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おまけ
◇ ◇ おまけ ◇ ◇
「やはりこうなったか…」
これは王様と王妃の会話。王陛下は処分された息子の報告を見てそう嘆息しました。
あっ、私、王妃ですわ。
「当然です、上級貴族の才能のあるお嬢さんを選んで、何年も教育をして王太子妃、そこから経験を積んで王妃ですよ。
下級貴族の娘が一年弱、死ぬ気で頑張ったところでどうにかなるものではありません。
ましてあの娘、アイリスと言いましたか?
死ぬ気でどころか少し厳しくするだけでいじめられていると泣き出す始末。
アングもさすがにまずいと思ったのか、厳しくしていたようですが、そうしたら『私たちの愛は偽物だったのね。わかれる』とか始まったんですよ。
婚約は撤回できないと言っておいたのに全く理解していないんです」
私は額に手をあてて首を振りました。
「当然だろうよ、王だの王妃だの、仕事と考えても大変すぎる。
まともな神経を持っていたらなりたいなどと思わんよ」
「残念ながらアングもそれが分からないタイプだったみたいですね」
責任の重さを理解していないから、王様が素晴らしいとか、王妃がうらやましいとか言えるんですよ。
陛下と呼ばれる身分になったところでなんでも好きにできるはずなんかないじゃありませんか。
本当に大変なんですよ。
『国』というのは生き物です。
国は自分が生きるためになら容赦のない生き物で、王であろうと、王妃であろうと、簡単に犠牲にするものです。
国を支えられない者は潰れるしかないのです。
であれば、今の段階であれらが脱落したのは幸せだったかもしれませんね。
アングは『僕は王様になる人間なんだ。こんな事はおかしい』と泣きながら前線に送られていきました。
王族籍は剥奪されて、前線で戦うのに必要な『騎士』の称号は与えましたけど、それも王族の務め。
きっと一兵卒の方が楽だったはず。
あの子はスポイルされるべきだったのでしょうけど、親としては悲しいものがあります。なんであんな子に育ってしまったのか…
「まったく、なんであんな風に育ってしまったのか…まるで、夢だけを見て現実を見ていないようなありさまだ」
陛下がそう言いました。
ピンと来ました。
「ああ。あの子は陛下に似ているんですね…いえ、王家の血でしょうか」
「え? うそ?」
ぷっ、陛下の顔!
「だって、陛下、子供のころ『僕は勇者だー』とか言って、お城中の壺を破壊して回られたじゃないですか?
あの時本当に自分のことを勇者だと思ってましたよね?
そして壺を壊せば中からお宝が出てくると思ってましたよね?」
そういう物語が流行っていたんですよ。
陛下が『うぐう』とかいって黙られました。
「それを言うなら、あやつの恋愛脳はそなたに似たのであろう?
儂は覚えておるぞ、そなた物語に出てくる主人公に入れあげて、このキャラクターと結婚するから王家に嫁ぐのは嫌だと、ずいぶん抵抗したではないか。
押しグッズとやらであふれかえったそなたの私室を見たとき、儂はめまいを覚えたぞ」
しばし沈黙、そして見つめあう私たち。
「「はーーーーーーーーっ」」
同時にため息が出ました。
確かに言われてみればその通りですね。
恋愛脳で虚構と現実の区別がつかないのは…確かに親に似ているかも。
「しかし、いやー、そんなのの割に儂等ってまともじゃよね」
ふむ、と私は考えます。
「兄殿下のおかげですね」
ここでいう兄殿下というのは陛下のお兄様の事ですね。
あの方も『真実の愛』というものを見つけて、さんざん周りを振り回した人でした。
すぐに思い出さなかったのはあの方が『王妃』の位を欲しがらなかったせいでしょう。
自分たちならなんの問題もないと、駆け落ちしてしまったんですよね。
それきり消息不明。
今どうしているのやら。
「ああっ! なるほど、確かに、あの兄を見ていたからわしらは目を覚まして現実に帰ってこられたんだな。
反面教師ってやつか!」
それでちょっと気になったのです。
「ねえ、ソウメイはどうしてる?」
私はアングのすぐ下の弟。ソウメイの事を侍従に聞いた。
やっぱりふわふわした子で、ちょっと心配だったんだけど…
「ソウメイ様ですが、急に『このままでは!』とか申しまして、勉強に励んでおられるようでございます」
「「やっぱり…」」
分かりやすい見本があると違うということですのね。
やはり人間は現実を知らねば成長できないということなのかしら。
「よし、こうなったらうち(王家)の馬鹿どもの事を伝記として正確に残すことにしよう。そしていずれ生まれてくる孫たちには幼いころから教訓を与えるようにしよう」
陛下が決断をしましたわ。
アングは脱落してしまったけど、歴史的反面教師として歴史に名を残すことにはなったわけです。せめてもの慰めでしょう。
この時陛下が決断した『古今教訓集』は、王家のみならず愚かな貴族の説話集となり、我が国の情操教育の教本として長く愛用されることになります。
アングよ、そなたの存在は無駄ではなかったわ。
王族としての義務を果たしたと言えるでしょう。
えらいえらい。
「やはりこうなったか…」
これは王様と王妃の会話。王陛下は処分された息子の報告を見てそう嘆息しました。
あっ、私、王妃ですわ。
「当然です、上級貴族の才能のあるお嬢さんを選んで、何年も教育をして王太子妃、そこから経験を積んで王妃ですよ。
下級貴族の娘が一年弱、死ぬ気で頑張ったところでどうにかなるものではありません。
ましてあの娘、アイリスと言いましたか?
