上 下
22 / 244
1章 魔法剣士

22話 豪商角倉

しおりを挟む
 俺と清音は、角倉宗七の護衛をすることになる。
 護衛の3人はケガで牛車の中で寝ている。
 俺と清音は牛車に乗らずに歩く。
 牛車はゆっくりなので歩いてついていける。
 途中、川を渡るが清音は水浴びを我慢している。
 そして夕方になり、適当な開けたところを見つけ野営することになる。
 俺は牛車の周りに陣を張る。
 宗七は珍しそうに見ている。
 俺は宗七に説明する。
 「これは陣と言うもので化け物から守ってくれる。」
 「初めて聞きます。」
 「俺が考え出したものだからな。」
俺はうそをつく
 「誰にもできますか。」
 「修行次第でできるかもしれない。」
 「そうですか。」
 「この技術を売れば儲けになるのですが。」
彼は商売人である。
 宗七は焚火をしようとするが清音が止める。
 灯りに化け物が寄ってくるのである。
 こうして、5日目の日は暮れていく。
 それから3日間は平穏に過ぎる。
 俺たちは食事が豪華になり満足である。
 9日目の野営の時の夜中、俺は地響きで目が覚める。
 清音も目を覚まし、宗七も牛車から降りてくる。
 しばらくすると地響きの主が現れる。
 赤鬼は俺たちの陣の周りを探っている。
 その時、牛が鳴く。
 俺たちの居場所がばれる。
 俺と清音は刀を抜き陣の外へ出る。
 清音が赤鬼の前に立ちけん制する。
 俺は刀に力を乗せ刀身を伸ばし、赤鬼の足の腱を切る。
 赤鬼は倒れ、清音が首をはねる。
 しかし、清音の後ろに新たに赤鬼が現れる。
 俺は前に突進し、上段から切り下すが避けられてしまう。
 清音が赤鬼の左に回り込む。
 赤鬼は右腕を振り俺をつぶそうとする。
 俺は腕を避け右腕を切り落とす。
 清音が後ろに回り込み背中を切る。
 赤鬼は後ろに気を取られ隙ができる。
 俺は赤鬼の心臓を刀で突き刺し仕留める。
 俺たちは赤鬼の角を4本手に入れる。
 宗七は俺たちに言う
 「いい腕です、容易に赤鬼を倒すとは素晴らしい。」
俺たちは命がけだったが黙っておく
 「赤鬼は群れないから、もう大丈夫だと思う。」
清音が言う。
 10日目、扶桑の町に着く。
 扶桑は立派な町である、漆喰しっくいの高さ3メートル位の瓦葺かわらぶきの塀に立派な門がある門番は4人おり、出入りもある。
 俺と清音は宗七の牛車と一緒に入るが、誰何されることはない。
 角倉は木の塀に囲まれており店の裏側が荷物の出し入れの門になっている。
 俺は清音に感想を言う
 「大きいなー」
 「角倉は扶桑一の豪商よ」
清音は知っていたようで説明してくれる。
 宗七は裏にあるくぐり戸から俺たちを招き入れる。
 彼は言う
 「角倉に入るときにはこの戸を使ってくれ。」
 「世間体か。」
 「そうだ、角倉が忌み人を正面から入れるわけにはいかないからね。」
そういいながら母屋に招き入れてくれる。
 入った部屋は凝った彫刻の施された欄間に豪華な襖に囲まれている。
 部屋の中央には一枚板の机があり、座布団も高級品である。
 宗七は俺たちに
 「ここは大事なお客を招くのに使う部屋だよ。」
 「俺たちが大事なお客なのか。」
 「そのとおり、私は君たちと懇意にしたいと思っている。」
 「俺たちに価値があるのですね。」
 「まずは角の換金をしよう。」
 「分かりました。」
俺たちは、赤鬼の角4本、青鬼の角6本、一つ目の角50本、大牙の牙6本を出す。
 赤鬼の角は銀貨5枚、青鬼の角は銀貨2枚銅貨5枚、一つ目の角は銀貨1枚銅貨2枚、大牙の牙は銀貨1枚と換金する。
 俺たちの収穫は金貨11枚と銀貨1枚になる。
 彼の本題はここからだった。
 「これから冬になりますが角倉で過ごしませんか。」
 「条件付きですね。」
 「はい、角倉には用心棒として過ごしてもらいます。」
 「分かりましたが清音はまずくありませんか。」
 「構いません、忌み人の前に角倉の関係者になります、ただしあまり表に出られると困りますが。」
 「宿泊代はいくらですか。」
いりません、代わりに冬の間も町の外に出ますので護衛をお願い済ます。
 俺は清音に聞く
 「どうする。」
 「良い条件よ。」
 「分かりました、引き受けます。」
 「それはよかった、離れを自由に使ってください。」
俺たちは冬の間、角倉の護衛となる。
しおりを挟む

処理中です...