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10章 新しい仲間

6話 酒の力を借りる

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 美代が課題をこなしてから2週間後、達郎と美代は菊に呼ばれる。
 菊は2人に言う
 「あの男たちは、忌み人を狙って金をせびったり、暴行をはたらいていたようです。」
 「そうですか。私も狙われたのですね。」
美代が言う。
 「美代、町にはびこる悪党を捕まえてくれました。」
 「はい。」
 「その功に官9位を与えます。」
 「えっ。」
美代は驚く、功とか官位と言われても課題をこなしただけのはずだ
 「どうしましたか。」
美代は平伏して言う
 「ありがたく頂戴します。」
美代に官9位の証の鉄製の札が与えられる。
 菊はさらに達郎と美代に言う
 「私に仕えてもらいますから、刀を与えます。」
達郎が聞く
 「私にも、もらえるのですか。」
 「はい、用意するのに時間がかかったのです。」
菊は答えると牛鬼の角の刀を2人に与える。
 刀の柄には、帝の家紋の板倉巴がある。
 達郎と美代は平伏して、菊に言う
 「姫様の刀になることを誓います。」
達郎は、成り行きでここにいたが、腹を据えて菊に仕えることにする。
 美代は、忌み人である自分を取り立ててくれたことにこたえることを誓う。
 菊にとって達郎と美代は、俺や清音、弥次郎、千代音と違い、忠義に厚い家臣になる。
 俺の生活に美代が加わったが、館の生活に大きな変化はない。
 午前中は、清音と剣技の訓練を続けている。
 中庭には、弥次郎が達郎の剣の訓練をして、千代音が美代の剣の訓練をしているのでにぎやかになる。
 午後の弥四郎との剣の訓練は、ギャラリーが清音と千代音のほかに達郎と美代が加わる。
 達郎と美代は、少しでも剣の腕を上げようと真剣である。
 その後には、魔力の訓練をするが美代は中級の魔法剣士であるため、力が強い。
 さらにセンスが良いのか、すぐに教えることはなくなる。
 美代は、自分で魔力のコントロールの訓練をすることになる。

 達郎が俺に相談したいことがあると言ってくる。
 館の中では話ができないので、2人で町に出て、食事処に入る。
 俺たちはつまみと酒を頼む。
 達郎が話を切り出す
 「つな様は、姫様と清音様、千代様、日奈様と一緒に風呂に入っていますね。」
俺は何の話かと思いながら答える
 「そうだよ。」
 「つな様は、まだ結婚していませんよね。」
 「してないよ。」
 「なぜ、一緒に風呂に入っているのです。」
 「おかしいかな。」
 「普通は、夫婦が一緒に入るくらいですよ。」
確かに、弥次郎と千代音は結婚するまで一緒に風呂に入っていなかった。
 俺は、異世界から来たため、この世界の常識には疎い。
 「でも、将来、4人と結婚することにしているよ。」
 「将来を誓えば、いいのですか。」
 「ダメなのか。」
 「私もわからないから聞いているのです。」
 「どういうこと。」
 「私は美代と一緒に風呂に入っているんです。」
 「構わないと思うけど。」
 「そうですか。」
 「結婚するんでしょ。」
 「それが、了承してくれたんですが、待ったがかかっているんです。」
俺たちは酒が回ってきている
 「俺は、出会った頃から清音と風呂に入っていたよ。」
 「それはおかしいですよ。」
 「達郎と変わらないよ。」
 「う~ん、そうですね。」
 「俺は清音と千代と日奈と一緒に寝ているよ。」
 「寝てるだけでしょ。」
 「男女の関係だよ。」
俺たちは酒を追加する
 「やりますね。」
 「達郎も攻めないと進まないよ。」
 「分かりました。美代と寝ます。」
達郎は酒の勢いを借りて宣言する
 「よく言った。」
俺たちは夜になるまで飲んでいた。
 館に何とかたどり着く。
 達郎は俺に
 「今から美代の所に行きます。」
と言って別れる。
 俺は部屋に戻ると清音に抱き着く
 「清音、好きだー」
清音は俺を投げ飛ばすと正座させ、説教を始める。
 騒ぎを聞きつけた菊が楽しそうに見ている。
 達郎は美代の部屋に入る。
 美代は正座して達郎を待っていた。
 帰りの遅い達郎を心配していたのだ。
 達郎は美代に
 「一緒に寝るぞー」
と言って抱き着く。
 美代は立ち上がると達郎の頬を叩いて言う
 「そこに座りなさい。正座です。」
美代の説教が始まる。
 清音も美代も酔っ払いに厳しかった。
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