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「影野詩季さん。釈放です。・・・申し訳なかった」

刑務所を出る時、刑務官が謝ってきた。
でも俺はそんなのどうでも良かった。刑務所を出ても玲架はいないし、やりたいこともない。
両親はいないし、よくしてくれていた玲架の親も一度だけ、刑務所に来てくれたけど二度と顔を見せないでくれと言われている。



「・・・玲架・・・・俺、どうしたらいいかなぁ」

冬の透き通る青空を見上げてとりあえずあてもなく歩き出した。






影野が釈放されてから2時間後、刑務所の前に一台のタクシーが止まった。
タクシーから飛び降り様に2人の男女が刑務官に駆け寄った。



「あ、あの!詩季くん。影野詩季くんは釈放されたでしょうか!」
「私達、詩季くんの身元引受人になったんです!」
鬼気迫る2人の男女は刑務官に書類を見せながら詰め寄った。


「落ち着いてください。確認しますから」
刑務官は書類を確認し、何処かへ電話をかけた。

「お待たせしました。影野詩季さんは既に釈放されてます。」
「えっ!いつ、何時ごろですか!」
男は刑務官に再び詰め寄った。
「2時間ほど前です。」

「2時間・・・」
「詩季くん・・・・」




男女は待たせていたタクシーに戻り、周辺を探したが影野を見つけることは出来なかった。





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