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「・・・、玲架。・・ただいま」

あてもなく歩いていたつもりだったけど、俺の脚は玲架が死んだ大椚の下に向かっていた。
大椚に寄りかかって木漏れ日を浴びながら小さく声に出した。









俺はそのまま陽が沈んでも大椚に背を預けて玲架の事を思い出していた。
小さい頃からずっと一緒で、近所の猛犬に悪戯して追いかけられて怖かったことや、川遊びで玲架が溺れかけて、助けたくて飛び込んだけど結局2人とも大人に助けてもらって、俺は悔しくて学校の先生に水泳を教えてください!ってお願いしたこと、両親が帰って来なくなって玲架の両親に引き取られて一緒に住む事になって色々あったこと。



「どうして・・・」

最後に想うのは何故、玲架が殺されなくてはいけなかったのかという事だった。
ここに来るまでに見たテレビに真犯人の犯行動機が語られていた。

真犯人曰く、玲架とは相思相愛で奪われたくないから殺した。
そう、犯人は主張しているそうで、でもその番組の調べでは2人に接点はなく、真犯人の妄想であり、真犯人が捕まった理由も、他の女性へのストーカー行為と殺人未遂で逮捕されて取り調べ中に真犯人が玲架への殺人の事を喋ったから。


「玲架、俺はこれからどうしたらいいか・・・わかんないや」


俺は膝を抱え夜の帳が俺を包みこんだ。














その日の夜は特に冷え込む夜で、詩季の意識はそのまま戻ることはなく、翌日の昼頃、玲架の両親が冷たくなった詩季を発見した。
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