。」
「えぇぇ‥‥。」

 そんな、締まりのない言い様をされるとなんかこう、悪いモノや、見られて恥ずかしいモノが出てるみたいに聞こえるからやめてー。けどちょっと平常心になったかも。うん、わたしは今はただの巫女なのよ。薄情なハディスやオルフェの事は頭の隅に追いやっておくわー!

「休日に絞ったのは正解だったな。」

 笑いをこらえながら言ったのはどう云う意味!?くぅぅっ、漏れ出る何かが塞げてないのね。




 謁見の間に通されたわたしたちは、そこで国王を待つ間、イシケナル公爵の代理として登城している男と侍従の少年と居合わせることとなった。

 まずいわ、ついこの間カヒナシ領に行ってイシケナルからドレスを贈られて目立ちに目立ったせいで現地での宿泊中、暗殺者がひっきりなしに訪問して来る羽目になったのよね。だからわたしは、絶対に目立ってたと思うのよ。イシケナル大好きな人たちの集まる彼の側近だったら、この代理の人がわたしの事を知ってる可能性が高いんじゃないかしら‥‥。まずいわ、来てすぐに王族にも会わずに顔ばれの事態は避けたいんだけど。

 ちらちらカヒナシの使者を注視しながら、頭をすっぽりと覆ったヴェールを引っ張って顔が隠れるように調節していると、使者ではなく、侍従の方がこちらを見てギクリと身体を強張らせる。

「ほう?破廉恥娘 精神スピリッツ は家族全体に引き継がれているのかのぉ?」

 愉し気なミワロマイレの呟きが聞こえて来た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...