死ぬ気でどころか少し厳しくするだけでいじめられていると泣き出す始末。
アングもさすがにまずいと思ったのか、厳しくしていたようですが、そうしたら『私たちの愛は偽物だったのね。わかれる』とか始まったんですよ。
婚約は撤回できないと言っておいたのに全く理解していないんです」
私は額に手をあてて首を振りました。
「当然だろうよ、王だの王妃だの、仕事と考えても大変すぎる。
まともな神経を持っていたらなりたいなどと思わんよ」
「残念ながらアングもそれが分からないタイプだったみたいですね」
責任の重さを理解していないから、王様が素晴らしいとか、王妃がうらやましいとか言えるんですよ。
陛下と呼ばれる身分になったところでなんでも好きにできるはずなんかないじゃありませんか。
本当に大変なんですよ。
『国』というのは生き物です。
国は自分が生きるためになら容赦のない生き物で、王であろうと、王妃であろうと、簡単に犠牲にするものです。
国を支えられない者は潰れるしかないのです。
であれば、今の段階であれらが脱落したのは幸せだったかもしれませんね。
アングは『僕は王様になる人間なんだ。こんな事はおかしい』と泣きながら前線に送られていきました。
王族籍は剥奪されて、前線で戦うのに必要な『騎士』の称号は与えましたけど、それも王族の務め。
きっと一兵卒の方が楽だったはず。
あの子はスポイルされるべきだったのでしょうけど、親としては悲しいものがあります。なんであんな子に育ってしまったのか…
「まったく、なんであんな風に育ってしまったのか…まるで、夢だけを見て現実を見ていないようなありさまだ」
陛下がそう言いました。
ピンと来ました。
「ああ。あの子は陛下に似ているんですね…いえ、王家の血でしょうか」
「え? うそ?」
ぷっ、陛下の顔!
「だって、陛下、子供のころ『僕は勇者だー』とか言って、お城中の壺を破壊して回られたじゃないですか?
あの時本当に自分のことを勇者だと思ってましたよね?
そして壺を壊せば中からお宝が出てくると思ってましたよね?」
そういう物語が流行っていたんですよ。
陛下が『うぐう』とかいって黙られました。
「それを言うなら、あやつの恋愛脳はそなたに似たのであろう?
儂は覚えておるぞ、そなた物語に出てくる主人公に入れあげて、このキャラクターと結婚するから王家に嫁ぐのは嫌だと、ずいぶん抵抗したではないか。
押しグッズとやらであふれかえったそなたの私室を見たとき、儂はめまいを覚えたぞ」
しばし沈黙、そして見つめあう私たち。
「「はーーーーーーーーっ」」
同時にため息が出ました。
確かに言われてみればその通りですね。
恋愛脳で虚構と現実の区別がつかないのは…確かに親に似ているかも。
「しかし、いやー、そんなのの割に儂等ってまともじゃよね」
ふむ、と私は考えます。
「兄殿下のおかげですね」
ここでいう兄殿下というのは陛下のお兄様の事ですね。
あの方も『真実の愛』というものを見つけて、さんざん周りを振り回した人でした。
すぐに思い出さなかったのはあの方が『王妃』の位を欲しがらなかったせいでしょう。
自分たちならなんの問題もないと、駆け落ちしてしまったんですよね。
それきり消息不明。
今どうしているのやら。
「ああっ! なるほど、確かに、あの兄を見ていたからわしらは目を覚まして現実に帰ってこられたんだな。
反面教師ってやつか!」
それでちょっと気になったのです。
「ねえ、ソウメイはどうしてる?」
私はアングのすぐ下の弟。ソウメイの事を侍従に聞いた。
やっぱりふわふわした子で、ちょっと心配だったんだけど…
「ソウメイ様ですが、急に『このままでは!』とか申しまして、勉強に励んでおられるようでございます」
「「やっぱり…」」
分かりやすい見本があると違うということですのね。
やはり人間は現実を知らねば成長できないということなのかしら。
「よし、こうなったらうち(王家)の馬鹿どもの事を伝記として正確に残すことにしよう。そしていずれ生まれてくる孫たちには幼いころから教訓を与えるようにしよう」
陛下が決断をしましたわ。
アングは脱落してしまったけど、歴史的反面教師として歴史に名を残すことにはなったわけです。せめてもの慰めでしょう。
この時陛下が決断した『古今教訓集』は、王家のみならず愚かな貴族の説話集となり、我が国の情操教育の教本として長く愛用されることになります。
アングよ、そなたの存在は無駄ではなかったわ。
王族としての義務を果たしたと言えるでしょう。
えらいえらい。
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