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6章 四條道隆の乱

10話 貴族たちの思惑

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 日野信当たちは集まり話し合う
 「四條道隆殿の軍が負けてしまったぞ。」
 「道隆殿はどうなる。」
 「斬首でしょうな。」
 「そんなことは分かっている。領地はどうなるのだ。」
 「領地は没収され戦勝品ではないでしょうか。」
 「戦の一番の功労者は、つなだぞ。」
 「また、あの男か、目障りな。」
 「何とか防がなばなりませんな。」
 「しかし、今動けば道隆殿の二の舞ですぞ。」
 「私が、帝に進言して領地の褒賞を思いとどまらせましょう。」
 「今泉いまいずみ殿、できるのですか。」
 「道隆殿がいない今、私が申し上げるしかないでしょう。」
今泉清光いまいずみきよみつは、道隆に変わり九条正親と対決することにする。

 九条正親は仲間たちと話し合う
 「あの四條殿が戦をするなど驚きましたぞ。」
 「幸い、姫様たちが勝ったからよかったものの、何か手は打てませんでしたか。」
 「秘密裏に2000の軍を動かしたのです。」
 「誰が予想できましたか。」
 「姫様は事前に500の軍を呼び寄せていましたな。」
 「姫様の所には、予見した者がいたのではないですか。」
 「姫様の所には人材が集まっていますな。」
 「つな殿と清音殿は、領地を持つことになるでしょうな。」
 「帝の覚えもよいでしょう。」
 「つな殿のことは千代がうまくやるでしょう。」
 「そうですな。」
 「しばらくは安泰ですな。」
正親は、千代がつなをうまくコントロールすると考えている。

 俺たちは順調に旅を続けている。
 寝る場所は人数が多いので選定が難しい、陣も大きなものを張らなくてはならないので大変である。
 5日目の深夜、地面の振動で目が覚める。
 清音、弥次郎と千代音も起きている。
 しばらくすると振動の主、赤鬼が現れる。
 目を覚ました護衛が思わず叫び声を上げる。
 弥次郎と千代音は、それと同時に飛び出し、弥次郎が腹を切り、千代音が左足を切る。
 千代音は倒れた赤鬼の首をはねる。
 その後は、化物が来ることもなく、旅は順調に進む。
 10日目、俺たちは国府につく。
 町に入る門を通り大通りをまっすぐ進むと城門に突き当たる。
 護衛が門兵に言う
 「菊姫様と植松良房様である。帝の召喚に応じてきた。」
 「開門」
門兵が大声を出すと木製の両開き戸はゆっくり開いてゆく。
 俺たちは、中門まで行くと菊たちは牛車から降りる。
 道隆も牛車から引き出され、城の兵に渡される。
 俺と清音、菊、植松良房、弥次郎と千代音の6人は屋敷に入ると帝の所へ向かう。
 階段を2階上がり、2人の兵が守る何もない部屋に入る。
 「帝の召喚を受け、参上しました。」
菊が代表して言う。
 兵は黙ってふすまを開ける。
 俺たち6人は中に入り、部屋の中央で正座する。
 部屋の1段高い所に帝が2人の兵を従えて座っている。
 菊は帝に
 「菊他5名、命により参上しました。」
 「今回は無事にこれたようですね。」
 「はい。」
 「つなと清音には礼を言います。約束通り菊を守ってくれました。」
 「帝の命、果たしました。」
 「よろしい。明日、道隆の尋問を行います。今日は休んでください。」
 「はい。」
俺たちは帝の部屋から下がる。
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