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1章 魔法剣士

21話 角倉宗七

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 俺と清音はのんびり旅をする。
 俺は暇があると刀に直接力を乗せる練習を続けている。
 最初は小さな力しか乗せられなかった。
 今では、実戦に使える大きさの力を乗せられる。
 旅の休憩ついでの清音の剣術指導は、俺も少しは上達したと思いたい。
 今では目で清音の動きを終えるようになっている。
 見えているだけで反応はできないが・・・
 旅に出て3日目、川に通りかかる。
 清音は水浴びをするために道を外れて上流に向かう。
 彼女は寒くても水浴びは欠かせないらしい。
 彼女は仮面を取り、服を脱ぐと水に入る。
 俺は焚火の準備をする。
 すると清音は俺に
 「つなも水浴びしないの。」
 「後から入るよ。」
俺は答えながら火をおこす。
 そして、水浴びを始める。
 寒いが、清音の顔と裸を拝めるチャンスである。
 俺たちは、水から上がると焚火で暖を取る。
 夕方になり寝る場所を決めると陣を張る。
 俺たちは木の上で眠る。
 4日目、扶桑に行く商人と出会う。
 商人は、人用と荷物用の2台の牛車を使い6人の護衛がついている。
 ちょうど昼で、俺たちは商人に食事に招かれる
 「私は、扶桑で角倉すみくらを営んでいる角倉宗七むねしちと言います。」
 「俺は熊野つなで魔法剣士をしています。」
俺は木札を見せる
 「上級の魔法剣士ですか、素晴らしいです。」
宗七は俺を褒めると清音を見て聞く
 「こちらのお嬢さんは。」
 「私は、柏森の清音、剣士をしている。」
清音は木札を見せる
 「あなたは腕が立ちそうですね。」
宗七は言う。
 俺は彼に聞く
 「忌み人を差別しないのですか。」
 「そのように対応することもあります、世間体がありますから。」
 「本音は違うのですね。」
 「例えば清音さんは腕が立つ、たくさんの角をお持ちでしょ。」
 「はい、あります。」
 「なら、つながりを作っておけば私の所に角を売りに来てくれるかもしれない。」
 「そうですね。」
 「いいお客さんになりそうですから。」
宗七は根っからの商売人である。
 俺たちは昼食の礼を言い、扶桑に着いたら訪れる約束をする。
 宗七たちは先に行く。
 俺たちは、しばらく剣術の練習をする。
 夕方になり寝る場所を決め、陣を張る。
 俺たちは木の上で寝ることにする。
 500メートル位先に焚火の灯りが見える。
 宗七たちかもしれない。
 夜中、俺は人の叫び声で目が覚める。
 清音も目を覚ましている。
 清音は俺に言う
 「襲われているわ、どうする。」
化け物の数が多ければ助けに行った俺たちも巻き込まれることになる。
 俺は宗七なら助けたいと思う
 「助けよう。」
俺たちは焚火の灯りに向かって走る。
 近づくと見覚えのある牛車が2台見えてくる。
 周りには一つ目の群れがいる俺は刀の刀身を力で伸ばし後ろから一つ目を10匹切り捨てる。
 清音が俺の作った群れの穴に飛び込み牛車に近づく。
 護衛はすでに2人がやられている。
 俺は牛車を囲む一つ目を刀身を伸ばした刀で切っていく。
 一つ目は突然の飛び入りに統制が取れていない。
 俺は刀を横に振り回すだけで一つ目は数を減らしていく。
 清音は傷ついた護衛を守りながら一つ目を切り捨てていく。
 一つ目は清音を取り囲もうとするが、彼女は巧みに場所を変えて戦う。
 彼女はすれ違いざまに一つ目を切り、前に出た一つ目を袈裟切りにする。
 清音の後ろから一つ目が襲い掛かるが、彼女は後ろに目があるかのように避けて、その背中を切る。
 戦いが終わった時、57体の一つ目が地面に転がっている。
 宗七が牛車から出てくる。
 彼は俺たちを見て
 「つなさんと清音さんでしたか、ありがとうございます。」
 「つながりがさっそく役に立ちましたね。」
 「もうだめかと思いましたわ。」
 「俺もこれだけの数の一つ目を相手にするのは初めてです。」
護衛は6人のうち3人が命を落とす。
 残りの3人も傷だらけだ。
 宗七は俺たちに扶桑までの護衛を頼む。
 依頼料は金貨8枚である。
 清音によると破格の代金らしい。
 代わりに倒した57体の一つ目の角の権利は宗七のものとなる。
 たぶん、57本の角で元が取れるのだろう。
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